第9話 レッシュの夢 〜始まりの街ダンク編〜
………………。
……草原。
どこまでも続く金色の草原が見える。
空を見上げると、夕方なのかオレンジ色の空が広がっていた。
人や動物など、命あるものの気配を一切感じられない、静かな場所。
僅かな風だけが吹いていて、聞こえる音といったら草原の草の間を風が通り抜けていく音だけだった。
レッシュはこの場所を知っていた。
……ここは、夢だ…。
この場所には夢の中で何回か来た事がある。
どこまでも続く草原、この場所の時間は進む事なく、永遠に夕方なんだ。
とっても寂しい場所。
レッシュは、恐怖を感じその場でうずくまった。
前にここに来た時は、こうしてうずくまっていたら何も起こることなく目が覚めたんだ。
_____きっと今回もそうなるだろう。
しかし、前、ここに来た時とは何か様子が違うようだ。
前回は無かった、何かの気配を感じる。
何かがこちらをじっと見ているような、強い視線を感じたのだ。
ぐっと目を閉じる。
夢よ、覚めてくれ…。
その時だ。
「……シュ」
声が聞こえた。
女性の声だ。
「……シュ、ッシュ…レッシュ…」
僕のことを読んでいる。
レッシュは怖くて目を開ける事が出来なかった。
「…レッシュ、レッシュ。」
何かを僕に伝えようとしているようだ。
そして、この声には聞き覚えがあった。
「おかあ…さん?」
なんだか頭がぼうっとしてきた。
自分を呼ぶ声がはっきりしてくればくるほど、段々と意識が遠のいていく…。
きっと現実の僕が目を覚まそうとしているんだ。
レッシュは目を恐る恐る開けた。
レッシュから大分離れたところに、1人のレッシュがよく知る女性が立っていた…。
母、テナ・スピリアだ。
レッシュはすぐ立ち上がり、母に向かって必死に駆け出した。
目から涙が溢れ出る。
「お母さん!お母さん!!!」
段々と意識が遠のく中、声にならない声で叫びながら手を必死に伸ばし、どうにか近づこうとしたが、母はこちらを見ながら悲しそうに微笑むだけで、動こうとはしなかった。
「お母さん!!!お母さんっ!!!!」
レッシュは力付き、その場に倒れてしまった。
そして、そのまま気を失った……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます