二頁 鳥葬
「私が死んだ時は荒野にでも埋めてください」みたいな台詞をたまに見る。海に灰を撒けだの、野山に捨てろだの。俺は思うのだが、これ結構図々しくないか? 一見謙虚に「〜にでも」と付けているからわかりづらいが、めちゃくちゃちゃんと処理の指定するじゃん。一番謙虚なのは「好きにしてください」だろ。葬儀もタダじゃねえんだぞ。
ただ、気持ちは分からんでもない。自分の葬儀なんて一生に一度しか、いや一生に一度として開けないものだ。どうせなら自分の好きなようにしたい。うん、わかる。
となれば、今のところ費用は除外して考えた方がいいと俺は思う。なんなら冒頭に「無理だったら全然無理で構わないんで」とか付け足してもいいしな。というわけで、自分の死体のバラし方を考えていこう。毎日ひとつずつ。
それで、えーと。今日はまず鳥葬から考えることにする。これは何故かって、鳥葬なんて一番ありえないからだ。だって今どき鳥葬とかないでしょ。宇宙葬とかがある時代に鳥葬て。末期鳥のエサて。いや、そんなこと言ったら火葬は地球の肥やしだし、土葬も地球の肥やしだし、水葬も地球の肥やしだし、宇宙葬はスペースデブリなんだけど。あれ? もしかして死体ってゴミだったりします? はは、まっさかー。
冗談はともかく、絶対に鳥葬だけはない。いや、鳥葬やりたい派の気持ちもちょっとはわかる。俺もね、「生まれ変わったら鳥になりたい」みたいなことを言ったことがないと言ったら嘘になる。鳥の体の一部になって空を飛ぶのは悪くないかもしれない。でもごめん、俺高所恐怖症なんだ。
そもそも「鳥になりたい」なんて言ってる奴は空が飛びたいんじゃなくて窓から飛び立ちたいだけだし、雑な自由が欲しいだけだろ。そのうち猫になりたいとか言い出す奴だろどうせ。お前らの一日よりカラスの一日の方が忙しいと思うぞ。あいつらめっちゃ忙しなく首動かすんだよ。いや、猫は知らんけど。
さらに言えば鳥葬は絵面がよくない。完全に刑罰じゃんあんなん。それに最終的にちょっと残って部分的に火葬とか土葬なって二度手間とかあるだろあれ。骨は残るし。
あー、でも。死因が飛び降り自殺だったら悪くないな、とも思う。高所恐怖症の俺が飛び降りて死ぬなんて、その時はよっぽど空が好きになっているだろうから。
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