第154話 選びました
「ベンウッド男爵…こいつは無視でいい。取るに足らない小悪党だ」
「フォリアー子爵…ああ、あの子ね。騎士学校時代の後輩なの。呼んであげて」
女王陛下からの呼び出されパーティーを開くように言われた俺。
陛下に出された嘆願書や手紙を預かり、屋敷に帰ってすぐに誰を呼ぶかの選定作業中だ。
と言っても、俺には誰が誰だかわからないのでアニエスさん達に丸投げだ。
カタリナとイーナ、イザベラ達三つ子も捕まえて参加してもらっている。
「むっ…カラーヌ子爵か…どうしますか、お母様」
「むっ…ううむ…」
何かと絡んで来るなぁ…カラーヌ子爵。
結局、シーダン男爵の借金は俺が一時肩代わりした。その代わりに俺に少しづつ返すという形で。
無利子無担保という破格の条件で。
ミスリル鉱山はアダマンタイトとオリハルコンが採れる超優良鉱山になるし、エチゴヤ商会の出資でトランに温泉を引く事も決まった。
徐々にトランは栄え、シーダン男爵の借金も直ぐに無くなるだろう…と、話がそれたな。
シーダン男爵の借金は完済されたが元シーダン男爵領はカラーヌ子爵領と一部隣接している。
つまりは現ノワール侯爵領のお隣りさんなわけで。
隣接する領主を呼ばないというのは外聞も悪いか?
「…仕方ない。招待しておくか。陛下も招待されているパーティーの席でおかしな真似もするまい」
ううん…あまり会いたくはないけど…実際に一度会えばどんな人物か知れるか。
人となりが知れれば対策も打ちやすくなるし。前向きに考えよう。
「ふぅ…嘆願書を出した連中の選別は済んだな」
「大物も沢山居ましたわね…イエローレイダー伯爵様とか」
「グリージャ侯爵もな…」
イエローレイダー伯爵って、ギャン泣きして帰ったあの人か…前回は黄薔薇騎士団への勧誘と、搦め手で来たが…今度は陛下に縋ったか。
あの日以来、姿は見せていないが…まだ諦めていなかったか。
グリージャ侯爵とやらは知らないなぁ…どんな人物だ?
「グリージャ侯爵って、どんな人です?」
「何?知らないのか…グリージャ侯爵は現財務大臣だ」
「長年財務系貴族の長のような立場でね。現当主は十代にしと当主になり、才覚の高さから若くして財務大臣になったの。私達とは違うタイプの女傑ね」
ユウと同じ…いや、クリスチーナと同じタイプの天才って事か。
そう言えば最近、孤児院に行ってないな。司祭様に聞きたい事があるし、その時に寄るとするか。
っと、また思考がズレた。
現財務大臣が俺に何の用…いや、まぁ、一つしか無いのはわかってるけどさ。
面倒くさい人じゃなきゃいいなぁ…
「では次だ。嘆願書は送ってないが呼んだ方が良い、呼びたい人物の選定だな」
「ジュン君は誰かいるかしら」
「現状、唯一の家臣であるシーダン男爵は絶対ですね」
「ああ、シーダン男爵は当然呼ぶ」
「なら後は…」
レッドフィールド公爵は…呼ばないとダメだよなぁ。
チラッとイザベラ達を見ると頷いている。
それにレンドン伯爵もか。
「ジュン、ブルーリンク辺境伯はどうする」
「あー…」
あのグルメ辺境伯ね。ドライデンのエスカロンとかいう商人について聞きたいし…呼ぶか。
「俺が思い付くのはこれくらい…孤児院の子供達はダメですよね」
「今回はな。クリスチーナとユーバー商会は構わないぞ」
結局、ユーバー商会のゼニータ会長はミスリル鉱山運営顧問になってもらったからな…実質お抱え商人のようなものだ。
「なら、これ以上は俺からはないです」
「わかった。なら後は私達に来てる嘆願書から選定するか。レーンベルク伯爵にも来てるんだろう」
「ええ、はい…クライネやナヴィ、他の白薔薇騎士団員にも来てますよ」
「カタリナ、イーナ。どうせお前達にも来てるだろう。今回で呼びたい奴はまとめて呼んでしまえ」
「…呼びたい奴なんて居ません」
「でも呼ばないと今後も手紙が届くわよ。わたくしも我慢して選ぶから」
我慢て。君ら友達いないの?友達なら呼んであげなよ…俺なら上手くやるからさぁ。
「良いんだ。それに既にかなりの人数を選んで……というかですね、お母様。本当にこれだけの人数を一度に招待するのですか?」
「何か問題があるか?」
「パーティー会場は…問題無い大きさがありますが食器が…足りそうですね。料理人は…」
「各家から応援を呼べば良い。使用人もな」
「「「レッドフィールド家からも連れて来ますから」」」
「……問題無さそうですね」
何せ千人以上入れるパーティー会場だからな。
広さは十二分にあるし、準備期間もある。
今から二ヶ月後…秋に入ったくらいの時期だな。
その前に謎なイベントがあるが。
「ジュンは一週間後、ガウル様主催のお茶会か。手土産を忘れないようにな」
「それにしてもガウル様がお茶会を開いくなんて驚きましたわ。他に誰が参加なさるのか聞いてまして?」
「女は参加しないとだけ」
俺の偏見かもしれないが、男がお茶会を開くのは女性を呼ぶ為のモノだとばかり。
少なくとも男だけのお茶会なんて、この世界じゃ聞いた事もない。
男だけのお茶会なんて何するんだか。
「「「あ、ガウル様主催のお茶会には私達の父が毎回参加していますよ」」」
「へぇ?どんな事をされているのか聞いてます?」
「さぁ…特に変わった事はしてないかと」
「本当に男だけで集まって話をしているとしか」
「後は…ガウル様に選ばれた男性だけしか参加出来ないと」
「「「真に紳士的な者だけを選んでいる、と父は言ってましたよ」」」
この世界における真に紳士的な者って…あれあれ?神子セブンくらいしか浮かびませんが?
なんでだろうなぁ…そこに落とし穴がある気がするのは。
「よくわからんが…招待状を出すのやパーティーの準備は我々に任せてくれていい。ジュンは好きに…いや、暫くは派手な事はしないでくれ、頼むから」
それは約束出来ませんなぁ。俺Tueeeeeのチャンスは逃す気ありません!
「ジュン君の強さは良く…わからないけと、わかったわ。でも自重は出来るでしょう?短期間に立て続けに功績挙げられても困るのよ、私達も」
「だな。アム達はランク上げを頑張っているんだろう?お前も暫くはそれに付き合ったらどうだ」
あぁ…アム達は今も依頼を受けてるしな。明日から同行させて―――
「ジュン!やっと見つけた!おうと?とやらを案内しなさいよ!」
「「「「……」」」」
ノックも無しに入って来たのは妹ドラゴン。
勢いよく扉を開けて破壊してしまっている。その扉、お高いんじゃないのぉ?
知らんけど。
「…ジュン、行って良い。カタリナも行け。ゼフラを連れて行くのを忘れるな」
「…はい」
「わたくしも行きますわ」
「「「なら私達も―――」」」
「レッドフィールドの三人には残ってもらう」
「入会したての新人が、いきなりジュン君とお出掛けなんて許されないのよ」
「「「……」」」
いや、妹ドラゴンの暴走を抑える人材は欲しいです。
白薔薇騎士団員を連れて行け?護衛兼任ですね、はい。
王都の案内って言われてもなぁ…ドラゴンが喜ぶ場所って何処よ?
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