第155話 揉め事でした
「へぇ~…国父?がジュンをお茶会にねぇ」
「男の人もお茶会って開くんだねぇ」
「意外」
妹ドラゴンを王都案内してる最中、アム達と合流。
仕事で二日ほど屋敷に居なかったアム達に女王陛下に言われてパーティーを開く事になった件と、ガウル様にお茶会に呼ばれた事を話している最中だ。
「ハグハグッ!お家の御飯も美味しかったけど、人間てこんなに美味しいの毎日食べてるのね!あ、これもう一個頂戴!」
「おい…ドラゴン。もう少し行儀よく食べないか」
「周りから見られてましてよ…わたくし達まで見られてるようで、恥ずかしいですわ」
当然、一緒に案内してたカタリナとイーナ、ゼフラさんも一緒なのだが。オープンカフェに入ったのは失敗だったかもしれない。
屋敷でもそうだったが妹ドラゴンはテーブルマナーがなっていない。
人間のように生活する事がなかったのだから当然なのだが。フォークとナイフの使い方を教えるのも苦労したものだ。
「ああ、ほら。口周りを拭け、ドラゴン」
「んぐっ、ありがと。でも、そのドラゴンって呼び方なんとかしなさいよ。大雑把過ぎるでしょ」
「しかし、お前は名前が無いんだろう?」
「なんて呼べばよいのですの?」
「名前?そういえば人間は名前で区別するのよね。…じゃ、あーしの名前、考えてよ」
「む?私達がか?」
俺がアム達と話してると妹ドラゴンの名前を考える流れになってる。
妹ドラゴンは直情的ではあるが素直な性格で、カタリナ達とすぐに打ち解け、仲良くなっていた。
「それでアム達はどう?Bランクになれそう?」
「おう。もうすぐって感じだな」
「近い内にランクアップの試験を受ける予定だよぉ」
「高ランクの仲間入り」
アム達とは少しの間、冒険者活動を共にしてなかったが順調に依頼をこなしているらしい。
俺が冒険者になる前からCランクだったし、最速のランクアップというわけではないが平均よりはかなり早いランクアップになるのだとか。
「てか、ジュンもランクアップしたんだろ?」
「一気にCランクになったんだよね?すごいよねぇ」
「流石ジュン。さすジュン」
「その省略、なんか意味あるか?」
ひいじい様…ドラゴンゾンビの討伐は巨大魔石が証拠品、白薔薇騎士団の証言、イザベラ達の証言により事実だと判断。冒険者としての功績としても認められた。
よって、ギルドマスター・ステラさんの判断によりEランクから2ランクアップのCランクになったのだ。
何でもCランクまでならギルドマスターの独断でランクアップ出来るのだとか。
「ああ、だからか。それが噂になってんだな。前より人気がすげえ事になってんな」
「視線が凄いよねぇ。人の壁が出来てるよ」
「落ち着かない」
「……あ~…そうだな」
カフェは満員御礼状態で、席に着けなかった人達も距離はとっているもののカフェを囲むように壁を作って俺達を見てる。
カフェに入る前から行列が出来ていたが…毎度これじゃあな。
「…ファウの言う通り、落ち着かねぇな。続きは屋敷に帰ってからにしねぇ?」
「それがいいよぉ」
「同意」
是非も無し。俺も完全同意だ。段々と周りの人達が距離を詰めて来てるんだよなぁ。
「カタリナ、帰ろう」
「アジ・ダハーカは雄のドラゴンだったか?他には…っと、帰るのか?なら続きは帰ってからだな」
「ええ~。あーし、まだ食べてるんだけど」
「お会計をしてる間に食べてくださいまし」
と、そこで王都案内は終了。
翌日からはガウル様主催のお茶会まで特にこれといった用事も無い為、アム達と一緒に依頼をこなすことに。
「ジュンもCランクになったって事はあたいらと同じ依頼が問題無く受けれるって事だな」
「丁度いい依頼、あるといいねぇ」
「無ければギルドマスターに用意させよう」
ファウ…ステラさんに対して容赦が無いな。いや、ステラさんだけじゃないか?
「へぇ~ここが冒険者ギルドってやつ?御金を貰って魔獣を倒したり、薬草を集めたりする何でも屋の集り…魔獣を倒しただけで御金が貰えるって楽な仕事ね」
今日も今日とて妹ドラゴンこと、リヴァも一緒だ。昨日、カフェから帰った後にカタリナにより命名されてた。元ネタはハティと同じく神話ネタだそうだ。
そのカタリナもイーノの一緒に来てる。いつもなら冒険者ギルドの外で馬車内で待っているのだが、今日はリヴァも一緒なのでギルド内まで来てる。
「ねぇ、もしかしてさ。あーしも冒険者になれる?」
「何?リヴァが冒険者にか?…どうだろうか?」
「難しいんじゃありませんの?貴女はドラゴンであって人間じゃありませんもの」
なんと、リヴァも冒険者に?…もし、なれたら前代未聞じゃないだろうか。
でも多分、何か問題起こすし、尻拭いは俺がやる事になりそうだから止めて欲しい。
「じゃ、早速依頼を…って、何だよ、お前ら」
「先輩に対して口の利き方がなってないねぇ、アム」
「侯爵様の前で恥かかせてやろうか、あぁ?」
って、ちょっと眼を離したらアム達が絡まれとる。
見た目、年上の…22,23くらいの女性達。五人組の冒険者パーティーっぽいな。
ハッキリいってガラはよくない。まるでチンピラ――
「あ、ノワール侯爵様ぁん!」「ほ、本日はお日柄も良く!」「いい冒険日和ですね!」「そう言えばドラゴンゾンビ討伐の功績でCランクになられたとか!」「おめでとうございますです!」
…俺に眼を合わせた途端にキャピキャピしておだて始めたぞ。
「おい、テメェら。ジュンに絡むんじゃ――」
「ああ!?んな事テメェに言われる筋合いねぇんだよ!」
「同じ孤児院育ちか何か知らねぇが、それだけで侯爵様の特別になった気でいるんじゃねえぞ!」
「「「そーだそーだ!」」」
…顔面が忙しい人達だな。コロコロと表情変えて…疲れない?
「…んんっ。ねぇ、侯爵様ぁ。アム達よりあたしらの方がよっぽど役に立ちますよぉ?」
「何せ私達はAランク冒険者パーティー!その名も『ファミリー』!」
「将来はSランクと有望視されてるアインハルト王国で一番の冒険者パーティーですよ!」
ああ…これはアレか。以前、ステラさんが言ってた事が現実になったパターンか。
王国で一番の冒険者パーティーって…Sランク冒険者パーティーが存在するのに?有望視されてるのは本当かもしんないけどさ。
「だからさ、傍に置くならアム達よりあたしらの方が絶対に――」
「そこまでだ。そういうのは逆効果だから止めておけと言ったろう、コズミ」
「げっ、ギルドマスター…」
此処でギルドマスター・ステラさんの御登場だ。普段はアレだが、こういう時はビシッと決めてくれ――
「ジュンはそういうやり方は嫌うし、アム達と敵対するのは御薦めしないと忠告したろう。今日の所は撤退するんだな」
「そう言いながら俺の尻を揉むの止めてもらえますか、セクハラマスター」
このセクハラさえ無ければもう少し仲良くしてもいいんだが。
あ、こら!尻がダメでも太腿なら良いってわけじゃない!
「チッ…兎に角、ギリド内での喧嘩は御法度だからな。どうしてもやるならジュン…ノワール侯爵様の手前、アム達に味方してお前達を叩きださなければならん。それを理解しておけよ」
「け、喧嘩なんてしてないよ!ちょっと後輩の躾をしてただけさ!もう用は終ったよ!」
「し、失礼します、侯爵様!」
ステラさんの脅しでアッサリと『ファミリー』と名乗った冒険者パーティーは出て行った。
「へん!二度と顔見せるんじゃねぇぞ!」
「こないだから面倒くさい人達だねぇ」
「うん。面倒」
「こないだからって…今日が初めてじゃないのか」
「あ、あー…まぁな」
「自分達の方がジュンに相応しいからわたし達は邪魔なんだって」
「その内、処す」
ああ…本当にステラさんの懸念通りの事態…揉め事が起きてたのね。
やだやだ…
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