第114話 夢と幻でした
前回までのあらすじ。
アインハルト王国の末子、第二王女のベルナデッタ殿下は不思議ちゃんで
「早く大人になりたいなぁ~大人になって~ボンッキュッボンになれば人気者になれるんだよね、アイお姉ちゃん」
「え、あ、うん。…運動してスタイルを磨けばね」
アイ…さてはお前、以前適当な事言って誤魔化してたな。
「あ、そうだ。アイお姉ちゃんの結婚式はいつ?」
「え?ウチの結婚式?」
「うん。お兄ちゃんと結婚するんだよね」
「ん?私とアイシャ殿下が婚約した事を御存知なのですか?」
「え~だって前に…あれ?いつ聞いたんだっけ…」
アイに眼を向けると首を振っている。ジーク殿下も同様だ。二人はベルナデッタ殿下に俺とアイの婚約の話をしていない。
なら、誰に聞いた?まだ正式に発表のされてない話だから知っている人は少ないし…何処からか漏れたのだとしても余り自室から出ない、ほぼ軟禁状態のベルナデッタ殿下の耳に入る機会はなさそうなんだが…
『…もしかして、もしかするんか?いや、まさかな…でも…』
メーティス?何か思い当たる事でもあるなら言ってくれ。
『…まだ確証はないんやけど…マスターはまだベルナデッタに名乗ってへんやんな。自分の名前を知ってるかって聞いてみてや』
言われて見れば確かに。此処に来てから名乗って無いし誰も俺の名前だして…ないよな?
「ベルナデッタ殿下、お聞きしたいのですが…私の名前は御存知ですか?」
「え?ジュン・レイ・ノワールでしょ?」
「「「「「え?」」」」」
ジュン・レイ・ノワール?どういう事だ?
俺のファーストネームとノワール侯爵になる事は調べる事が出来るかもしれないが、さっき決めるように言われたばかりで、まだ考えてすらいない。
勿論、それを伝える間も無かった。アニエスさんとソフィアさんも此処に来るまでずっと一緒だったのだし。
「ベ、ベル?どうして彼の名前を知っているんだい?僕でさえ今日会って知ったばかりなんだけど…」
「どうしてって、お兄ちゃんに聞いて…あれ?いつ聞いたんだっけ…忘れちゃった、テヘヘ」
しかしベルナデッタ殿下は確信を持って答えているように見えるし…メーティス、わかるか。
『…まだ確定やないけど、ベルナデッタは未来が見えとるんかもしれん』
未来視?それか予知能力とでも言うべき力をベルナデッタ殿下は持っていると?
『完全な未来視やないで?どんな風に見てるかはこれまでの話からの推測やけど…寝てる時は夢で、起きてる時は幻のように見えてたんと違うかな。マスターの名前や結婚の話は夢、ジークやアイと一緒に来たとかは幻で、とかな』
夢や幻という形で未来が見えていた?もし、それが本当なら…すごい力なんじゃ?
『さっきも言うたけど、完全な未来視やないで。恐らくはマスターの事以外も見とるんやろうけど、本人が未来の出来事やと理解しとらへんみたいやし。多分、物心がつく前から見とるせいで夢と現実がごっちゃになって曖昧になって…周りから見れば何処か夢の世界で生きてるような人間になってもうたんとちゃうか』
…俺が最初に考えた答えで正解ってか。
だけどベルナデッタ殿下にとっては今までの言動は至極真っ当で本気だったと。だけど周りの人間には理解出来ないから、おかしな人、変な人、不思議な人として扱われ、表に出さないように、軟禁されて来たのか。
『因みにやな…御伽噺に出て来る聖女な。予言者、とも言われてたらしいで』
マジかい。ガチもんのマジでベルナデッタ殿下が聖女の可能性が大だと?
それが本当なら…さっきのベルナデッタ殿下の発言に気になる内容があるぞ。
「ベルナデッタ殿下。さきほど聖女になって戦うと言っておられましたが、一体何と戦う事になるので?」
「勇者だよ!お兄ちゃんを狙う悪い勇者!って、お兄ちゃんが言ってた…よね?あれぇ?」
悪い勇者と来たもんだ。
しかも、俺を狙うってどういう事だ。存在するかどうかもわからん勇者に狙われる覚えなんてないぞ。
「ちょっとベル!勇者と戦うってどういう事!なんで勇者がジュンを狙ってる事を知ってるの!」
「え?え?アイお姉ちゃん、痛い、痛いよっ」
「あ、ご、ごめん…」
何故、そこでアイが取り乱す…って、まさかだよな?
「(アイ、もしかして…)」
「(…うん。女神フレイヤ様が言ってたジュンを狙う奴…そいつは勇者だって言ってた)」
はい、確定。
ベルナデッタ殿下は未来視が出来る。本人が理解していないし、その力をコントロール出来るわけじゃないようだが…予言者と呼ばれた聖女の再来で確定だろう。
不思議ちゃんとか思ってごめんなさい。
「…ベルナデッタ殿下。今日はこれで失礼します。急遽話合わなくてはならない事が出来ましたので」
「えー…もう?また来てくれる?聖女になるお手伝いしてくれるんだよね?」
「…そうですね、殿下が聖女になる事についても相談したいので、近い内に必ず来ます。今度は御土産も持って来ますね」
「やったぁ!楽しみぃ!」
無邪気に笑うベルナデッタ殿下に手を振りながら退室した。
さて…ベルナデッタ殿下の未来視と聖女の件を説明しないとだが…もう一度、女王陛下に会えるかな。会えても上手く説明出来る自信ないなぁ…
未来視が出来て本物の聖女だとか…急展開過ぎるでしょ。不思議ちゃんとか思ってたのにさぁ…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます