第86話 新たな情報が出ました

「デッケェな…」


「大っきいね…」


「あんまり大っきいと、ファウ、困っちゃう…」


 なんか前にもアム達は似たような感想を言ってた記憶があるが…今回は生き物、ドラゴンを見ての感想だ。


 ミスリルドラゴンはステラさんが言った通りの場所に居た。


 所々に魔草の食べかすのような切れ端があり、地面には大穴。


 その横で丸まって寝ているのがミスリルドラゴン。


 離れた位置から丸まっている姿しか見れないので正確な大きさはわからないが起き上がればアフリカ象より一回りも二回りも大きいだろう。


 二階建ての家くらいはあるかもしれない。 


 巨体にエメラルドグリーンに輝く鱗を持ったミスリルドラゴン。


 伝説上の存在と言えるドラゴンが確かに居る。


「なぁ、ジュンはやっぱ帰れって。ありゃヤベェよ」


「わ、わたしもそれが良いと思う。あんなのと戦うなんてダメだよ…」


「引き際が肝心」


 実物を見てアム達はビビってしまったらしい。


 アムはまだ耐えてるが微かに震えてるし、カウラとファウは俺の背中に隠れてる。


 なんだか小さい頃に戻ったみたいだ。


 そんな時は…


「あっ…」


「はいはい、俺が護ってあげるから、大丈夫だよ」


 怖い夢を見てトイレに行けない、なんて言って泣いてた時も、こうやって頭を撫でながら慰めると落ち着くんだよな、三人とも。


 子供の頃から今でも変わってない。


「ジュン君」


「…やりませんよ」


 羨ましそうに見つめてるから言うと思ったが。


 ソフィアさん達は平気そうにしてるじゃないですか。


「それより、どうします?起きるのを待つんですか?」


「そうね…叩き起こして不機嫌になられても困るし、少し待ちましょうか」


【その必要は無いぞ、小さき者共よ】


 声がした方に視線を向ければ、そこには顔を上げたミスリルドラゴンが。


 ドラゴンの眼からは負の感情は感じられず、むしろ穏やかな印象を受ける。


 取り敢えず話は出来そうだ…………チェ。


『マスター、残念とか想ってへん?』


 …ちょっとダケな。なんかアッサリと解決しそうじゃん。


『わいも同じ感想やけど、ステラの話じゃいきなりドラゴンブレスを撃ったんやろ。ものすんごい短気とか有り得るんやから油断したらあかんで』


 そう言えばそうだったな。


 デウス・エクス・マキナを使えばドラゴンブレスも防げるらしいけど、試した事ないしな。


 俺一人じゃないし、撃たせないのが無難だろう。


【何用だ、小さき者共よ】


「…私はソフィアと言います。貴方と話し合いに来ました」


【話し合い?】


「はい。貴方には此処から去って欲しいのです」


【何故だ?】


「貴方が此処に棲み着くと魔獣が集まり、ダンジョンになる。既にその兆候が現れています。そうなっては危険ですから」


【ふむ…】


 顎に指を当て、人間のような仕草で考え込むドラゴン。


 さっきから思ってたけど、何処か人間味があるドラゴンだな。


【条件次第だな】


「条件…どのような?」


【我の番となる雄を紹介せよ】


 …………メーティス。


『ドラゴンの男女…いや、雌雄比率は変わらん筈やで。単にミスリルドラゴンの個体数が少ないだけやろ。多分』


 絶滅危惧種的存在な訳ね。ドラゴンの結婚事情も世知辛い…んで、雄を紹介しろって事は雌なのね、このドラゴンは。


「…つまり雄のミスリルドラゴンを連れて来いと?」


【同種族である必要は無い。ドラゴンでなくとも人間でも構わん。我の番に必要なモノは強さだ。強く逞しくあればよい】


 …人間でも良いって…無茶言うな!サイズに違いがあり過ぎるだろが!他にも問題あるけども!


「…強い雄というのは、例えばどの程度の強さを指すのです?」


【そうだな…お前くらい強い雄が良い。お前は中々強そうだ】


「…それはどうも」


 アインハルト王国最強騎士のソフィアさんと同等以上の強さを持った男って…俺以外居なくね?


 決して自惚れで言ってるわけではなく、鍛えてる男なんて他にいないわけで。


「…種族の違いは本当に問題無いのですか?」


【ドラゴンか人間ならばな。ドラゴンならば我のように知性のある者でなければ嫌ぞ。会話も成立しないケダモノなど番に出来ん】


 …人語を話せるくらいに知性のあるドラゴンってミスリルドラゴンと同じくらいに数が少ないんじゃ?


『そやな。例えばリヴァイアサン、バハムート、ゴールドドラゴン、エメラルドドラゴンとかやな。他にもおるけど人間と交渉してくれそうなんは以上やな』


 リヴァイアサンとかバハムートとかこの世界に居るんか!


 普通に一度会ってみたい!

 

「……参考までにお聞きしますが、人間の男を番にしたとしてもどうやって、その…子作りするのです?」


【恥ずかしい事を聞く奴だな…我に何を言わせたいのだ?】


「そうではなく…貴方と人間では姿形が違い過ぎるでしょう」


【…?ああ、そうか、知らぬのか。我のような高位な存在は人間の姿になる事が出来る。一度変えたら暫くは元に戻れんから今はやらんがな】


「な、なるほど…」


 チラッと俺を見て全員に視線を送るソフィアさんに全員が頷き返す。


 絶対に俺が男だとバレる訳には行かない!


「…お話しはわかりました。一度帰って皆と相談してからまた来ます」


【好きにせよ。その間は此処に集まる魔獣は我が始末してやるから心配するな】


 …途中からわかってたけど、こいつ人間に対して友好的だな。


 こりゃバトルにはなりそうにない……ハァァァ……まぁた俺Tueeeee出来なかった…


『良かったやん、結婚提案せんで。間一髪やったなぁ、アハハ』


 間一髪でアウトにしようとした奴が笑うな!


 しかし、本当にこのドラゴン友好的なら何故いきなりドラゴンブレスを放った?


 それをそのまま聞いてみると…


【人間の子供が魔獣に襲われておったからな。魔獣以外に当たっておらぬから問題無かろう?】


 なんと子供達を助ける為でしたか。


 このドラゴンは本当に良い奴らしい。


【此処は魔草が育っていたからか魔素が澄んで居て心地よい。番が見つかるまでは此処で棲むとしよう。その間に出来るミスリルは自由に持って行け。家賃代わりだ】


 ……ん?ミスリルが出来る?出来るってどういう事?


【我の魔力の影響を受けて周りの石がミスリルに変質するのだ。一ヶ月もすれば採れるようになるぞ】


 …それって此処がミスリル鉱山になるって事!?


 それってヤバくね?!とんでも情報じゃね?!




――――――――――――――――――――――――――――――




あとがき



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