第83話 廃鉱山へGOが決定しました
何やら報告を受けたクライネさんの顔が青い。
一体何が起こったのか。聞く迄も無くろくでもない事で――
「クライネさん、何があったの?差支え無ければ私達にも教えてくれない?」
「……廃鉱山で魔獣が多数出現、未確認ですがドラゴンも居る可能性があると」
「廃鉱山へ今すぐにGO!」
「あ、やっぱり行くんだ、お兄ちゃん」
ビバ廃鉱山!魔獣多数!ドラゴンも居る可能性有!なんでそんな事になったのか知らんけど、これに参加しない手は無い!
『マスター、マスター。そこは現地に居る白薔薇騎士団の安否を心配しとくべきちゃうか。あと一応はステラも』
あ。
そうだった…白薔薇騎士団が現地で張ってるんだった。それにステラさんも…てか、白薔薇騎士団が現地に居るなら、もう片が付いてるとか?
いや…クライネさんの様子からしてそれは無い、か。
「んんっ…クライネさん、廃鉱山に居る白薔薇騎士団は無事なんですか」
「無事です。今の所は、ですが。廃鉱山から出て来る魔獣を周辺の村や街に行かせないように防ぐのに手一杯、早急に応援に来て欲しい、だそうです」
それは…相当な数の魔獣が居るって事だな。白薔薇騎士団の半数、約五百人が居て手一杯。本当にドラゴンが居ようものなら壊滅しかねないな。
「兎に角、現地に行かなきゃ御話しにならないって事ですね、早く行きましょう」
「ええ。早急に装備と馬車、馬を用意して…………待って。まさかジュン君も一緒に来るつもり?」
「当然です!」
溢れでる魔獣!ドラゴンの存在!間違いなく俺Tueeeeeのチャンス!この機会を逃すつもりはnothing!
何が何でも付いて行く!
「ダメです!魔獣で溢れる場所におと、もごっ!」
「はいはい、周りに居る人を思い出して~」
男を連れて行くなんて出来ない、とか言い出しそうだったクライネさんの口をユウが塞いだ。
ナイスプレーだ、ユウ。
「落ち着いて聞いてくださいよ、クライネさん。ソフィアさんの応援に行かなきゃいけないのは確かですけど、此処も放置は出来ないでしょ?クライネさんが残る必要があるんじゃないですか?」
「…それは、そうですけど…ジュン君が行かなきゃならない理由にはなりません」
「俺…私が行けばアム達も来てくれると思います。どうせアム達も周辺で様子を窺ってるでしょうし、すぐに来るでしょ」
「……」
更にカタリナとイーナも居るだろうし。俺が行くと言えば皆付いて来る筈。
…日本でこんな事言えばとんだ自惚れ野郎としか思えないが。
『そうやけど、間違ってないし、ええんやない?エロース教のシスターらも言えばついて来そうやしなぁ』
シスター達は呼んでも戦力にならんだろう、流石に。
司祭様はなるだろうけどさ。
「…いえ、やはりダメです。ジュン君は行かせられません。アム達には私から協力を要請します。ジュン君は此処で…いえ、宿舎に戻って大人しく待っててください」
…頑固だなぁ。トランス・パレードの時みたく飛び出したら今度はお説教で済まないかもしれんし…冒険者登録抹消とかされたらかなわん。
どうにか納得して行かせて欲しいのだが…何かアイディアは無いかね、メーティス君。
『え~…そやなぁ。行かせてくれたら結婚するって言えば一発OKちゃう?』
却下!流石にそんな理由で結婚なんて出来るか!
『でもマスターの目的は俺Tueeeeeする事で、俺Tueeeeeeが出来るまでは結婚せえへんねやろ?廃鉱山に行けば俺Tueeeeee出来るんやから、その後なら結婚したってええんちゃうのん?』
そうだが!そうなんだが!他にも何かあるだろう!いきなり結婚なんて選択する前に、他にも何かが!
『え~…そうは言うてもなぁ。マスターがクライネらに提供出来る事って他になんかある?相手は貴族でそこそこお金持ち。地位や権力なんてマスターに用意出来んし、ぶっちゃけ貞操の切り売りしかマスターに切れる手札は無いんちゃう?』
いきなりの精神攻撃は止めろや!貞操の切り売りをするにしても結婚じゃ貞操の全売りやないかい!
『だってそうなれば結婚するんはクライネだけやのうて全員になるやろし。全員と結婚するんなら切り売りやん?』
ぐっ…い、いや、それならそれでいきなり全部じゃなく、もっと細かく、小さく切り売りでいいじゃん!例えば、そう…キスとか!
『え~…キスで命かけさせるん?マスターが現地に行くって事はソフィアやクライネらには命がけで護れって言ってるに等しいんやで?ならそこはせめて結婚を対価にせなあかんのとちゃう?』
お前、偶に妙に厳しくなるのやめろや!心にグサグサと来るわ!泣くぞ!
『そんなやわなハートしとらんがな、マスターは。まぁ、そないに言うんならキスで提案してみたら?結果どないなってもわいは知らんで』
くっ…大体、廃鉱山の状況がわからんのに不確定の俺Tueeeeeeに結婚なんてジョーカーを切れるか。そんで空振りに終わっても結婚はナシ!なんて通じないんだろうし!
『チッ…そこまで読めたか』
お前ほんとに俺の相棒!?落とし穴の前まで進んだ人間の背中を押すような真似してない!?
『いやいや。わいも女、乙女やし。乙女の立場から言わせてもらえばせめて結婚するくらい言えやって思うし。後、そろそろ一回くらい使命を果たして欲しいっちゅうのもあるな』
ナンデヤネン。
まだ暫くは猶予があるから子作りはそんなに急がなくても良かったんとちゃうんかい!
『それがなぁ…エロース様は偶にこの世界の様子見てるらしいから。成人しても全然子作りしてないマスターを見て少し急かすようにって連絡が来たんや』
連絡って…なんでメーティスに?そんなん直接俺に言えば良くない?
『わいに連絡が来たっちゅうかデウス・エクス・マキナにメッセージが来てたんや。緊急性の高い話でも無いし、それで十分や思たんやろ』
そんな機能あったのかデウス・エクス・マキナ…本当に何でもアリなのか。
「ジュン君?どうしたの?」
おっと。メーティスと脳内会話してたらクライネさんに心配されてしまった。
脳内会話中は無言だったからな…兎に角、キスでどうにか納得してもらえないか試すとしよう。
『いくら恋愛脳集団の白薔薇騎士団でもキスで納得するとは思えんけど。まぁやるだけやってみ』
頼むからやる前から希望を削ぐような事言うな。弱気になっていく一方だろうが……すぅ~はぁ~…よしっ!
「クライネさん!行かせてくれたら…………キ、キス…してもいいですよ」
『声ちっさ!何だかんだでマスターも自信ないんやん!』
仕方なかろうが!この場にはまだゼニータ会長一家が居るんだから!女が女をキスで釣ったとか聞かれるわけに行かないんだから!
だが、クライネさんには聞こえた筈…さぁ返答は如何に?
「――ハエッタ!白薔薇騎士団副団長として命じます!ジュン君を確実に廃鉱山まで送り届けなさい!必要な物は何を使ってもいいわ!アム達も連れて行きなさい!」
「Sir!Yes,Sir!」
……あっさり納得してくれはったみたいどすが、メーティスはんはどない思われはります?
『…………そう言えば白薔薇騎士団は恋愛脳集団の上に脳筋って言葉が付くんやったわ。忘れとったで。今日から更にちょろインが付くな』
ちょろイン…以前の白薔薇騎士団の評価が『恋に恋する純情乙女な脳筋集団』だったから今日から『恋に恋する純情乙女なちょろイン脳筋集団』になったのか。
でもそれって白薔薇騎士団をヒロインって認める事にならねぇ?
『もちろんサブやけどな。ちょろいサブヒロインや』
さいですか…
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