第62話 天国のような地獄でした

「じゃ、ジュン君は真ん中として。左右に誰が寝るか、決めないとね」


「どちらかはお嬢様に譲ってもらうぞ」


「その代わり、私達は最後で構いませんから」


 ……はい、ピンチはまだ続いてます。


 食事が終わった途端、テントに押し込まれ、有無を言わさず寝床の用意がされた。


 因みにこのテント…何気に魔法道具らしい。


 もうすぐ春であっても夜の外は寒い筈なのに、このテントの中は暖かい。


 冬は暖かく、夏は涼しく。季節を選ばず快適にすごせるテント。虫除け効果付。


 流石ローエングリーン家。良い魔法道具持ってる。


 御陰で冬の野営中に貞操の危機に直面してる訳だが……いや、一応は子作りが使命だし、いつかはやらなきゃいかんのはわかってる。


 初回から上手く種付成功するとも限らないし、気にせずやっちゃえと言う悪魔の囁きも聞こえるが……


『因みにマスターは避妊せん限り100%抱いた女は妊娠させるで。あと初回に限り男女の双子になるオマケ付や』


 余計な仕込みしやがってあんのエロ女神がぁぁぁ!


「何難しい顔してるっスか?ジュン君も着替えるっスよ」


「あ、はい……って、何で裸なんですか!」


 いつの間にかナヴィさんはパンツ一枚…おっぱいさんがこんにちはしてる…いやいやいや!凝視してる場合やない!


「カ、カモンド男爵…その姿は些か問題があるんじゃないか?」


「そっスか?これでもジュン君に配慮してるんスよ?普段は全裸で寝てるんスっから」


 全裸だとぅ!?そりゃあきまへん、あきまへんわナヴィはん!


「確かにナヴィはいつもそうよね。風邪ひくわよ?」


「そういうソフィアさんも大差無いじゃないですか…」


 ソフィアさんはシャツとパンツだけ…しかもポツンと小さくも主張の激しいポチっとした物によってノーブラなのがわかる!


「まぁ騎士をやってる女なんてみんな似たようなものだ。戦争中は大体皆同じだったぞ」


「いちいちパジャマなんて着てられないですもんね」


 ゼフラさんもソフィアさんと同じでシャツとパンツだけ…しかしシャツが短いタンクトップ。


 鍛えられた腹筋が見えるし、その上にはたわわな膨らみが二つ…屈まないでください先っちょが見えそうです。


 ファリダさんは一見普通…しかしスケスケのネグリジェだ。


 しかもノーパンノーブラ…大事な部分も透けて見える…ある意味全裸よりエロいです!


 そしてカタリナは…


「普通だな…」


「…何故か普通という評価は腹立たしいな」


 カタリナは普通だ、普通のパジャマだ。


 だがしかし、さっき迄より胸の揺れが大きい…お前もノーブラかい!


 しかもまたデカくなってないかお前!


『デカなっとるなぁ。今のカタリナはGやな。因みにソフィアがD。ナヴィがE。ゼフラがF。ファリダがCや』


 ねぇ、なんでそんな事知ってんの?


 ねぇ、なんで今そんな事教えたの?


『知りたそうやったし。他のんも聞く?わいは見たらわかるから、白薔薇騎士団全員わかるし、クリスチーナらも当然わかるで』


 ……………また今度でお願いします。


 そんな事よりも今はこの状況をなんとせねば!


『えー…ヤらんの?据え膳って言葉知ってる?』


 知ってるが一人いただいたら最後、全員いただくまで終わらんだろうが!


 此処に居る全員じゃなく王都に残ってる全員な!


『そうなるやろなぁ。ま、しゃあないか。傭兵団の監視もテントに入ったん見て距離詰めとるし。今ヤったら男が居るってバレかねへんからな』


 最悪やおまへんか!絶対にヤるわけにいかんやん!


 この状況なんとかしてや相棒!


『そんな慌てんでも。何とでもなるやん。魔法で眠らせるなり気絶させるなり。幻覚見せるとかもアリやな』


 そ、そうか、普段の完全装備なソフィアさんとナヴィさんならともかく、ほぼ全裸な今なら魔法で眠らせる事も可能!


『いや、マスターが本気だせば完全装備とか関係無いわ。好きなように出来るで』


 お、おお…そ、そうか。それなら心に余裕が生まれるという物。落ち着いて対処しようじゃないか。


「というわけで。あたしが左、カタリナちゃんが右に決定しましたーパチパチパチ」


「くっ…この大一番で負けるなんて…」


 あ、また考えてる間に話しが進んでた。


 どうやら俺の隣は決まったらしい。


「じゃ、ジュン君。腕を貸して欲しいっス」


「腕?ジュンの腕をどうするのだ、カモンド男爵」


「そんなの決まってるっスよ…こうっス!」


 ナヴィさんは俺の腕を掴むと強引に横になり、腕を抱きまくらのように抱えこんだ。


 む、胸の感触がダイレクトに!上半身裸だから色々ダイレクトに伝わって来るぅ!


「カ、カ、カモンド男爵!それはやり過ぎではないか!?」


「そんな事無いっスよぉ。大体男が女と狭いテントで一緒に寝るんスよ?襲われても男は文句言えないっス。この程度で済ませるなら淑女と称えられていいくらいっスよ、あたしは」


 それは嘘だ!そんなの嘘だ!こんな大胆な事する人が淑女なわけが無い!


『そうでもないんちゃうかなぁ。この世界の常識なら』


 そう言えばそういう世界だった!改めてとんでもない世界だな!


「ほらほら、カタリナちゃんも真似すると良いっスよ…あふぅ」


「何をクネクネとして……ちょ、何やってんのよ、あんたは!」


「何って…ナニっスよ。決まってるじゃないスか。それと、素が出てるっスよ、素が」


 ナヴィさんは俺の手の甲に…いや、詳しく説明するのはダメだ。禁止事項に引っかかる。


 あと、俺の心のダムが決壊する。


 てか、もうダメ!これ以上はあきまへん!


「おやすみなさい!」


「「「「「あっ…」」」」」


 魔法で強制おやすみ…あとは起こさないように枕と毛布をかけて…完了。


 危なかった…ローエングリーン家での混浴より危なかった…恐るべし、ナヴィさん……て、そうだ監視はどうなった?


『近くに来てた奴らなら、また距離をとって監視中や。どうやらゴーレムがどれほどなんか確認したかったみたいやな。ちょっと近付いただけで反応するゴーレムにビビってたわ。今日は監視に留めようってなったみたいやで』


 そりゃ良かったよ、ほんと…こんな状況で襲われたらたまったもんじゃない。


『せやな。まあ安心し。いつも通りにわいは寝てても襲撃に気付けるし。全員寝ても問題無いわ。明日も早いんやし、もう寝てまい』


 お言葉に甘えてそうさせてもらうか。


 しかし、ナヴィさんに腕を抱きまくらにされたままだし、いつの間にかカタリナも腕を掴まれてる。


 この状態で眠らないとダメなのか…眠れるかなぁ…なんだろ、この天国のような地獄… 

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