第45話 原因は俺でした

「つまり…ジュンは今回のトランス・パレードは魔獣達が起こした物だと考えたってのか」


「そしていち早く迎撃しようと飛び出した。そう言うのだな?」


「はい。その通りです」


 亜人達のトランス・パレードを収束させた後、俺は門を守る兵士の詰め所、その一室で正座させられていた。


 俺を説教しているのはアム達とカタリナ。


 俺が飛び出して帰って来た後は涙ながらに怒られた。


 それで多少落ち着いたと思ったら、そのままの流れでお説教タイムだ。


『まぁ無理ないわ。黙って怒られとき』


 はい、そうですね。今回は仕方ないです、はい。


 でも、次に魔獣によるトランス・パレードがあったら同じ事しますけども。


『全く反省してないやん、それ』


 何を言うか。反省はしている。だがやらないとも言ってない。


 俺Tueeeeeをやるのは決定事項。俺の使命だからな!


『マスターの使命は子作りやん…』


「聞いているのか、ジュン!」


「ジュンが見かけより強えのは知ってるけどよ。だからって一人で何が出来るってんだよ」


「もう無茶したらダメだからね!わかった?」


 黙って聞いていたらヒートアップしたようだ。


 皆が距離を詰めて来る。


 ファウさんは無言で詰めて来るの、止めてくれませんかね?


「……前向きに善処します」


「それ、護る気が無い時のセリフ」


「だな。あたいにもわかったぜ」


「ピオラ姉さんを呼ばないとダメかしら」


 ピオラは止めて。あの人の説教は長いんだから。


 それより、そろそろ解放してくれませんかね?


「おまたせ。ジュン君の説教は終わった?」


「ジュン君、私達の説教も後でありますからね」


 ダメだった。むしろ増えた。


 亜人達の聴取にアニエスさんと一緒に行ってたソフィアさん達だ。


 彼女達の族長のみを集めて、別室で行われていたのだが、そちらは終わったらしい。


 因みに族長以外の亜人達は拘束されたまま、兵士達の監視の下、王都の外で待機中だ。千人近い人数を収容出来る施設を用意する時間が無かったのと、拘束したものの彼女達は犯罪者というわけではないからだ。


「終わったわけじゃないのよね。ちょっと確認したい事が出来てね」


「ジュン君、一緒に来てください」


 どうやら俺に用事があるらしい。


 というか、アレだろうな…何故俺が男だって知ってたか聞きたいんだろうな。


「ジュンが行くなら、あたい達も」


「当然参加」


「言っても無駄でしょうから止めないわよ。カタリナ殿もどうぞ」


「感謝する…が、お母様も居るんだろう?ならば私が同席するのは当然だ」


 というわけで別室に移動。


 別室に居たのはアニエスさんとゼフラさん。それからローエングリーン家の騎士と思しき女性が三人。


 そして拘束された亜人の女性が三人…特徴が無ければ人間にしか見えないが、彼女達が族長だろう。


「来たか。説教は長かったか?」


「まだ途中です、お母様」


 …まだ終わってないんですか、カタリナさん?


 もう勘弁してくれませんかね…


「ハッハッハッ!私はアレくらい勇ましい方が良いと思うがな!冒険者ならば尚更な!」


「ア、アニエスさん…!」


 貴女ならわかってくれると信じてました!流石伯爵様、懐が大きい!


「騙されちゃダメよ、ジュン君」


「弱ってる男性の味方をして取り込む…ありがちな手管です」


「その証拠に、ジュンが突進した時は泣きそうな顔で叫んでいたからな、お母様も」


「……だが、すぐに冷静になって指揮を執っていただろうが」


 …策だったんスか?危うく絆されるとこだった。


「…んんっ。本題に入る…前に彼女達から聞き出した情報を共有しておこう。ゼフラ」


「はっ。ことの始まりは一年前――」


 王都近くの森…俺達が今日行った森に住むオークとゴブリン

の混成の部族の男…雄が死んだ。


 その部族では唯一の雄が死んでしまったので、他の亜人部族に雄を融通してくれないかと頼ってはみたが良い返事は貰えず。困っていた所に現れたらしい、極上の雄が。


「三月ホド前ニ、私ノ部族ノ者ガ森デ極上ノ雄ヲ見タト報告シテキタノヨ。女ノ恰好ヲシテイタケド間違イ無ク雄ダッテ。匂イデワカッタッテ。ダカラ、ドウセ確保スルナラ極上ノ雄ガ良イッテナッタノヨ」


 三月程前…あらやだ、すっごい心当たりあるぅ。


 コッソリ抜け出して森に狩りに行った時の話ですね?


 で、このオークの女性があの森に住む部族の族長なんですね。


 そしてオーガの女性はと言うと…


「我ガ部族ハ此処ヨリ南方ニアル大草原ニテ暮シテイタ。ダガアル日…」


 大草原の傍に森を挟んで岩山だらけの荒野がある。


 草原からも見える大きな岩山がある日突然、綺麗に消えてしまうという事件があった。


「ああ…アレか。あたいらも噂で聞いた事あるぜ」


「何があってそうなったのか、全く不明だって話だったよね」


「摩訶不思議」


「ジュンはどうした?顔色が悪いが」


「いや?何でも?」


 …………はい、犯人俺です。


 アレは半年以上前になるかなぁ。


 まだ孤児院を出る前、冒険者になる前に一度デウス・エクス・マキナの性能を試しておきたいとメーティスと相談したのだ。


 で、先ずは空間転移で王都の外へ。


 其処からはデウス・エクス・マキナの高速飛行モードを使用。


 SF映画に出てきそうな真っ黒なパワードスーツのような物になったデウス・エクス・マキナを装着。


 無人地帯の荒地に行き、岩山を標的にデウス・エクス・マキナのビームキャノンモードをフルパワーで発射。


 岩山は綺麗に消え去った。


 …アレよ?岩山を貫通して森の方に被害がでちゃいかんと思って岩山の上から下に向けて発射したんよ?


 だから消えたのは岩山だけ…なんだけども。それでも問題は起きたようで。


「岩山ガ消エル直前、閃光ガ走ッタ。草原カラモ見エル巨大ナ光ダッタ。ソレニ怯エタ森ト荒地ニ住厶魔獣達ガ草原ニ逃ゲテ来タ」


 結果、オーガ達は草原に住みづらくなった。オーガ達も雄が居なくなり困っていたし、いっそ移住しようとなり、あちこち彷徨った後、以前から交友のあった森に住むオーク・ゴブリンの混成部族を頼ったという事らしい。


 そして、残るゴブリンの族長の女性はと言うと…


「私ラハアノ白イ、トロットシタノガ欲シクテ。アト雄モ」


 いきなり卑わいな事言いやがってと一瞬思ったが、そうでは無く。


 何でも数年前に人間の行商人から物々交換で貰った白いソース…マヨネーズがもう一度欲しくて王都の近くに来ていた所、オーク達に声をかけられたのだとか。


「確カ、クリスチーナ、トカ名乗ッテタ。ソウイエバ、ソコノ雌達ハ見タ事アルゾ」


「あたいらか?……ああ、そういやそんな事あったなぁ」


「あったねぇ…ゴブリンにマヨネーズ売った事」


「あったあった」


 なるほど、ゴブリン達にマヨネーズを売った行商人とはクリスチーナだと。


 まぁ、マヨネーズの時点でそうじゃないかと思ってたけども。


 ゴブリン族長の部族に関しても……俺が遠因と言える…かな?


 いや、ワンチャン俺の責任じゃないと言える?


『ゴブリン部族に関してはともかく…他二つの部族に関しては間違い無くマスターの責任やろ。どうにかせんとあかんのは変わりないんとちゃうか』


 ですよね…でも、この場合の責任って、つまりはアレでしょ?


『子作りになるやろな。ええんちゃう?ヤッてまえば』


 それは多分死ぬ…事は無い身体だった。


 でも、それはそれで色んな問題が出てくるんじゃないでしょうか?


 どうするべかぁ…

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