第Ⅱ章 第15話 ~戦力となれる者の治療を、優先すべきだっ~
~登場人物~
ノイシュ・ルンハイト……本編の主人公。男性。ヴァルテ小隊の術戦士で、剣技と術を組み合わせた術剣の使い手
マクミル・イゲル……ヴァルテ小隊の隊長。男性。ヴァル小隊の術戦士で、増強術という支援術の使い手
ビューレ・ユンク……ヴァルテ小隊の隊員であり、術士。また修道士でもある。女性。回復術の使い手
ユンクス……リステラ王国軍の術戦士。男性
シャータ……リステラ王国軍の術戦士。女性
スカラ……リステラ王国軍の術戦士。男性
「こちらに回復術士はおられますかッ」
遠くから
「あの、私が……っ」
すぐ
「どうか、この者達に
彼等の下ろした担架を、ノイシュは回復術士とともに見渡した。一人は
「この人、腹部の傷が
そうビューレが声を上げると、深手を受けた女戦士の方へと身体を
「ビューレ、待てッ」
不意にマクミルの強い語気が降り注がれ、修道士の少女がびくっと身体を
「あの、隊長……」
ビューレの声音は小さく震えており、マクミルの声に怯えながらも判じかねる様子だった。
「ビューレ、回復術を
マクミルは
「でも、この女性は、危険な状態で……っ」
ビューレは
「術士達が連携して
信念を込めたマクミルの声を聞き、ノイシュは口中に広がる苦い味を
「そ、そんな……っ」
ビューレは眼を見開き、唇を
「もしこちらの防衛線が破られれば、それこそ味方全員が地獄を見ることになるっ、今は戦力となれる者の治療を、優先すべきだっ」
「――お願いだっ、彼女を助けてくれッ」
不意に別の声をノイシュは聞き、振り向くと彼女の傍らにいた戦士の一人がビューレに
「あ……っ」
うろたえるビューレに対し、年若い戦士は彼女の両肩を
「早く
男の
――ビューレ……ッ
思わずノイシュが一歩を踏み出した瞬間、素早くマクミルが飛び出していくのが見えた――
「貴様、彼女に離れろっ……」
マクミルは修道士に
「くそっ、この野郎ッ……」
若い戦士はすぐに立ち上がるとマクミルを
「止め……てっ」
不意に
「ユンクス、私のせいで……争わないで……どうか、そちらの方を……優先して……っ」
そう告げると彼女が苦痛に顔を
「シャータ……ッ」
ユンクスに呼ばれ、シャータという手負いの女戦士は彼に向かい懸命に
「……私は……大丈夫だから……他に手の空いている……術士様に……回復術をお願いして……っ」
「分かった、
ユンクスという戦士がそう
――もしも、ミネアがシャータさんと同じ
ノイシュはそこで強く眼をつむった
――果たして僕は、他の負傷者を優先できるだろうか……っ
「おいっ、いい加減に
ふと別の声がしてノイシュが振り向くと、もう一方の担架に横たわる戦士が不機嫌そうに
「スカラ様……っ」
彼を取り巻く数人の戦士達が輝く
「……ごっ、ごめんなさい」
ビューレが涙を
「シャータッ、しっかりしろッ……」
不意に、遠くからユンクスの声が
「いやだああぁぁ――ッ」
彼の悲鳴が
「……もう、大丈夫です」
やがてビューレが静かにかざした手を下ろした。ノイシュは負傷した
「やっと治ったか……っ」
スカラが素早く立ち上がった。
「よしっ、皆の者、すぐに戦場へと戻るぞっ」
輝く
――これで、良かったのだろうか……最前線に行けば今度こそ、あの人達だって死ぬかもしれないのに……
ノイシュが修道士の少女に視線を向けると、彼女はうなだれながら肩を
――ビューレ……
ノイシュはゆっくりと
「おい、向こう岸を見てみろ……っ」
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