第Ⅱ章 第13話 ~て、敵襲だっ、レポグント軍が橋を渡ってくるぞ……ッ~
~登場人物~
ノイシュ・ルンハイト……本編の主人公。男性。ヴァルテ小隊の術戦士で、剣技と術を組み合わせた術剣の使い手
マクミル・イゲル……ヴァルテ小隊の隊長。男性。ヴァル小隊の術戦士で、増強術という支援術の使い手
ビューレ・ユンク……ヴァルテ小隊の隊員であり、術士。また修道士でもある。女性。回復術の使い手
トドリム……王弟であり公爵。男性。リステラ王国軍の総大将
――この合図は……ッ
すぐに前線からの陣太鼓だと気づき、ノイシュは顔を向けた。周囲にいた戦士達も急ぎ荷物をまとめて
「召集かっ、ノイシュ、ビューレ、俺達もいくぞ」
先んじて河畔へと歩み出していくマクミルを視界に映しながら、ノイシュは足元に置いていた大剣を拾った。
「……行こう、ビューレ」
「はい……っ」
ノイシュは修道士の少女を視界の
「もっと兵はおらんのかっ、全然数が足らんぞ……ッ」
不意にがなる声が周囲に響き、ノイシュはそちらへと視界を凝らす。横隊を組織すべく号令をかける部隊長達に向けて、一人の男が取り乱した様に
「トドリム殿下……」
不意に隣から少女の声が耳に届いた。そしてトドリムもまた彼女の声を聞き逃す事なく、ゆっくりとこちらへと視線を向けてくる。
「――確か、お前達は……っ」
途端に
――まさか、あの人が術戦士隊を率いるなんて……っ
「……殿下には、お変わりもなく」
マクミルが駆け足を止め、トドリムに向かって礼式をとった。
「お前達、何しに来た……っ」
公爵はこちらに不審な眼差しを向けてくるが、マクミルは冷静に
「……
胸に手を当てて礼節を守るマクミルに向けて、トドリムは
「貴様等のような役立たずが最前線にいても邪魔なだけだっ、早々に立ち去れ……っ」
マクミルがその場で座し、深く頭を垂れる。
「殿下、何とぞ」
「くどいっ」
「ヨハネス
冷たい声音でマクミルがそう告げるや、公爵が言い
「……ふん、せいぜい河端の部隊に入り、敵の動きを警戒するんだな……っ」
そう告げるやトドリムは背を向け、並み居る戦士達を押し退けながらその場を立ち去っていく。ゆっくりと険しい表情のまま顔を上げるマクミルの姿を見据えながら、ノイシュは静かに眼を細めた。何とか味方部隊に加わることは出来たものの、主任務が周囲の警戒では直接戦いに参加する事さえできない――
突然、角笛の音が激しく大気に鳴り響いた。
――この合図は……っ
「て、敵襲だっ、レポグント軍が橋を渡ってくるぞ……ッ」
誰かの叫び声が聞こえ、とっさにノイシュは対岸へと視線を向けた。陽が沈みかけていく中、縦隊を組んだ敵の戦士達が橋へと進撃を始めているのが分かった。明らかにこちらよりも兵数が多い。やはり、こちらに倍する程の兵力なのだろう――
不意にこちらの陣からも再び太鼓が鳴り響き、隊長の合図で隊列を組み終わった部隊が次々と
「……ノイシュ、ビューレ、これより左岸の味方と合流するぞっ」
不意にマクミルの声が
「マクミル……ッ」
たまらずにノイシュが声を上げると、彼の動きが止まった。
「――私達も、最前線で戦わなくてよいのですか……」
すぐ隣で発したビューレの声には、不安と迷いが含まれていた。
「……左岸にて敵軍の動きを警戒する。出撃の指令があるまで待機だ」
マクミルはこちらを向かずにそう告げると、再び歩を進めていった。うつむく彼女の姿に居たたまれなくなり、ノイシュはそっと彼女の肩に触れた。
「ノイシュ……」
修道士の少女が、青い
「いざとなったら、きっと僕達にも増援の指令が下りるよ。その時が来たら、彼等とともに戦おう」
ノイシュが
「さあ、僕達も行こう」
ノイシュは彼女から視線を外し、マクミルの後を追うべく歩を進めた。そして静かに奥歯を
――嘘だ、本当は戦いなんてしたくない。自分達のところに出撃命令なんて、来なければ良いと思う自分がいる――
「出撃せよッ」
不意にトドリム公爵の声が聞こえ、ノイシュが振り向くと彼を先頭に術戦士の大部隊が橋の
――どうか皆さん、ご武運を……っ
ノイシュはそっと眼を細め、最前線に向かう味方の勇士達を見送った。
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