第Ⅱ章 第12話 ~僕達には、君の力が必要なんだ~
~登場人物~
ノイシュ・ルンハイト……主人公。男性。ヴァルテ小隊の術戦士で、剣技と術を組み合わせた術剣の使い手
マクミル・イゲル……ヴァルテ小隊の隊長。男性。ヴァル小隊の術戦士で、増強術という支援術の使い手
ビューレ・ユンク……ヴァルテ小隊の隊員であり、術士。また修道士でもある。女性。回復術の使い手
ノイシュは
その
「――どうしたんだ、空ばかり眺めて」
声がした方へと振り向くと、マクミルが革袋をこちらに差し出している。中身はおそらく水だろうか。ノイシュは思わず顔を背けた。
「何でもありません」
「感傷的なやつだな」
「違うってば……っ」
ノイシュは
ノイシュが顔を上げると、視界には立ち並ぶ幕舎や食事をとる戦士達の姿が映った。その様子は一見すると至って穏やかであり、時おり笑い声さえも聞こえてくる。が、誰も口にしないものの周囲にはどこか
ノイシュがかぶりを振って隊長に革袋を返すと、不意に離れて座るビューレが視界に入った。伏し目がちなその表情は強張っており、手にした豆の吸い物には全く手をつけていない。ノイシュは彼女を見据えつつ、そっと眼を細めた。
――そうだ、ビューレが前衛に立つのはこれが初めてなんだ……
ノイシュはゆっくり立ち上がると彼女の
「ビューレ」
「えっ……」
ビューレが驚いて我に返り、振り向いたはずみで汁が
「あ……ッ」
彼女が慌てて
「ビューレ、緊張する気持ちは分かるが食事はしっかり摂るんだぞ……いざ戦いになったら、身体がもたない」
ノイシュが振り返ると、険しい顔つきで
「はい、隊長殿……っ」
ビューレが
「マクミルでいい、今は隊長じゃない」
「はい……」
マクミルの声は落ち着いたものだったが、ビューレが力なく
「……ビューレ、戦いが始まれば君の回復術はきっと、みんなに感謝されると思う。だから今は体力
をつけておかなきゃね」
ノイシュは顔を上げた修道士の少女に向かい、ゆっくりと頷いた。
「僕達には、君の力が必要なんだ」
少し大げさかなとも思ったが、思いが通じたのか彼女の顔が少しだけほころんだ。
「有り難う、ノイシュ」
そこでノイシュは眼を細め、
「たぶん戦いが始まったら、傷ついた戦士達が『早く治療してくれよ』って君に殺到するんじゃないかな」
「だがな、まずは俺達を優先しろよ」
すかさずマクミルが声を重ねてくる。
「はいっ、え、あっ……」
修道士の困り顔に、ノイシュは思わずマクミルと
「ごめん、からかったりし……っ」
突然、
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