第Ⅱ章 第3話 ~幻滅したよね、私のこと……~
~登場人物~
ノイシュ・ルンハイト……本編の主人公。男性。ヴァルテ小隊の術戦士で、剣技と術を組み合わせた術剣の使い手
ビューレ・ユンク……ヴァルテ小隊の隊員であり、術士。また修道士でもある。女性。回復術の使い手
「――すぐ戻るからっ、きっと……っ」
ノイシュはそれだけ言うと
微かに聞こえる彼女の足音を頼りに通路を折れ、階段を下り、時々擦れ違う他の兵士の間を縫う様に進んでいくと、やがて人気の無い小さな中庭に出る。
一度大きく息を吸い、呼吸を整えるとノイシュは回復術士の元へと歩み寄る。僧服姿の少女はこちらの足音に気づいたのだろう、強く眼を閉じると後ろ髪をこちらに振り向けてくる。ノイシュは静かに歩を進めていき、彼女の前で立ち止まった――
「……私、どうかしてた……っ、いつの間にか、人の命よりも戦いの趨勢や自分がどうなるかの事ばかりで……っ」
不意にビューレが深くうなだれていった。
「誰かの命を手折るノイシュ達の気持ちも、考えないで……幻滅したよね、私のこと……」
ビューレのささやくような声を聞き、ノイシュはゆっくりと首を振った。
「――そんな事ない、だって……っ」
ノイシュは眼を細めて回復術士を見据えた。彼女が静かにこちらへと視線を向けてくる――
「……だって君は、僕の命を助けてくれた。君が治癒術を施しながら、僕の手を握ってくれたこと……絶対、忘れないよ」
不意にビューレが眼を大きく開いた。そして静かに眼を細めていき、そのまま微笑みを浮かべる――
「……ありがとう、ノイシュ」
顔に
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