序章 第2話 ~ずっと、一緒に暮らしてきたのに~
父が戦死したことで、少年ノイシュは苦渋の決断を下しながらも自らの運命を歩み始めていく――
ノイシュは奥歯を
――みんな……ッ
ノイシュは思わず眼を細めた。きっと彼等は自分を
ふとノイシュは
――ミネア……
彼女は何かを感じ取っただろう、その表情は不安を
「ノイシュさん、どうしてみんな荷車に……っ」
ノイシュは
「……みんな、遠くの養護院に行くんだ」
ノイシュは思わず声が詰まりそうになるのを何とか堪えた。
「今日から、別々に暮らすことになったから……」
「そんな、だって……っ」
ミネアはゆっくりと首を横に振った。
「ずっと、一緒に暮らしてきたのに……っ」
ノイシュは何も言えずにうつむいた。彼女の言う通りだった。これまでずっと彼等とは兄弟みたいに一緒にいた。
――でも、父さんの戦死通知が届いたから、もう彼等とは一緒にいられないんだっ……
「ごめん、ミネア……ッ」
大きく
「もう僕には、あの子達を守ることができないんだっ……」
そう告げた直後、ノイシュは彼女の身体が震えるのを感じた。
「ノイシュさん……ッ」
次の瞬間、
「……ワッツ……」
そうつぶやく義妹の声が聞こえた直後、ノイシュは両手の感触が無くなるのを感じた。気がつくとミネアは荷車に向かって全力で駆け出していた――
「ルエリ……ッ」
ミネアは懸命に彼等を追うが、獣達は速度を速めていき、少しずつ距離が開いていく。荷車にいる孤児達はミネアの声掛けに誰も反応せず、ただうずくまったまま
「ザザキッ、待ってっ……」
彼等のやりとりを見ながらもノイシュは動くことが出来なかった。胸の中は
「来るなっ、ミネア……ッ」
――あの声は、ワッツ……ッ――
ノイシュが前に目を
――ワッツ、ごめん……ッ――
ノイシュは強く目をつむった。彼は三人の孤児の中では一番の年上で、ミネアが好きだと密かに教えてくれていた――
――ごめんっ、僕が、無力で……ッ
不意に足音が
「……捨てないで……っ」
彼女は
「お願い、私を捨てたりないで……っ」
――ミネア……ッ
ノイシュは思わず
――ミネア……君は術の素質があるから、僕と一緒に術士学院へ行くんだよ。そして、いつか戦場で戦うんだ――
そう告げようとするものの、喉から言葉が出て来ない。代わりにノイシュは心の中から湧き上がる声を聞いた――
――違うだろう、お前は単に義妹を
「……私、二度と
眼下の少女は身体を激しく震わせながら、懸命に寄り添ってくれる人を
――この時ノイシュ15才、ミネア14才。それから三年の月日が流れた――
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