第2話
異世界において最初に俺を襲った洗礼は『法則』の違いで、特に突然投げ出された場所の大気は『地球人類』にとってあまりにもなじみのない組成だったらしい。
ひと呼吸ごとに体がきしんで内側から壊れていくようなあの痛みは、今から思い返しても腹の底がずしりと重く冷たくなるような、人生において二度と経験したくない、『自分が壊れていく実感』を伴ってありありと思い出せた。
結論から言えば、俺はそれを乗り越えた。
けれど、生き残ることはできなかった。
俺は異世界の大気に侵されきって、死んだのだ。
……そして、死の瞬間に蘇生した。
【死因対応】。
自分が死ぬと、その原因になったものに耐性をもって復活する。
それがどうにも俺に与えられた……
いや。
俺が最初から持っていたスキルで、俺がこの世界に招かれた原因、らしかった。
なんの説明もなく放り出された俺は異世界をさまよった。
空腹で死んだ。水にあたって死んだ。食べ物にもあたった。寝ているところを食われた。毒も食らった。足を滑らせて落ちた湖で溺れた。もちろん牙や爪に引き裂かれもした。
死ぬたび自分が変わり果てていくのが実感できた。
最初のうちはなにがなんだかわからなかった。次第にこの危険な世界に放り出されたことを恨んで、それから恨むのにも疲れて冷静になったころ、彼女のことを思い出した。
初日の出を、見にいこう。
……それはこの世界の太陽ではなかった。それは隣に彼女がいなければならなかった。
俺たちはきっとうまくやれただろう。俺の杞憂はきっとはっきり問い掛ければ解消されただろう。俺が謝って、きっと彼女は許してくれた。
だって一緒に初日の出を見ようと申し出た時、彼女は嬉しそうに承諾してくれたんだ。
だから……
だから。
俺は、元の世界に帰る決意をした。
……死にながら歩き回っているうちに、この世界のこともわかってくる。
この世界にはモンスターがいる。
それが『モンスター』と呼称されているかはこの時点ではわからなかったけれど、とにかくそいつらは地球の獣や虫をベースにしていて、けれど地球の種より大きく、それから俺に対して異常な殺意をもって襲いかかってきた。
俺に、というか『人類に』対する殺意なのだというのはあとからわかる。
……そして、その『モンスター』を狩るのを専門とした人たちもいるのだと、だいぶ経ってから知った。
いわゆる『駆除人』と呼ばれる人たち。
この終わってしまいそうな世界で、それでも終わりに抗う志を持った、愛すべき、恨むべき仲間たちと、俺は出会ったのだ。
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