第162話 ゲームとの違い
『ヴレイヴワールド』のイズンのストーリーについて、思い出してみようと思う。
魔法都市イズンは、魔法や魔道具を扱う産業によってブラギ公国内の収入の大部分を占める一都市だ。
そのため、国内でもかなりの権力を持っており、イズンを統治する三貴族──ペルサキス、ガブラス、メルクーリが実質的な支配者ともいえる。
ペルサキスはリーゼの家で、ガブラスはジュディの家、メルクーリはロウヒーの家だな。
ゲームでは、イズンに里帰りをしたリーゼが、ペルサキス家に戻るところからストーリーが始まる。
リーゼの案内でイズンを巡ることになったプレイヤーたちは、街中を散策している際に、怪しい人物を見つける。
後をつけてみると、その人物は魔族だった。
街に魔族が入り込んでいる──!
そのことを知ったリーゼは、いっしょに旅をしてきたメンバーと共に、街を調査に乗り出す。
数日後、魔族の根城の情報を手に入れることに成功し、そこを強襲。
魔族の根城を壊滅させたあと、とある未完成の魔道具がメルクーリ家に流れていることがわかる。
その魔道具は、イズンにいるすべての人々の生命力と魔力をすべて吸い尽くし、使用者へと還元するとんでもない代物だった。
メルクーリ家の当主ジルドは、魔族の手を借りてその魔道具を完成させ、イズンの掌握に動き出す!
プレイヤーたちは、その野望を阻止するため、魔道具の力で最強の魔法使いとなったジルドに戦いを挑むであった!!
──というのが、おおよそのイズンでのストーリーだ。
選択肢によっては、ボスがジルド以外にもなる場合もあるけど、おおよそこの通りになるようにできている。
その他のイベントとしては、俺たちが街に入ったときに出会ったチャントマーとの遭遇イベントだ。
チャントマーはストーリー上にランダムで出現するようになっていて、選択肢を間違えると、俺たちがやられたように、奴隷行きのバッドエンドへと向かう。
ちなみにこのチャントマーが、裏でメルクーリにこの魔道具を渡している。
メルクーリとチャントマーのつながりは、この世界でもあったようで、チャントマーとジルドとロウヒーから、魔道具の売買のやり取りは確認できた。
だけど、その魔道具を完成させるための魔族とは、表面上は敵対しているように見えたんだよな。
たぶん、ジルドは魔族を逃がすために手を打ったのはわかるんだけど……そもそもなんであの魔族たちはメルクーリ家の館を攻撃したんだ?
ゲームでは、魔道具が未完成の段階で、魔族が手を出すことはない。
というのも、ジルドが完成させる魔道具は、魔王を復活させるための力にもなるからだ。
イズンの人々の生命力と魔力を魔道具に収め、その力を使って、魔王を復活の儀式を行う。
それが魔族の狙いだ。
だからあの段階で、メルクーリ家を襲撃するはずはないんだけど……
うーん……
また
とはいえ、完成した魔道具を発動される危険を考えると、手をこまねいている時間はない。
ゲーム同様、地道にメルクーリ家と魔族が繋がっている証拠を探していくしかないだろう。
そんなまどろっこしいことしなくても、メルクーリ家を強襲すればいいじゃん、と思うかもしれないけど、それはほぼ不可能だ。
さっきも言ったけど、相手はイズン三貴族のひとつ。
この三貴族は、リーゼたちを見てもらえばわかると思うけど、そこそこ仲がいい。
がっちりと手を組んでいるわけじゃないけど、バチバチに敵対しているわけでもない。
イズンだけでなく、ブラギの発展のために貢献するという目的のための同志という間柄だ。
だから魔族と繋がっている証拠も持たずに、メルクーリ家へ突撃すると、他の家も応援に来る。
イズン御三家の当主が勢ぞろいする上に、サタナのような隠しボスクラスの相手も参戦してくる。
うん……勝てるわけがないね。
『ヴレイヴワールド』でも、その段階でゲームオーバーだ。
なので、メルクーリ家と魔族の繋がりを示す証拠集めが必要になる。
その証拠集めは、本来プレイヤーとその仲間たちで行うのだけど……今の俺には、ゲームと違って、優秀な調査員がいた。
「リュウ、引き続き調査を頼む」
俺はペルサキスの屋敷に戻る際に、リュウに魔族の調査をお願いした。
さっきメルクーリ家から逃げていった奴らもいるから、おそらく見つけてくれるだろう。
「あとコレ、依頼料」
俺は大きめの金貨をリュウに手渡した。
そういえば、まだお金を払ってなかったからな。
遠慮なく使ってほしい
「ブッ!?」
え……なんか、思い切りリュウが噴き出したんだけど。
「どうした?」
「い、いえ……こんなに、よいのですか?」
あれ、おかしかったか?
俺が渡した大金貨は、日本円で換算すると100~300万くらいだ。
そう聞くと高い金額と思うかもしれないけど、こっちの世界ではほぼ無限に狩りをして素材を売れるから、そこまで稼ぐのは難しくない……はず。
「危険な仕事だし、宿代とか込みだとそのくらいするだろう。
その分、調査はしっかりしてくれよ」
「もちろんです……!
この身に代えても、必ず情報を持ち帰ってみせます!」
「いや、身には代えなくていい」
リュウは俺は深く頭を下げると、すぐにその場を去っていった。
さて、俺たちも動き出すとしよう。
まずは、ペルサキス家の当主から、街での異変について聞き取りだ。
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