幕間 とある少女たちの、存在しないはずの会話1

 ~ルナ、マイア、リーゼ視点~


「ありえないわ、何なのよ……アイツ!」


「いやー、すごいよねぇ。ホーンラビットの群れをあっさり退治したと思ったら、ランページボアも一人でやっつけちゃうし……『シルバー』でも数人で戦わなきゃ難しい相手なのに」


「しかも、素材が完全に残るように手心を加えてね。あの実力なら『ゴールド』の中堅って言われても信じてしまうわ」


「あたしだって、あのくらいはできるわ! じゃなくて……そんなやつが、冒険者でもないって何? しかもこの国の街道を目的もなく歩いてた? 絶対に怪しいわよ!」


「そうなんだけどねー。なーんか、変な感じがしないんだよねー」


「悪意がしないものね。なんというか……楽しんでる感じしかしない……」


「モンスターとの命のやり取りが楽しい? 戦闘好きのバーサーカーってこと?」


「うーん……そういうのとも違うよね……」


「そうね。王城からはしばらく様子を見ておくように言われているし、もう少し調べていきましょう」


「……あんな得体のしれないの。閉じ込めておけばいいのに……」


「それはできないよー。お姫様を助けてもらったんだもん」


「それに、彼はまだ力を隠しているわ。下手に捕まえると逆効果かもしれない」


「だからって……」


「ボクは一緒に冒険するの、楽しみだなー。強い人と一緒だとワクワクするよ!」


「そうね。パーティとしてもやれる幅は広がるわ」


「……! あたしは反対よ! 絶対に、あいつの化けの皮を剥がしてやるんだから!」




 3人の少女たちは、ホーンラビットとランページボアの肉が焼けるのを待ちながら、そんなことを話し合っていた。

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