第7話 冒険者ギルド

 冒険者。


 町の住民や旅人、特定の組織・王族・他国の要人……あらゆる人々からの依頼をこなしていく人々を冒険者と呼ぶ。


 冒険者は、特定の年齢以上であれば登録でき、その能力や依頼達成の評価によってランク分けされている。


 町の清掃からドラゴン退治まで、ランクによってなんでもこなす便利屋。


 それが、この世界での認識だ。


 というか、俺が、そんな説明文を考えてた。


 そして、そんな冒険者や、冒険者への依頼を管理するのが、冒険者ギルドと呼ばれる場所だ。


 俺は、三人に連れられて、その冒険者ギルドを訪れていた。


 見た目は大きな平屋のようで、内装はバーと役所の窓口を合体させたみたいになっている。


 バーのようになっている場所には、簡易的なテーブルやイスがいくつか置かれ、冒険者とみられる者たちが賑やかに話し合っていた。


 しかし、俺たち……というか、ルナたち三人が入ったら、空気が変わった。


「おい、見ろよ。あいつらだ」


「『グレイスウインド』だっけ? 最近、名前つけたパーティ」


「姫さんからの信頼も厚いから、いろいろ頼まれてるらしいぜ。この間も城の兵士を差し置いて護衛だと」


「ヒュー! 全員『シルバー』ってのは伊達じゃないね」 


「若いってのはいいもんだ」


『グレイスウインド』は、ルナたちのチーム名で、『シルバー』というのは冒険者のランクだ。


『ストーン』『アイアン』『ブロンズ』『シルバー』『ゴールド』『プラチナ』の順にランクは上がっていく。


『ストーン』は、なりたての冒険者で、『プラチナ』は、国にいるかどうかという英雄クラスだ。


『シルバー』は、町を代表する上級冒険者といったところだ。


 ルナたち3人は、この王都を代表する冒険者であり、さらに全員が整った容姿をしている。


 ギルドに入れば注目を浴びないわけがない。


 さぞかし緊張してる、かと思いきや……


 ルナは、表情を消して、一切を無視。


 マイアは、「どうもどうも」と笑顔で手を振っている。


 リーゼは、「文句があるならかかってきなさい!」と腕を組んで睨みを利かせている。


 三人とも、平気そうだ。


 慣れっこのような感じに見える。


 むしろ俺のほうが……


 いや、俺もなんだかんだで、やりこんだゲームで注目されたことがあるので、あんま気にならないな。


 それに相手は、ゲームのキャラクター。


 気にするほうがおかしいか。


 ……と、ルナたちが立ち止まった。


 冒険者たちが多いバーエリアを抜けて、役所エリアのカウンターについたからだ。


 カウンターにはギルドの職員である女性のキャラクターがにいる。


「こんにちは、『グレイスウインド』の皆さん、今日はどういったご用件ですか?」


「新しく冒険者登録をしたいの。こちらの彼を」


 ルナが俺を紹介する。


「『グレイスウインド』に新しいメンバー!? いいと思いますよ。『シルバー』とはいえ、女の子3人では何かと心配で……こほん。いえ、大変でしょうから。では、こちらの用紙に記入をお願いします」


「ええ。でも、もう一つお願いがあるの。彼には『シルバー』のランクを用意して」


「え……『ランクスキップ申請』をするつもりですか!?」


 ランクスキップ申請?


 なんだぞれ?


 俺も知らんぞ……


 最初は薬草取りをなどをして、意識離脱型のVRになれるチュートリアルがあるはずなんだが……


 AIが自動作成したのか?


 それでこちらの考えたルートと分岐を?


 いったどこで?


 ……これもログアウトしたら、確かめてみよう。


「おいおい、嬢ちゃん」


 と、俺が心のメモに確認内容を記していると、大柄な冒険者が近くにやってきた。


 見れば、冒険者ギルド全体がざわざわしている。


 なんだろう?


「『ランクスキップ申請』は『ゴールド』からの特権だ。いくら嬢ちゃんたちでも難しいぜ」


「わかっています。ですが、『ゴールド』以外にも申請が可能な方々がいらっしゃいます。たとえば……」


 ルナは、マイアから一枚の書類を受け取り、ギルドの受け付けに提出した。


「陛下、とかね」


「この剣の依託……王族の刻印!?」


「というころで、試験の準備をお願いね」


 ルナは、上級冒険者の圧を含ませながら、受付の女性に優しく微笑みかけていた。

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