第12話彼の記憶

「…ここは…わたくしがいつも見ます夢の中…」

木造の造りの家の中に居るシェリル嬢は、部屋の中を歩き周り男女の笑い声が奥の部屋から聞こえていた。

『あ!兄ちゃんお帰り』

『…ああ、ただいま…』

『こ、こんにちは、お邪魔しています…』

『…こんにちは…』

学校の制服を着た女子が慌てて立ち上がり、兄に頭を下げていた。

『そんな畏まらなくても良いよ、兄ちゃん紹介するよ俺の彼女で○○って言うんだ』

『あっ、あの…○○○○って言います。』

『…彼女!?…』

ドクン…と心臓が一瞬高鳴り兄の手は握り拳を作りゆっくりと手を広げ、お互いに笑顔で会話をする弟と彼女の姿を見てその場を離れた。

ドクンドクン…

階段を登る兄の息が荒く苦しくなり、上がる階段を途中で足を止めた。

「はあ、はあ…何故わたくしが苦しくなるの?何故こんなにもイライラするの…ねぇ、貴方はどうしてわたくしに夢を見せるの?何が言いたいの?…」

シェリル嬢は目の前にいる兄に話し掛けたが答えて貰えず、パア…と目の前が光り、兄と弟が同じ部屋の中で机の椅子に兄が座り、ベッドの上には弟が座り暗い顔で俯いていた。

「…今度は一緒にいますのね…でも空気が重いわ…」

『…いつから付き合っていたんだ?』

『…一ヶ月前から…彼女から告白を受けたんだ』

『…は、一ヶ月前は俺にあんな事をしておいて彼女から告白していただと?』

ビクッと弟の体が動き下を向いたまま何も言えずにいた。

「あんな事とは何があったのかしら…」

シェリル嬢は、まるで劇場の場面を見ているような感じでベッドの上に座る弟の隣に座り、じっと二人の兄弟を見ていた。

『に、兄ちゃんの事は本気だよ。彼女の告白は最初は断ったんだ…でも落ち込む彼女の姿を何度も見て気になるうちに…俺の方から彼女に…』

『…告白した』

『……』

『…彼女と付き合いながらも…お…っ…』

『……』

『はぁ…最低だな…最低なのは俺の方か…』

『に、兄ちゃん、俺…』

『もういい…』

カタンと座っていた椅子から立ち上がった兄は、ベッドの上に座る弟の側を通りドアの前に来た時だった。

『兄ちゃん、待つ…』

バッ!と兄の手を掴もうとした弟の手をはね除けた兄は『コンビニに行く…』と言うと弟を残し部屋を出た

ポロポロ…と涙が落ちるシェリル嬢の目は視界が霞んでいた。

「…何故こんなに胸が苦しくなるの?これは…彼の心…?」

スゥ…と閉じていた瞼を開いたシェリル嬢は、頬に触れる暖かい物を感じ、ベッドの上に眠る側に気配を感じた。

「…お兄様…?」

シェリル嬢の側に居るのは兄のカインではなく、アルフレッド王子が側に立つ姿があった。



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