第5話盗み聞きをする妹

「あの…カイン様御隣座っても宜しいですか?」

「ごめんね、先約が居るんだ」

「そうですか……」

一人の女子がカインに声を掛けたが断られ肩を落としカインの側を離れた。

「はぁ…何人同じ事を言っただろう……」

(『わたくしが知る限り五人の女子に声掛けが在りましたわお兄様』と、わたくしは御知らせしたいのですが、今のわたくしにはお兄様に声を掛ける事が出来ませんわ…)

授業が終わり、真っ先にいつものベンチに来たシェリル嬢はベンチの後ろの茂みに隠れ、アルフレッド王子が来るのを待っていた。

(カインお兄様もわたくしが側にいる事は知りませんまさかわたくしがベンチの後ろに居るなんて知らないでしょう)

クスッと声を出さずに微笑むシェリル嬢はまだ来ないアルフレッド王子にイライラしていた。

(アルフレッド様はまだ来ないのですか?カインお兄様を待たせるなんて、お兄様御優しいから怒ります事は無いでしょうね……それにしても何をしているのかしらあの王子様は)

イライラの気配がベンチに座っているカインにも伝わる程だった。

(ふぅ、シェリー先に帰るようにと言いましたが、後ろの茂みから凄い圧力を感じ隠れているのが分かります…)

「カイン!」

サクサクと歩き近付く足音と笑顔を見せるアルフレッド王子がベンチで座っているカインの側へ寄っていた

「遅く成ってごめん、女子達が中々放してくれなくて今に成ったんだ」

「気にしなくて良いよ、大変だな人気者は」

(『ははは』と笑って許して上げますお兄様は優し過ぎますわ)

カインの隣に座るアルフレッド王子は頭に手をやり笑顔を見せていた。

「久しぶりだねアルと二人で話しをするのは」

「ああ、カインと二人で話しがしたいと思い、突然だったけど誘ったんだ。お互い一人でいる事が無いだろうたまにはゆっくりカインと話しがしたいと思ったんだ…」

「クスッ、そうだね」

(…お兄様嬉しそうですわ…男子のお友達は他にもいらっしゃいますのにアルフレッド様と御話しをしますお兄様は楽しそうですわ)

「ところでカインの妹は帰ったのか?」

「え、あ…ああ、アルが二人で話しがしたいと言っていたからね先に帰るように言ったよ」

(本当は後ろの茂みの中で隠れているとは言えないからね……)

「カインの妹だとは知らず彼女だと思っていたんだ、いつも側にいる姿を見掛けていたから」

「可愛いだろう私の自慢の妹なんだ」

(お、お兄様~っ、嬉しいですわお兄様から自慢で可愛いなんて…ふふふ)

「……あ…カインごめん、君の妹の顔見て居ないんだ…」

(ま、まあ…なんて失礼な王子なんでしょう、お兄様の親友でも許せませんわ、それでしたら周りに居ます女子の方達の顔も見て居ないのでは在りませんか?)

「ははは、アルらしいと言うか…学校だからゆっくり見れないと思うから今度妹にも会ってくれないか?三人で会話をするのも良いと思うんだ」

(な、何を言いますのお兄様は、わたくしが一緒に居ましても輪の中で外れますのはわたくしなのですよ)

茂みの中で一人モンモンとしているシェリル嬢は、普通の会話で話しが弾む二人を見て『わたくしは何をしているのでしょう…』と足が痺れ始め、カインより早く帰らなくては成らない事を今頃気付き始めたシェリル嬢だった。

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