第4話 ギルド最強がヤバすぎた
「はい! ここが私たちのギルド『白星のミルキーウェイ』のホームです」
真っ昼間からどんちゃん騒ぎをしているかのように騒がしく、ギルド内の盛り上がりは鼓膜が破れるかと思うほどすごかった。
そう。俺は受付嬢のミラさんに手を引かれて、この大都市ホワイト・ノヴァを拠点に活動している『白星のミルキーウェイ』というプレイヤーギルドのギルドホームまでやって来たのだった。
ホームの建物は立派でどこぞのお屋敷かと思うほど広々としている。扉から中央にかけて開けた空間が作られており、左にはクエスト掲示板、そして右には飲食や休憩のための椅子とテーブルが置かれていた。
「あの、ミラさん。ギルドって普段からこんなに盛り上がってるものなんですか?」
「ううん、今はたまたまなんです。3日後に『覇王祭』が行われるので、みんな勢い付いてるんですよ」
『覇王祭』……何だそれ?
覇王という響きに興味を持ち、詳しく話を聞いてみる。
ミラさんも得意げになって話してくれた。
どうやらここファンタジア王国では、いわばラノベでよくある冒険者的な存在として『プレイヤー』と呼ばれる職業が存在している。主に採取やモンスターの討伐等の依頼をこなし国の治安維持に貢献しているらしい。
ちなみに『プレイヤー』は王国内にある6つのギルドのいずれかに参加することが義務付けられており、個人のランキングまで公表されているらしい。
「各ギルドのエースプレイヤーは『覇王』と呼ばれているんですよ。有名な人を挙げると、ギルド『黄雷のライトニング』に所属している《黄之覇王・剣聖イクス》さん。後はギルド『黒夜のエクリプス』に所属している《黒之覇王・賢者ヨルハ》さんがいます。ちなみに2人は国内最強プレイヤーの2位と1位ですよ」
出ました。ラノベ界の最強筆頭格……剣聖に賢者。
どうやらこの異世界でもトップクラスの強さらしい。
「ちなみに『白之覇王』は?」
「『白之覇王』は先日プレイヤーを引退したので、現在は空席状態なんです。『覇王祭』はその空席となった『白之覇王』の座を賭けて、当ギルド内のプレイヤー同士の決闘戦を行なうんです! 私は……アソトさんこそ真に覇王になるべき人だと思いました」
そんなモジモジしながら、期待してます感出されちゃうと勘違いしちゃうよ?
頬を染めながら一生懸命に訴えかけてくるミラさんは、どうやら本気でそう思ってくれているらしい。
「ちなみに、どうしてそう思ったんですか?」
「それはもちろん、アソトさんが《未来予知》と《ドラゴンスレイヤー》の複数スキル保持者だからです。《剣聖》は剣に関する派生スキルを数多く使えますし、《賢者》は数多のオリジナル魔法を習得してます。強い人は複数スキル保持者の方が多いんです」
うん。ミラさんは未だに勘違いしているようだが、俺が使えるのは【ゲーム機能】のスキル1つのみだ。話を聞く限り、今の俺では《剣聖》にも《賢者》にも遠く及ばない気がする。
でも美少女のミラさんがここまでお願いしてくるんだ。
男ならやるしかねぇ!
「俺、やってやりますよ。『覇王祭』を制覇してみせます!」
ミラさんに向けてキメ顔でそう答えると、後方で馬鹿にしたような笑い声が聞こえてくる。
「ブッハッハッハッハッ。お前みたいなしょんべんくせぇガキが『覇王祭』を制覇するだぁ? 家帰ってママのおっぱいでも吸ってな」
そう喧嘩をふっかけてきたのは、ボサボサに伸びきった灰髪に、胸元までだらしなく伸びた髭が特徴的なおっさん。ニタニタした気持ちの悪い笑みを浮かべながら、ミラさんの手を握る。
……おい、ジジイ。手離せよきたねぇ!
「ミラちゅあぁぁぁぁん、そんなガキより俺と遊ぼうなぁ? 俺がこのギルド最強で次期覇王になるのは揺るがねぇ事実なんだからよ」
ただの自信過剰なやつなのか、それとも馬鹿なだけなのか。俺にはその判別が付かなかったが、ミラさんが静かに話してくれた。
「この方は《ツインアックス》のスキル所持者であるボッサリーノさんです。彼が今のギルドの最強格……プレイヤー年数は35年の大ベテランで、レベルは78です」
35年掛かってレベル78?!
おいおい冗談だよな?
「聞いただろ? レベル78だってんだよ。最強だぞ最強! ひれ伏せやクソガキ!」
さすがの罵詈雑言に、ミラさんも困り果てた様子だ。
こんな美少女を困らせ、あまつさえ汚い手で触れるなど許せるはずがない。
「おい、ジジイ。レベル23の俺が『覇王祭』でお前をぶっ倒してやるよ」
「レベル23? ププッ、おめぇ知らねえのか? レベル差ってのは1つあるだけでも勝てる確率なんざ1ミリもねぇんだぞ?」
……確か『覇王祭』は3日後だったな。
(リア。3日間でレベルを極限まで上げたい。良い方法はあるか?)
『アソトにおすすめの方法が1つあります。モンスターが自動でリポップするダンジョンが近くにあります。睡眠中に《オートプレイモード》を起動しますので、寝ている間にもレベルアップが可能です』
ははっ。《オートプレイモード》……つまりは放置狩りってやつだな。ゲームで簡易なクエストを周回する時に使うやつだ。
7日間の経験値ボーナスもある訳だし、レベル78くらいならいけそうだよな。
高鳴る鼓動を胸に、口元が緩む。
俺は拳をギュッと握りしめダンジョンへと向かった。
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