第3話 甘い蜜
中学生2年生の頃。女というものについてどう見られているか学んだ。私は気づいていなかったが胸が大きかった。大人の男は、私が何もしてなくても、オナニーはしているのかとか、何人とセックスしたのかとか、何カップなのかとかたくさんの事を聞かれた。私はそんな話したくないから濁していると、本当は好きなんだろ、とか、本当はおちんちんが好きなくせにとか言われて、私の心も濁っていった。
それ以来、子供の頃はやたらと大人の男が苦手で嫌いだった。
さらに自分の胸の価値というのによくわかったのは、話してもないのに、胸重くないの?とこれまた大人の男の人に胸を下からタプタプと触られた事。そして、女友達の家で犬を触っていると、酔っていたその子の父が犬にかこつけて私の胸に当たるように触っていた。
そしてその友達とは遊ばなくなった。そもそも友達というのも怪しい関係ではあったが。
女は嫌だ、女になりたくない、人間になりたい、そうして自分を更に嫌いになっていた頃。ふと、消えてしまいたいと思ってなんとなく池のある公園に行った。ここは前に殺した所とは全く違う公園だ。
着くと、先に誰かが居た。池の前に立ち、何かを考えているようだった。
近づくとどうやら大人の女性だった。彼女はふと視線を下に向けた。その寂しげな、悲しげなその雰囲気が美しく感じた。そこだけが違う空気を漂わせているような、人間ごときがそこに入っていいのか。
私は、私ごときが、彼女に近づきたくて歩いていった。甘い密に誘われるように。
近くに行くと向こうも気づいてこちらを見た。あぁ、私を見ている。彼女の憂いを帯びた瞳に私が写っている。なんだかそれだけで少しうれしかった。
なぜあなたはそんなに悲しそうなの、と聞いてみた。
なんだか凄く息が苦しいの。
そう、彼女はぽつりぽつりと話していった。
私、社会人になって何年か経つけど。相変わらずひどいままでね。未成年の頃、知らない男性たちに無理矢理触られてたの。逃げたいから周りにSOSを送るけど目をそらされて、挙げ句の果てには周りの大人が背中で壁を作って。悲しいことに家族にすら見捨てられた。
そしてね、それでも頑張って大人になったの。たしかに、少なくはなった。けどなくなりはしなかった。お酒も飲んでなくて仕事の話をしていたのに、彼は失恋したばかりみたいで、突然キスされたり胸を揉まれたり。相談したいというから、昼に人の多い喫茶店に行ったの。善意にかこつけて、無理矢理キスされたり。だから、ここで一旦やり直そうと思ったの。そろそろ薬が効いて眠くなるんじゃないかな。
そう言って彼女は水の中に入っていった。どうやら眠かったらしく、水の中で心地よさそうにしていた。
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