第2話 希望を与えて
あぁ、懐かしい。中学の頃。1年生。
私はもともと明るい性格ではなかった。本が好きだし漫画も好きで、好きだから自分でも書いてた。
けど、周りはそれが異常に見えたみたい。暇さえあれば好きな事ばかり考えて、時間があれば読むか書くかしてるから。
その頃あたりかな。裏表、というのを知ったのは。当時の私は凄く馬鹿で純粋で、悪意を持って来た人もすぐ信じて懐いてた。そしてその悪意を見ることになったのは中学一年生の頃から。当時は、嫌いなのになんで仲良しのふりをしにくるのだろう、と不思議だった。今でも不思議だ。
いつもどおり、利用しにくる以外は誰も近寄らなくて、陰口を言われる。こっちにまで聞こえてるから陰口と言えるかは分からない。
思い返せば、おかしな人が居た。面白いと思って暴力をふるう人だ。それは私以外にもやっていたから、本当に面白いと思っていたのだろう。
相変わらず、存在を認められているのか認められていないのかよく分からない日々。家ではもう少し酷いからまだマシだと思う。
秋ごろかな。ちょうど物悲しくなってくる季節。学校の帰り、田舎だから
少し、人との関わりを
前を歩く同じ中学生の子がコケた。コケ方があまりにも重く痛そうだったので走って声をかけた。その子は笑いながら、大丈夫と言っていたが、膝から物凄い血が出てきていた。私もよくコケるので、骨まで痛みがしみてしばらく動けないのはよく分かる。私はハンカチを取り出し垂れている血を拭いた。
少し顔をチラ見をしたら、泣いている最中だったようで顔が涙や鼻水でぐしゃぐしゃに濡れていた。
見ていると、心がツンと痛くなったので何か出来ないかと思い、何かあったの?と聞いた。
その子は、更にうずくまり、泣きながらこう言った。
毎日楽しいはずなのになぜだか悲しい。ううん、楽しいと思いこんでいる事は知っている。知っているけどどうにも出来ない。愛が欲しいの。暴力じゃなくて愛が欲しい。自分の欲をぶつけるんじゃなくて、愛が欲しい。自分は生きていいって、生まれて来てくれてありがとうって。
そんな事を言うものだから、心から涙があふれ出して思わず溺れそうになった。私は知っている。そういう事をしてくる人は、こちらから愛をあげても、人間である限り、依存症がある限り、ストレスがある限り、親であっても何も変わらない。その事を伝えたら、その子は絶望をしてしまった。
だから彼女に希望を与えた。
来世に行ってやり直せばいい。嫌な記憶は忘れて、次にすれば良い。いいんだ、それで。何も悪くない。自分の人生なんだから、自分本位でいいんだ。
そうすると彼女は、やり方が分からないと言うので、カバンに入っていたロープを取り出した。自然が多い道なので、少し奥に入り、使いやすそうな木を見つける。
彼女は最後に、次は上手く行くかな、と呟いた。私は希望をもたせるため、うん、と頷いた。
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