第306話、強襲する魔剣


 黄金ベスティアともいうべき、おそらくマシンドールだろう黄金騎士は、それぞれ魔剣ダーク・プルガトーリョを持ち、俺の前に立った。


「ヴィゴ!」


 シィラやルカが俺の隣に立とうとするが、とりあえず止める。


「お前たちは手を出すな!」

「でも!」


 一対三って言いたいんだろ? 人数ならリベルタクランのほうが全然人数は多い。だが、相手は、ダイ様の姉妹魔剣だぞ? 数の優劣など関係ない。


「いいから! ……ダイ様、あの魔剣の特徴を教えてくれ! こいつらも、適性がないと6万4000トンか?」

「そのあたりは同じだな。だがあの黄金騎士はキチンと保持しているから、適性はあるのだろうよ」

「直撃したら、その分の重量で衝突か?」

「聖剣、神聖剣なら、魔剣の効果をキャンセルできるから重量も関係ない。だがそれ以外は無理だろうな! あ、我は魔剣だが大丈夫だ。重量特性に関しては奴らと同じだから効かぬ」


 つまり、まともにあの魔剣を持った黄金ベスティアと戦えるのは、俺とヴィオしかいないってことだ。


 それ以外は近接戦に巻き込まれたら、ガードも意味なし。俺がこれまで敵にやってきたように超重量アタックでミンチ確定だ。


「それなら、僕は加勢できるね!」


 ヴィオが聖剣スカーレット・ハートを手に、俺の横に並んだ。


「いくらヴィゴでも魔剣相手に一対三は厳しいでしょ?」

「まあな。だが油断するなよ。あの黄金騎士、ベスティア並か、それ以上の能力はありそうだ」


 人間離れしたパワー。跳躍力、スピード。そして防御力……はどうだろう。黄金鎧は、果たしてサタンアーマー並の強度があるか否か。


「他の者は距離を取れ。絶対に近接戦はするな!」


 しても、絶対に全部避けろ。


 ノシノシと歩く黄金騎士。重々しい黄金鎧を装備しているが、歩き方といい動きといい、ベスティアとほぼ同じのようだ。


「えーとっ、誤解しないでね! 私は関係ないからねぇ!」


 マニモンが玉座を離れ、コウモリのような羽根を出すと、天井に浮かび上がった。


「あと、あまり壊さないでよ、あなたたち!」


 地獄の大魔王とは思えないほどの逃げ腰である。これはこの魔剣、相当ヤバイかもな。ダーク・インフェルノに匹敵する魔剣ともなれば、当然か。 


『まずは……』

『お手並み拝見なのだわ!』


 正面の一体がいきなり踏み込んできた。俺は右手の神聖剣で、黄金騎士の剣をガード。ああ、ダイ様の言うとおり、超重量はキャンセルされている! 間髪を入れず、左手の魔剣――もとい、魔竜剣を叩き込む。


 ズガンッ、とダーク・インフェルノの一撃が直撃し、黄金騎士が後退した。しかしその黄金装甲に傷ひとつついていない!


 こっちの6万4000トンも無効か。それに加えて装甲のあの硬さ。サタンアーマー並なのは間違いない。


 むしろサタンアーマーなら、神聖剣やヴィオの聖剣なら通用する。魔竜剣で受けて、神聖剣で攻撃すればよかったかもしれないな。


「ヴィゴ!」


 リーリエの声がした。もう一体が、右手方向から滑るように移動し、俺の側面をつこうとしている。


 なおもう一体は、ヴィオに向かったようだ。やられてくれるなよ!


『頂くわ!』


 魔剣少女の声と共に、右から回り込んできた黄金騎士が弾丸のように突っ込んできた。とっさに下がって回避!


「ヴィオ、下がれ!」

「んっ――!」


 俺が下がったことで素通りした黄金騎士が、ヴィオたちの方へ。勢いがあり過ぎて止まれず、寸で避けたヴィオの目の前で黄金騎士同士が衝突した。


『何をやっているのかしら? 敵はあっち!』

『むしろあなたが避けるべきだったわ!』


 魔剣同士で言い争う。あの激しいぶつかりでも、黄金騎士には傷がついていない。何というタフさだ。


『この木偶、早く動くのよ!』


 起き上がる二体の黄金騎士。……とか、のんびりしている場合じゃなかった。最初に弾いた黄金騎士の手の魔剣が、赤い光を収束させている。


 ダイ様の姉妹剣だ。プルガトーリョ版46シーか? こんな室内で使うとは思えないが、ドラゴンブレスのようなブラスト攻撃もあり得る。


「撃たせるかよ! オラクル、セブンソード!」


 俺は右手の神聖剣を連続して振るう。実際の剣が届く距離ではないが、飛び道具のように中距離にも対応しているのが神聖剣のセブンソードだ。火、雷、土、水、氷、光、風の乱舞が、黄金ベスティアを襲った。


『くっ、やるのだわ!』


 魔剣自らが、黄金騎士をガード。普通は本体の方を守ると思うのだが、本体で人形をガードするとは……! それともあの黄金騎士の方が本体……じゃないよな、どう考えても。


 しかし、神聖剣の連続攻撃でも、装甲に傷はついたが、倒しきれないとは。途中で魔剣が防いだとはいえ、神聖属性にもある程度耐えるとは……!


 俺はちら、と視線をヴィオへ向ける。そっちに二体が向かい始めていた。彼女に二体は厳しいかもしれない。


 と、そこへユーニやネムが弓による援護射撃で、黄金騎士を牽制していた。さっさと数を減らさないと、仲間たちが危ない。


「ダイ様!」

『応よ!』


 オラクルセイバーのセブンソードで足止めしている一体に、魔竜剣で溜めた力をぶつける。インフェルノ・ブラスト!


 紅蓮の業火が、黄金騎士に直撃! 神聖剣でも倒しきれなかったんだから、それサタンアーマー並みに硬いけど、サタンアーマーじゃないんだろ?


 ならば、魔竜剣の攻撃は効くはず……!


 爆炎が消える。そこには関節などから煙を上げる黄金騎士の姿。ガクリと膝を折り、動かなくなったが、形が残っているなんて、何という装甲だ!


 とりあえず一体は動けなくなった!


『甘いのだわ』


 動かなくなった黄金騎士が消えた。少女の姿になった魔剣は、人型のまま滑るように迫る。


『まだ、動けるのだわ!』


 ジャンプ、そして渾身の飛び蹴り。俺は慌てて回避。避けたが、少女の足が黄金の床を砕き、亀裂を走らせた。


『こちらは、この姿でも戦えるのだわ。そして、こんなことも!』


 少女の腕に、剣が二本生えた。

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