第204話、ホワイトリザードの反撃


 シールド!


 俺は腕に固定しているサタンアーマー素材のカイトシールド――SGシールドを付き出して、防御姿勢をとった。


 少々の形状変更が可能なSGシールドは大型盾となり、俺より後ろの面々を守る。最前列のベスティアも防御姿勢で飛来した敵魔法を弾いた。


 さすが、サタンアーマー装甲、何ともないぜ!


 白ローブの連中――魔法を放った者たちが、俺たちを見て驚いている。そりゃそうだ。部屋に入ってきた直後に逃げ場のない攻撃魔法の集中。こちらに大打撃ないし、全滅させたと確信しただろうから。


「よし、行くぞ!」


 一方的に敵に叩かれてやる意味はない。反撃だ!


 同じく盾を展開していたルカ、シィラも俺に続いて左右に展開した。ベスティアは背中に担いできた量産型ガガンを構えると、白ローブたちに魔法弾を雨あられと撃ち込んだ。


 何人かの白ローブが倒れたが、すぐに防御魔法を展開したが、攻撃を防いだ。


 なら、これはどうかな? 俺は神聖剣を振るう。七つの斬撃を連続で、連続で、連

続に繰り出す!


 防御魔法が神聖剣からの魔法弾を防ぐかに見えたが、一、二発耐えるのが限界だったようで、防御を破られた敵魔術師が次々に倒れていく。


「ん……!」


 視界に弓を構えている白ローブの戦士が見えた。とっさに向きを変える。頭のすぐそばを矢が掠めた!


 俺を狙ってやがった! 神聖剣を一振り、氷つぶてが、敵弓使いに飛んだが、そいつは、ひょいとジャンプして躱すと、再度弓を番えた。こいつ、やるじゃん!


「こいつはどうよ!」


 左手の魔竜剣の剣先を向けて、火炎弾発射。直撃を避けた――残念、そいつは爆発すんのよ!


 エクスプロージョン! 火球が広がり、弓使いを爆発に飲み込む。


 お次は――セッテの町で見た鎧飾り、もとい大騎士が2体突っ込んでくる。聖堂のやつより、何か鎧が豪華っぽい。片方は緑、もう片方は赤。


『ベスティア、行くぞ!』


 カイジン師匠とベスティアが、大騎士を迎え撃つ。聖堂のやつは、師匠の敵ではなかった。


 ガキン、と金属音が響いた。


『うぬっ!?』


 師匠の斬撃を、緑の大騎士の剣が防いだ。さらに赤の大騎士も、ベスティアのブレードを完全に受け止めていた。うっそだろ。マシンドールのパワーを受け止めるなんて、相当だぜ。


 俺は素早く戦場を確認。奥に祭壇らしきものがあり、まだ十数人の白ローブがいる。そこへひとり倒れた。イラが長銃で狙撃したのだ。


 左右に展開したルカとシィラは、それぞれ白ローブの戦士と交戦中。


 ルカは、相手のスピードに押され気味。シィラは押しているように見えて、槍の怒濤の突きが躱されまくっている。


 と、シィラが相手をしていた戦士が、槍を躱した瞬間、飛来した矢が足に当たった。ネムだ。比較的近距離から矢を放ち、戦士の動きを制限したのだ。


「なぁにぃ!?」

「隙ありだ!」


 シィラの突きが、白ローブの戦士の胴を捉えた。左は抜けた。


 右のルカには、アウラが援護に入った。魔術師からシノビ形態になった彼女が、ルカの間合いを潰している敵の側面を突いて、牽制する。


「師匠」

『ヴィゴ、正面はわしらに任せろ!』


 カイジン師匠とベスティアは敵大騎士を抑えるようだ。了解、俺は奥にいる敵を片付けてきますよっと。


 俺は左寄りから、部屋の奥へと走る。ダッシュブーツで一気に加速して、シィラに追いつく。すぐ後ろをセラータが俺のスピードについてきていた。


 またもイラの銃撃で一人が倒れた。残りは、七、八人か。


「ヴィゴ・コンタ・ディーノ!」


 どうやら指揮官らしい白ローブの魔術師が叫んだ。ほんと、こいつらさっきから人の名前を。俺ってば有名人だな!


「滅びよ! 光の前に――滅殺!」


 光が視界いっぱいに広がった。とっさに剣を構え――



  ・  ・  ・



 ヴァンダー・フォリッシュは、スヴェニーツ帝国特殊部隊、白ローブがトレードマークのホワイトリザードの魔術師だった。


 情報収集が主な任務だが、古の魔法や魔剣、聖剣を捜索、回収するのも彼らの仕事であった。


 不老不死の伝説が伝わる竜神の洞窟を捜索するため、ここに来た。秘密の隠し通路を発見し、ようやく伝説の謎が解き明かせると思った矢先に、襲撃を受けた。


 ――奴は、手配にあった魔剣使い!


 フォリッシュも、部隊にも伝えられていたヴィゴというウルラート王国の魔剣使い。だがまさか、ここで遭遇することになるとは思いもしていなかった。


 ――しかも奴ら、手強い!


 フォリッシュの部下たちも決して弱くない。戦闘では暗殺部隊であるシャドーエッジより下に見られる傾向にあるが、魔法武具や魔道具を多く保有しているのは、ホワイトリザードの方だった。


「奴らも、マシンドールを保有しているとは……」


 大騎士――こちらはスヴェニーツ帝国が発掘した古代人形兵器である。シャドーエッジには、帝国が独自に作り出した量産型が与えられたが、ホワイトリザードのマシンドールは、発掘されたスペシャルなものである。


 だが、ヴィゴとその仲間たちもまた、発掘マシンドールを用いていた。由々しき事態だった。


 さらに前衛が突破され、ヴィゴらがこちらへ突っ込んでくるのを見やり、フォリッシュは切り札である魔道具『太陽の鏡』を使った。


 これは光の魔法を蓄え、それを放射する古代兵器であり、1回で蓄えた魔力の全てを放出してしまうが、その分威力は凄まじく、数十人を塵ひとつ残さず蒸発させるのである。


 太陽の鏡を使った時は、自身もその強烈な光から目を庇う必要があったが――


「ふふふ、躱せまい。魔剣使いと言えど、これを食らえばひと溜まりも……」


 言いかけ、絶叫が室内に響き渡った。断末魔、ではない。声など聞こえるはずがないのだ。あまりの音に耳が痛み、やがて聞こえなくなった。


 ぼんやりする目をしばたかせるフォリッシュ。何か黒いものと炎が見えた。


「っ!?」


 フォリッシュの正面にドラゴンがいた。黒と紫、そして炎の赤をまとった暗黒竜が。


 太陽の鏡は確かに放ったはず。何故その後に、ドラゴンがいるのか? 


 次の瞬間、ドラゴン――地獄竜の口腔から業火が放射され、フォリッシュらホワイトリザードの魔術師たちを焼き尽くしたのだった。

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