第184話、新装備


「ヴィゴさーん、新しい装備ができましたよ」


 マルモがそう言って、テーブルの上にドカドカと防具を用意した。


「今度のは白いな」


 サタンアーマー素材防具は、元となっているゴムが黒だったこともあり、メインカラーは黒だった。


 俺の他、ルカやシィラの前衛組に、マルモもサタンアーマー素材の鎧をつけている。

 ディーやイラも防具の一部がサタンアーマー素材。そして共通しているのが黒系統で、クランカラーが自然と黒寄りになっていたわけだけど……。


「ヴィゴさんは神聖騎士ですからね。神殿カラーである白も多少あったほうが、見栄えがいいと思いまして、白と黒の二色をメインにしています」

「へぇ……」


 ただの白だけでなく、黒の部分も多くて、それがメリハリを生み、見た目の格好良さに繋がっていた。兜も鋭角的な突起があって、カッコよい。


「この白はどうしたんだ? 塗ったのかい?」

「いえ、ゴムちゃんが学習してくれたんですよ。色は任意に変えられるようになりました」


 え? 色を変えられるの? へぇ……。


 それは驚いた。だがなるほど。それでこの白と黒なのね。兜を持った感じ、飾りが増えているものの、重さは今使っているものとほとんど変わらない。他の装甲も、サタンアーマー素材が軽量ということもあって、どれも軽かった。


「素材はサタンアーマー素材で変わっていないので、基本的な防御性能は変わっていないですね」


 マルモは胸当てを取った。


「ただし形状の違いから刺さりにくくなっていたりします」

「それはいい」


 俺は思わずニヤリとした。


「サタンアーマー素材のおかげで大きな怪我もすることなくやってこれたからな。これからも頼りにするぜ」

「本当ですねぇ」


 マルモはウンウンと頷いた。彼女自身、ゴブリンアーチャーの狙撃を食らったことがあったが、サタンアーマー素材防具のおかげで無傷で済んでいた。


「あと、防具に関して、アルマさんが素材を提供してくれたので、マントとか服とかも強いのができますよ」

「アルマ……?」


 アラクネにされた元仲間の名前がここで出てくるのが予想外過ぎてビックリした。


「どういうこと? 素材って何?」


 まさかアラクネの足をちぎって、とか――


「クモの糸ですよ。あれ、素材としては凄く頑丈なんですよー」


 マルモはさも当然のように言った。何でも蜘蛛系モンスターの糸を加工すると、それはそれは丈夫な品になるそうだ。


「アルマが協力してくれているのか?」

「ええ。あそこまで協力的なのは、リベルタの人たちが受け入れてくれているからでしょうね。いいんじゃないですか」


 まあ、ここ以外だと安息の場所がほとんどなさそうだからなぁ。誰もこない辺境とかに隠れ住むとか、くらいか?


「今使っている防具はどうする?」


 新しいのがあるからには、当然、今使っているものはお役御免ということになるのか。


「アタシの中では、あれで試作品なんですよねぇ。なので、元のサタンアーマー素材に戻して、新しく作り直すか、あるいは予備としてそのまま保存しておくかの二択だと思います。……お金がないなら、パーツごとに分けて売るという手もありますよ?」


 サタンアーマー素材の部品とあれば、それだけも高額で売れるのではないか。何せ耐久性は存在するものの中でも最上位ランクである一方、超絶希少品であるわけだから。


「お金に困ったら、そうしよう」


 今は、これまでの依頼や報酬で、ぜんぜん余裕だけど。


「ああ、そうそう。忘れるところでした。ヴィゴさん、魔剣と神聖剣の二刀流になったじゃないですか。そこで新しくサタンアーマー素材で盾を作ってみました」


 マルモがその盾を机の上に置いた。縦に細長い印象のカイトシールドだ。超装甲盾に比べれば小さいが、その分取り回しはよさそうだった。


「手で持つことも腕に固定することもできるようにしてみました。超装甲盾だと、二刀流と相性悪いですから」


 確かに。いちいち持ち替えないといけなかったもんな。


「ゴムちゃんの分裂体素材なんで、ある程度の盾の大きさも変えられます。生きている盾、みたいなものですね」

「なるほど」


 つまり表面にゴムがくっついている盾という認識が近いか。変化することで大きさを変え、また両手に剣を持っている時は振り回しやすいように小さくなったりとか。


「いいね」


 まあ、超装甲盾もいい武器なんだけどね。ぶつけた敵も倒せる超重量だったからさ。新しい盾のほうはせいぜい打撃程度で、即死は狙えなさそうだ。


「本当は、この盾の中に邪甲獣の装甲とか仕込めたら面白いと思ったんですけどねぇ」

「マルモさん、それ本気?」

「いやあ、思っただけです。重くなるから、ヴィゴさん以外だとデメリットしかないなーとは思ったんですけどね。まあ、邪甲獣装甲を加工する方法を知らないんで、無理なんですけどね」


 ドワーフ少女は、からからと笑った。


「俺以外ってことは、メンバーそれぞれに新装備が?」

「はい。皆さんの分も新調しました。色合い以外に大きく変わったのは……シィラさんが、盾を装備できるようになったことですかね。分裂体シールドを腕に固定することで、槍を持っていても盾が携帯できるようになりました」


 シィラが盾か。これまで魔法槍装備で、盾がなかったから、守りの場面でちょっと不足があったんだよな。サタンアーマー素材の盾だから、いざという時は前衛の壁として味方のカバーができるようになるわけだ。


「あと、武器も作ってみました」


 ドン、と新たに見せたのはガガンこと、ガトリングガン。……え?


「これ新しいのを作ったの?」

「アンジャ神殿で回収した資料に、ガガンの再現図があったんですよ。でゴムちゃんと色々試した結果、外側と内部機構はできたんです……」

「そいつは凄いな」

「ただ、魔弾供給用のボックスだけは再現できなかったので、無限に撃てないんですけどね……」


 マルモは肩をすくめる。


「一応魔力ボックスを自作したので、一定量は撃てます。予備のボックスを持って行くことで、使用可能弾数を増やせるので、それでカバーですかねぇ……」


 ちなみに、魔力ボックスへの魔力充電は、アウラやファウナなど、魔力豊富組のご協力で用意する、と話がついているらしい。


「ものが重いので、ベスティアにこっちのガガンを持たせたら面白いかなーと思いますが……ヴィゴさんはどう思います?」

「ベスティアかぁ」


 ガガンは重量武器。ドワーフのマルモはともかく、それ以外の面々だと俺か、ベスティアくらいしか持てないだろう。いや、ルカとシィラなら、一応使うくらいはできそうか。


「いいんじゃないか? これからのことを考えると、ガガンの弾幕を頼りにすることも多くなりそうだし」


 少数対多数。その場面でガガンの遠距離からの連射能力は頼もしい。

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