第104話、武具、作れます!


 やっぱ、ベスティアは目立つなぁ。


 目覚めたら昼になっていた。起きたら部屋にでかい黒騎士が立っているとか、一瞬びびったわ。


 さて、宿でメシを食ったら村長の家に行ってくるか、と思っていたら、アウラとイラ、マルモが俺の部屋にやってきた。


「あ、起きた? 話があるけど大丈夫?」

「もちろん。……やあ、マルモ。こんにちは」

「こんにちは!」


 ドワーフ娘はペコリとお辞儀した。一緒にいるけど、彼女は俺たちリベルタのメンバーではない。


 だからこの宿にいるのは、何か用事があるということなのだが。


「腹が減った。食堂で話そう」

「いいえ、ここでいいわ」


 アウラは言った。


「食事はここに運ぶから」

「わたし、行ってきます!」


 イラが席を外した。何だ何だ? まだ俺の中では状況がわからんのだが。

 とりあえず机を挟んで着席する。


「ついさっき、村長さんと話してきたのだけれど、単刀直入に言うわ。アンジャ神殿で回収したものは全部、ワタシたちリベルタで預かって欲しいって」


 アウラは、さらりと告げた。


「へえ、全部?」

「全部。好きにしていいって」


 その全部の中には、金銀お宝もあったのだが。マシンドールのパーツとか魔石とか素材もあったぞ? ドワーフ的には伝説の一部じゃないのか?


「よりはっきり言うと、闇に堕ちたドワーフは不名誉な存在なのよ」

「だから、いかに古代ドワーフの産物があろうとも、呪われたドワーフたちが手をつけたものは禁忌にも等しいのです!」


 ググッと拳を固めて悔しがるマルモ。


 要するに、ペルセランデのドワーフ曰く、穢れているから触りたくないってことね。


「別に実際に呪われているわけじゃないんだろ?」

「ええ、それは問題ないわ」


 アウラが太鼓判を押した。それじゃあ決まりだ。


「なら、神殿で回収したものは、ありがたく俺たちが活用させてもらおう」


 そこへ、イラが朝食を運んできた。


「お待たせしましたー」

「ありがとう。……皆、食事はどうした?」


 そういえば同室のディーもいないけど、どこかへお出かけかな。


「もう皆、食事を済ませているわ。朝も食べた人もいれば、朝昼同時になった人もいたけれど」

「俺が一番寝ぼすけだったか」

「仕方ないわ。アナタは一番戦ったもの」


 ランチメニューは、土鍋のような器に肉と木の根みたいなものが入ったスープだった。このぷりっとした感じの肉は何の肉だろうか。


「他の皆はどうしてる?」

「ニニヤは部屋にいるわ」


 アウラ、そしてイラが言った。


「ディー君に、マッサージしてもらってました。あの子、すっごく上手なんですよー」


 そうなのか。それは初耳。


「ルカとシィラは一汗かいたから、温泉に入るって言っていたわね」

「昨日はヴィゴ様にほとんどお任せになってしまったのが、相当堪えたのでしょう」

「ダイ様はゴムと散歩していたわ」

「散歩?」

「ええ。昨日、魔王の欠片の闇を取り込んだでしょう? それでまたダイ様が能力拡大したみたい。色々試すって言っていたわ」


 また46シーみたいな新技が増えたのかな? 後で確認しないとな。


「それで、なんだけどね……」


 アウラが改まって背筋を伸ばすと、マルモへ視線を向けた。


「ヴィゴさん、お願いがあります! アタシをリベルタに加えていただけませんか!?」


 バッ、と頭を下げるドワーフ娘。


 俺たちのパーティー『リベルタ』に加わりたいと? それはまた……。


「理由を聞いても?」



  ・  ・  ・



 少々込み入った話なので要約すると、マルモは、魔王関係の闇ドワーフの神殿を探り出した上に、無許可で探索したので1年ほどペルセランデを追放されることになるらしい。


 どうやら闇ドワーフ関係に関わることはドワーフ的には罰則の対象のようだ。禁止はしてないと聞いたんだがなぁ……。


 それで、ドワーフの集落を出て、外の世界で生きていく間、今回知り合った俺たちリベルタのところで働きたいと、そういうわけだ。


「追放と言っても、実質はほとぼりが冷めるまで外に出ていなさいってことらしいわ」


 アウラが補足した。それだけ闇ドワーフの件はタブーな存在らしい。


「外に出ること自体は、前々から考えていたので、アタシとしては追放って感じでもないんですけど」


 いわゆる周囲への示し、建前というやつだ。マルモは続けた。


「外にこれ、というコネもないので、旅の冒険者さんとか見て、よさそうだなーってところの仲間に加えてもらおうと思っていたんですよ」


 そうしたら、俺たちリベルタがきて、彼女の目に止まったと。そういえば、彼女が遺跡に案内すると言った時、すぐに旅に出られそうな装備だったのを思い出す。これ前々から狙っていたんだろうな。


 ともあれ、アンジャ神殿の探索で行動を共にしたが、皆との関係も良さそうには見えた。


「俺たちは冒険者だけど、マルモはどうなの? 武器は一応扱えるけど、戦闘面は得意ではなさそうだったけど」

「アタシは冒険者じゃないですけど、一応、ここに住んでいればモンスターの一匹や二匹と戦うことは珍しくはないので、最低限の働きはできるつもりです」


 マルモはそこで胸を張った。


「ただ、アタシの売りは戦闘ではなく、武器や防具、道具を作るのが専門です。なので、アタシを加えてくださったなら、武具の整備ができます!」


 おお、何と分かりやすいアピールポイント。マルモは自分の売りを明確に説明してくれた。うちのメンバーは戦闘には強いが、裏方面はほぼ外部に頼るしかない。それでもいいのだが、自分たちでできるのは悪くない話だ。


 これは採用だ!


「わかった。マルモ、リベルタに歓迎しよう」

「ありがとうございます!」

「皆もそれでいいな?」


 マルモを連れてきた時点で、アウラもイラも知っていただろうが、一応聞いておく。


「神殿探索で、お互いに知れたからね。新しい武具のことを考えていたから、ワタシは専門家は歓迎」

「わたしも問題ありません。他の皆さんも、マルモさんの加入に反対はないと思いますよ」


 ということで、我がリベルタに、サポート系メンバーが加わった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る