第96話、ゴーレム、ゴーレム
地下2階。次のフロアへの入り口目指して歩いたら、その中ほどで闇の気配が渦巻いた。
「ゴーレム!」
泥ゴーレムと岩ゴーレム。それとドワーフ・スケルトンウォリアーが通路を塞ぐように現れた。さらに右手の崖から、ゴーストが複数、ふわっと上がってきた。
「迎え撃て!」
スケルトンウォリアーが斧や槍を手に突っ込んでくる。俺とルカ、シィラは通路の幅を広くとって壁を形成。側面のゴーストは魔術師組に任せる。
ルカのラヴィーナ、シィラのタルナードが複数の骸骨戦士を、まとめて薙ぎ払う。俺は魔剣で潰し、超装甲盾をぶち当てて、敵の骨で出来た体を砕く。
後衛を確認すれば、ニニヤが炎の魔法でゴーストを焼き払い、イラとディーは入手したばかりの浄化の杖でゴーストを光に包み、消していた。
「ゴーレム、来る!」
ドタドタと足音をさせながら、ゴーレムどもが駆け出してきた。ガタイがいいので、駆け出してきての体当たりとか、振り回す腕の打撃とか、当たればかなりヤバイ威力がある。
「駆けろ、タルナード!」
シィラが魔法槍で突く。しかしゴーレムはその自重と耐久力で、刺突に耐え、追加ダメージを与える突風にも耐えた。
「任せろ」
俺はシィラの傍らを通過し、超装甲盾でマッドゴーレムに体当たりを仕掛ける。邪甲獣の装甲を超圧縮して作られたその盾の重量は凄まじく、それが勢いよくぶち当たるのは、まさに城壁が突っ込んできたが如し。泥のゴーレムが突き当たりの壁にまで吹っ飛んだ。
さらに岩のゴーレムに魔剣での斬撃。岩のボディが刃を止める、ことなく、むしろその体を巨大ハンマーで粉々に砕かれるように真っ二つに裂けた。
「ルカ、下がれ!」
ストーンゴーレムに大剣ラヴィーナを叩き込んだルカだが、致命傷は与えられず、反撃の拳を避けるべく後退する。
硬さに定評がある岩ゴーレムだが、6万4000トンの打撃の前には粉砕されるしかない。耐久力のある奴を率先して潰すのが俺の持ち味ってもんよ。
「はぇ……魔剣、すごっ」
マルモが驚く。
「あんな頑丈なゴーレムを一撃なんて……」
敵を撃退しつつ、俺たちは通路の先の入り口を潜った。またも広い空間。しかし、砂地が多く、周囲には崩れた建物の残骸が点在していた。
「居住区かしら?」
アウラはそうコメントした。俺たちは道なりに段差を下る。ここでもゴーストやスケルトンウォリアーが出てきた。しかし、崩れかけの石の家の残骸など、局地的閉所が多く、武器が大きいシィラとルカは戦いずらそうだった。
俺が前に出ないとな。そして俺の左右を固めたのは、アウラとゴムだった。
アウラは近接魔法とかいう、物理だか何だかわからない木属性魔法で刺したり、絡め取ったりと軽戦士の動きを見せた。さすが閃光の異名を持つ魔女。
そしてゴムは基本『壁』だ。向かってきた敵の攻撃を受け、それを体に取り込んで消化した。
手を出したら負けみたいな、襲ってくるモンスターがゴムを攻撃したら、吸い込まれておしまい。待ち伏せ地点の捜索とかめちゃくちゃ強そう。
スケルトンウォリアーが持っていた武器や防具を回収しつつ探索。量産品もあれば、魔法金属製のものもあった。
地形に沿って下っていくと、次のフロアへの入り口を発見。先に行くと――
「あれ、洞窟に出た?」
広い砂地が広がっていた。天井は洞窟そのもの。左右も20メートルくらい幅があるかな。例の魔法燭台が火を燃やして周囲を照らしている。
ルカが目を鋭くさせた。
「突き当たりはまた神殿の一部みたいですよ」
「よく見えるな……」
うっすらと何か壁みたいなのが見えるくらいなんだが。
「私、目はいいので!」
にっこり、ルカが微笑んだ。
神殿別館ってところかな。俺たちは砂と岩だらけの地を進んだ。ディーが眉間にしわを寄せた。
「気をつけてください! おそらくワームです!」
砂をかき分け、巨大ミミズが姿を出現する。黒光りするその数メートルボディは気味悪くうねる。
「この広さならタルナードが使える!」
シィラは戦意を漲らせて、ワームを突く。ルカもラヴィーナで、飛び出したワームの胴体を分断した。戦闘民族姉妹は、タフである。
こういう体のデカい相手を一撃で致命傷ないし殺せる攻撃ができる前衛って強いよな。前パーティーのシャインの時は、前衛が撃破に手間取り、敵の攻撃を許したり、後衛のカバーとか大変だったが。
ワームゾーンを抜けて、再び神殿内へ。
こちらはガッチリした建物だった。土砂が剥き出していることもなく、朽ちているところもない。今でも普通に神殿で通用するだろう。黒っぽい石材で構成された内装は、燭台の炎があっても暗く感じた。
しかし、何だこれは。
広い部屋だが中央に大きな穴があって、その穴の真ん中に石段があって、四方から細い石の橋がかかっている。
「この穴、相当深そうね」
アウラが、その大きな穴を見やる。
底が見えなかった。
「これ、落ちたらヤバいよな……」
ひゅぅ、と冷たい風が吹き上がるのを感じた。マルモが膝をついて、穴を見下ろす。
「生け贄の穴。魔王の復活を企んだ悪いドワーフの伝説に出てくる、生者を落とす穴かも……」
「あの橋の先の石段は、生贄儀式の進行役の席かねぇ」
落ちるわけにもいかないから、左右の通路を回る感じか。そう思ったら、神殿の番人が出てきた。
金属の装甲で覆われたゴーレムと、魔獣石像――ガーゴイルだ。
「これまた頑丈そうなヤツらが出てきたな!」
まあ、魔剣の攻撃力に耐えられるとは思えないんだけどな。普通なら1体だけでも危険、複数が同時に出てくるなんて逃げるしかないんだけど、俺たちなら、『この程度』ならやれる!
アイアンゴーレムは硬い。とにかく硬い。ルカやシィラの攻撃も通りが悪いが、魔剣の前ではやはりスクラップと化した。
ルカたちには比較的動きが早いガーゴイルを対処する。
しかし部屋の構造上、左右双方から同時に敵が来る。片方のアイアンゴーレムは俺が防げるけど、もう片方は――
「アイスブラスト!」
「木杭!」
ニニヤの攻撃魔法、アウラの木魔法でアイアンゴーレムを足止めしつつ――
「ディー!」
白狼族の治癒術士が、獣人特有の身軽さでゴーレムの上に飛び乗ると、右腕の手甲が可変し魔王の呪いの手をゴーレムに押しつけた。するとアイアンゴーレムの体がみるみる変色し、ひび割れ、そして崩れた。
「ナイスー!」
後衛の僧侶系と侮ることなかれってことだな。呪いを武器に変え、ディーの身軽さを活用すれば前線でも戦える! いいじゃん、このパーティー!
「そっちは任せた!」
俺は次のアイアンゴーレムに取り掛かる。間もなく、フロアは制圧した。そして次の階層、祭壇のある深部に到達した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます