第四話 僕は魔法使い(猪口)

「石動君、正行君。出てきていいよ」

 綾子たちを見送った猪口が雑木林に声をかける。

 雑木林から石動肇とズボンをはいた平野平正行が出てきた。

 正行の目は泣きはらして赤い。

「ちょっと、こっちに来てご覧。あまり音量は上げられないが……」

 石動たちは顔を合わせ、猪口の前に立つ。

 猪口は両手を左右に重ね少し捻る。

 すると、その手から声が聞こえた。

――待って、これは俺も……

――その、紐パンはなんです? その突起物は何!?

――ぎゃああああああ!!

「もう、いいです」

 流石に可哀想に思えた。

 正行は同じ男として耐えられなかった。

 やがて、綾子が出てきた。

 代わるように正行たちが入ると緑のしとねに元の秋水が全裸で泣いていた。

「正行、悪かった……綾子が俺の初めてを……」

「おやっさんは正行を作ったんだから……」

 と、その言葉の意味を察した。

 思わず尻と股間を持つ。


 石動と綾子は時々、飲みに行くことがある。

 その時、酒に酔って彼女はこういう。

「私ってドSなんですよ」


「いやぁ、綾子さん。忙しいときに申し訳なかったですね。出口を作ったので、そちらからどうぞ」

「あら、ありがとうございます」

 猪口の作った石の魔法陣の中に入ると綾子の姿は消えた。

 と、猪口は正行、石動、秋水が出てくることを確認する。

「猪口さん、あんた、一体何者なんです?」

 石動の問いに猪口はすぐには答えなかった。

 その代わりに秋水の周りを探り出した。

 そして、見つけた。

 亜空間から取り出す。

 白いかわいい猫みたいな

「耳毛魔人」

 正行が思わず言う。

「失礼な!」

 猫が喋った。

「はっはーん、お前さん『使い魔』だな」

 高く吊り上げられた『使い魔』は声を荒げた。

「君は何者だ!?」

「俺? 君たちを『使い魔』とするなら『魔法使い』だな」

「魔法使い?」

 耳毛魔人と呼ばれた使い魔はしばし猪口を見て諦めたように脱力した。


「僕たちは、自分たちの宇宙を守るために膨大なエネルギーを必要としている。例えば、感情の起伏などがそれだ。特に地球人のは上質で効率がいい。端末である僕たちは常に餌になる人間を探していた。ところが……」

 忌々しく耳毛魔人は秋水を見た。

「こいつが、回線に割り込んできた。そこからさ、僕たちを利用してやれ、魔法少女だ、やれ仲間を連れてこい……しかも、精神が半端なく強くって上層部にまで割り込んだ……そこで、話し合って秋水……さんのやりたい放題な庭を作ったんだ」


 正行には理解できない。

「なんか、複雑なお話で……で、なんで親父は俺たちを呼んだの?」

「飽きたんだよ」

 シンプルだった。

「じゃあ、この庭を壊すことはいいかな?」

 猪口の言葉に耳毛魔人は驚いた。

「僕たちを壊さないの?」

「言ったでしょ? 俺はあくまでも『魔法使い』という一ユーザー。管理者じゃない」

「話の分かる人でよかった」

 これは本音だろう。

「ただし、再起動を掛けろ」

「再起動?」

「つまり、お前が見つかる前に戻すということか?」

 石動も参戦する。

「じゃあ、俺の初めても……」

「綾子にやられたことも……」

 その言葉に平野平親子は顔が輝く。

「なかったことになります」

「わかったよ。今から、この座標の宇宙を再起動かけよう」


 そして、世界は消えた。

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