第三話 私、仕事中でした(綾子)
目の前に現れた全裸の幼女は持っていた日本刀で魔物たちの首を狩る。
呆然とする正行、石動、猪口。
「終わったよぉ」
声はまさに幼女だが周りは血しぶきなどで凄惨だ。
ドン引きの三人を見て、幼女は一瞬にして魔物も自分についた血も昇華してみせた。
「どうよ?」
どや顔をする幼女。
声も姿も幼女。
金髪のツインテールの先はお尻に届きそうだ。
そして、幼女とはいえ、均衡のとれた体型。
顔も童顔で青い目をしてる。
でも格闘スタイルなどは平野平秋水そのもの。
「親父?」
「そうだよ」
正行の問いに幼女は答えた。
「なんでそんなに小さくなったの?」
「お星さまにお願いしたらここに来たの」
可愛いポーズで答える幼女・秋水。
「なんでか、正体が分かると腹立つなぁ」
猪口は呟く。
「お願い?」
「孫の顔が見たい」
!?
「それにさぁ、正行、お前の……」
「わーーー!それ以上言うな‼」
正行が慌てて幼女の口をふさごうとする。
以後、十五分間正行の下半身について息子の攻撃をかわしながら幼女・秋水は語った。
――知りたくなかった
石動と猪口はダークな表情になる。
攻撃してきた正行の腕を幼女・秋水は腕を取り雑木林に向かった。
正行が剥がそうとしても無理だった。
この幼女のどこに、そんな力があるのか分からない。
石動と猪口は正行の悲鳴で闇から脱した。
その場所に行くと苔を
横には肌つやっつやの幼女・秋水がいた。
それで、全て察した。
非難の目に悪びれる様子もなく幼女・秋水が言う。
「別に女の子じゃないから自己申告しない限りいいでしょ?」
「俺の初めてが親父……最悪」
正行は半ば自暴自棄になっていた。
「自分を捨てるな、強く生きろ!」
石動の言葉に正行は言う。
「生きていていい事あるんですか?」
この反問に石動も猪口も視線を逸らした。
ますます、泣く正行。
「俺の初めて返して……」
「倒してから言いなさい……さて、石動君。君もどうだい?」
にっこり笑う幼女・秋水。
「え?」
血の気が引く。
「最近、ご無沙汰なんだろ? 少しは体に正直にならなくっちゃ……」
そこから始まる幼女・秋水と石動の追いかけっこ。
幼女・秋水は楽しんでいるが石動は必死だ。
と、間に影が割って入った。
「あなた、何しているの?」
その言葉と声に今度は秋水は凍えた。
代わりに冷や汗が流れる。
秋水の前妻、長谷川綾子がいた。
仕事中だったのかスーツだ。
「いや、あの女ごころを理解するためにですね……」
声もカチコチだ。
「じゃあ、こっちに来なさい」
半ば強引に引っ張られる二人。
「頑張って」
幼女・秋水の背を猪口が押した。
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