第3話 1ーBの怪異


「あ~クソッ! 一睡もできなかったぜ」


 かけるは体調不良でも学校を休まないヤンキー。昨日はつむぎに取り憑く悪霊に恐怖して逃げ帰り、布団の中で震えていたのだが、両親が心配していたから学校を休むとよけい心配すると思って無理して出て来たのだ。


「てか、これが幽霊?」


 今日も今日とてボールが近付いて来たので、翔はしゃがみこんでよく見てみる。


「バレーボールにしか見えないけど。ひょっとしてこれも、本当はあんなにおぞましい姿なのか?」


 どこからどう見てもバレーボールでは、翔には紬の後ろにいた悪霊と同じ物だとは思えない。


「もう一度パイセンに会うしかないか。でも……」


 一人で悩んでいても解決しないので紬に聞きたい翔であったが、おばけが苦手では近付きにくい。

 その悩みを抱えて学校に着いたら、他の生徒が翔を避ける避ける。どうも翔の寝不足の顔が、いつもより迫力があるから怖いみたいだ。


 そうとは気付かず翔は真面目に授業を受け、クラスメートからしたら長い長い四時間が過ぎ、ようやくお昼の時間になった頃、ざわめきが起こった。


「なに怖い顔してるのかな~?」


 紬が教室に入って来て、ボーッとしていた翔の顔を両手でムギュッと挟んだからだ。


「パイセン…と……うっきゃああぁぁ!」


 紬が現れたという事は、悪霊もセット。おばけ嫌いな翔は悪霊を見た瞬間、悲鳴をあげて走り出した。


「ちょっ! 待ってよ~!!」


 逃げるヤンキー。追う美女。この日1年B組は、翔を倒した謎の美女の話で持ち切りになるのであった。



「はぁはぁ。もう逃げ場はないわよ」


 屋上まで追い詰めた紬は息も絶え絶え翔に迫る。そして、昨日の話の続きを……


「あの扉、開いてたの? 壊したんじゃない??」


 その前に、翔が蹴り破った扉の心配。しかし翔はプルプル震えていて答えてくれない。


「まぁ少なからず私のせいでもあるから、あとで一緒に謝りに行こう。ね?」


 紬は優しく語り掛けて翔を落ち着かせようと頑張り、なんとか聞く体勢を確保したら切り出す。


「本当は君に、こいつを除霊して欲しかったんだけどね。そんなに怖がってるんじゃ無理か。諦めるよ。でも、同じ悩みを持つ仲間なんだから少しぐらい話を聞いてほしいな~」


 紬が物悲しそうにそんなことを言うので、翔は話だけならと聞いてしまうのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る