第九話 元奴隷(3)

 僕は1人走って帰っていた。

 いつもならこの道をレイと2人で帰っていた。

 だけどもう、1人。

 涙を流しながら、この道を走った。

 周りの人は『どうしたんだ?』という顔で見ている。

 僕はそんな人たちをこして、こして、こして、走った。

 レイはもう友達じゃないんだ。

 

 人があまりいない通りまで走ってきた。

 

 僕はしゃがみ、下の硬い石で出来てる道をおもいっきし殴った。

 この道がわるいわけじゃない。

 でも、何故かその道を殴り続けた。


『くそっ。くそっ。』


 怒ってるのか?

 そうじゃない。

 不機嫌なだけか?

 そうじゃない。

 僕は自問自答を繰り返してた。


 何分くらいだろう。

 10分くらいだろうか。

 殴り続けていた。


 手からは血が出てきた。

 空は暗い。

 でも、何故か血がはっきりと見える。

 痛くはない。

 痛みが感じない。


 何も感じない。

 

『家に帰ろう。』


 僕はそのまま家に帰った。


『ただい、ま。』


 涙を流しながら家に入った。

 ドアの前にはニーンがいた。


『何故こんなに帰ってくるのが遅い。』


 僕は大声で怒鳴られた。

 同情なんてしてもらえるはずがない。

 涙を流していても、気づきもせず、いつものように怒鳴ってくる。


 痛っ。

 僕は蹴られた。

 ドアの前に当たった。


『すい、すいません。今入ります。』


 僕は家に入った。


 もう、誰も助けてくれる人はいない。


 そう思い、一日を過ごした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〈都市デドロイド〉

 私(ベリー=マナセイト)は今、マルセイユから遠く離れたデトロイドという街にいる。


 デトロイドは、『都市デトロイド』や『デトロイド王国』と呼ばれているが、私は、『デトロイド』と言わさせてもらっている。

 

 デトロイドはマルセイユと違い、街の中心に城があるのではなく、端っこに城がある。

 そして、その城の後ろには海がある。

 その城を点とし、大きな扇形に広がってる街である。


 私がこのデトロイドに来た理由は2つある。


 1つ目が、『ロード=チャートリー』というものに会うことだ。

 これまでの魔王討伐軍に入っていなかった人が急に討伐軍なんかに選ばれたから、どんなやつか見てみたかったのだ。


 2つ目は、デトロイドの軍の動きを見ることだ。

 今回の魔王討伐軍に、マルセイユの騎士が2人(私とクール)選ばれている。

 いつもなら普通のことだが、今回はそれぞれの街から1人ずつなのにも関わらず、マルセイユだけ2人。

 さらに今回の討伐軍を決めたのはデトロイド。

 だから、デトロイドが少し怪しく見えてしまった。


 私はまず、城の方へと向かった。

 向かう途中、いろいろな道を通ったが人が少なかった。

 何故だろう。

 そう思いつつも、城へ着いた。

 

『お前はだれだ。』


 城の前にいる門番に言われた。

 私は


『ベリー=マナセイトだ。ここを通せ。』


 といい、門を開けさせた。

 

 城の中へ入り、デトロイドの国王にあった。

 

『えっと、こんにちは。誰でしたっけ?』


 私はデトロイドの王の名前を完全にど忘れしていた。


『『ロキドア=デトロイド』だ。ベリー=マナセイト。君は魔王討伐軍に選んだはずだがこんなとこにいていいのかね?』

『はい。私はロード=チャートリー』という人物に会いに来ました。』

『そうか。ロードはあっちにいるぞ』


 そういうと、ロキドア?王?があるドアを指さした。

 まぁいってみるか。

 私はそっちの方に向かった。

 ドアを開けた。

 すると、長い道があった。

 そこを歩きでかい門があった。

 その門を開けた。


『なんだ!?』


 私はドアのところまで吹き飛ばされた。


『いってーなー。』


 私はそう言い門の方へと歩いた。

 そして、門の奥を覗くと、1人の女がなにかを言いながら、あぐらをかいていた。

 なんかの修行か?

 そう思った。


 すると、その女が目開けた。


『だれだ、お前?』


 その言葉聞いた途端、震えがした。

 私は感じた。

 私の第六感が感じたのだ。


 こいつは最強だ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 レイと別れてから1ヶ月が過ぎた。

 僕はいつも通り、ニーンのゆうことをきき仕事をしている。

 最近は外に出れていない。

 家の中で色々やらされている。

 お母さんは、エッチなことまでさせられている。

 ある時、ニーンが僕に言ってきた。


『お前、港街道にある1番高い肉をとってこい。』


 盗み。

 僕が?

 できるわけがないだろ。

 そう言いたかった。

 でも、いうことを聞かないとお母さんが。

 そう思うと勝手に手と口が動いた。

 

『わ、わかりました。』

『だ、だめよレオ!』

『うるせぇ。』


 お母さんは蹴られた。

 僕を止めようとして。

 でも僕は外に出た。


 久しぶりの外だ。

 晴々しい。

 そんなことを思わない。

 

 そして、僕は港街道まで行き1番高い肉を探した。

 7分くらい歩いたところに高級そうな肉屋があった。

 これを盗めばいいのか?

 僕はその肉屋の1番高い肉に近づいた。

 そして、周りを見た。

 誰も僕を見ていない。

 そう思い、手で肉を触ろうとした。


『あれ、レオン?どうしたんだ?』


 クルスさんがいた。

 それと、クルスさんの後ろに何人か強そうな人達がいた。

 僕は思わず手を後ろにしまった。

 あれ?なんでクルスさんが?

 1ヶ月か。

 1ヶ月たったのか。


『いや、こ、この肉いいなーって思って。』

『そうか。じゃあ買ってやるよ。』

『えぇー!?!?』


 思わず対応に僕は一瞬戸惑った。

 戸惑ってる間にクルスさんは肉を買ってきた。


『あ、ありがとうございます。』

『あーうん。それより、明日から特訓するけどくるか?』


 僕は考えた。


『いや、やめときます。』


 これが僕の答えだ。


『なんだ、そうか。理由があるのか?』

『え、いや、。』

『理由は言えないのか。まぁしょうがないか。じゃあ俺たちはもう帰るからじゃあな。』


 そういうとクルスさんたちはどっかに歩いていった。

 何歩か歩いたところで何故かクルスさんはこっちを見た。


『一つ言い忘れてたことがある。』

『えっあ、なんですか?』

『前の特訓の時言うの忘れた言葉なんだが、戦う時はいつも1人だぞ、って言葉なんだ。まぁ説明すると、チームで戦ってても、1人1人が戦ってこそ、チームで戦うってことなんだ。まぁそれだけだ。じゃあな。』


 僕は『戦う時はいつも1人』と言う言葉が胸に響いた。

 僕は決めた。


『クルスさん。僕1ヶ月後に強くなって、クルスさんのとこに行きます。また修行してください。』


 大声でいった。

 歩いてる人たちはこっちを向いた。


『そうか。強くなってくるのか。楽しみにして待ってるぞ。』


 そして、クルスさんは帰っていった。


 肉をもち、家に帰る途中僕は思った。

 僕は1人で今まで戦ってこなかった。

 ただただ、願っていただけ。

 怖くて、動こうとしなかった。

 だから奴隷だった。

 でも、さっきのクルスさんの言葉を聞いて僕はやっとわかった。

 自分で戦う。

 1人で戦う。

 1ヶ月以内にニーンを倒す。


『戦う時はいつも1人だ』


 そう僕は言い、1人、家に帰るのだった。


 

 


 

 

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元奴隷は成り上がる @Takahashi0404

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