夏休み 英語の宿題と妄想のような会話

「うへぇ・・・」


なんという暑さなのだろう。

去年もここまでは暑くなかったし、こんなに記憶に残る夏をすごしていたつもりもない。


後ろへ倒れこむと、フカフカの羽根布団が私を迎えてくれた。

ヒンヤリとしたそれは、肌の熱が移ってすぐに暑苦しくなってしまう。

そうするとまた、起き上がって宿題だ。


英語の宿題は何だか、気取ったルールだった。

カッコの中に並べられている単語を並び替え、英語の全文を書くというもの。

ワークについてくる小冊子のコピーをホッチキスでとめたもので、ルールは簡単。

正解なら丸をつけてよし、間違ったら消しゴムで消して正解するまで繰り返す。


間違えることなどほとんどなかったが、時々、解説や図解を加えた。

こうすれば、「やる気がある」だろう。


今年の英語の先生は・・・何というか、若い人。教師一年目の、女の人だった。


カスラギ ウエナ先生。


私はこの時、もうすでに判断を下していたのかもしれない・・・この先生は、ダメだ、と。




コノちゃんのこともいろいろ知った。

コノちゃんには、とても大事にしている姉がいて、四人家族なのだそうだ。

私の話も聞いてくれた。


私は楽しかったことや楽しみなことや、怒りや後悔を、コノちゃんにありったけ話し――と、いっても交換日記のような会話だが――た。


いつも、私の心をわかってくれた。


――うんうん、私も似たようなことがあったわ。そういうときは・・・、


アドヴァイスをくれて。


――よかったじゃない!私もとっても嬉しいわ!


一緒に喜んでくれて。



部活と自主練以外に他人クラスメイトと会うことのない夏休み、孤独な私と一緒にいてくれた。


毎日起きて宿題——面倒くさくてしない日もあった――とテスト勉強、土曜と日曜は部活に自主練。

自主練から帰るとき、空は青暗く私を見つめ、草は私が通るたびにサワサワとゆれる。

――ああ、なんと無慈悲な日なのだろう。


灰色の草のそばを通りながら一人、そう思う。



そんな日々が、続く。


やがてコノちゃんこと祖父からもらった日記は、私の生活から退くことの許されない存在となっていく——私自身も気づかぬうちに。



そうして夏休みの終わりは、近づいてくる。

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