第30話 銀色の粒

 銀色の2ミリくらいの粒というと何を思い出しますか? 仁丹? 宇津救命丸? ひやきおーがん?


 西日本の方はひやきおーがんという名前を聞いただけで、CMソングが浮かびます。東の方すみません。


 ひやきおーがん。赤ちゃんの夜泣きかんむしのお薬で、銀色の小っちゃい粒です。弟が生まれた時、うちにありました。CMがよく流れていたので、とっても有名。宇津救命がんも同じようなお薬です。


 ひやきおーがんとは何か、意識したことがなかったのですが、調べてみました。樋屋製薬の奇応丸という生薬でできたお薬です。漢字に納得。


 樋屋奇応丸はジャコウ、ゴオウ、ジンコウ、ユウタン、ニンジン。


 宇津救命丸はジャコウ、ゴオウ、レイヨウカク、ギュウタン、ニンジン、オウレン、カンゾウ、チョウジ。


 成分を見ると同じ生薬が含まれていますね。


 さて、このひやきおーがん、なんと750年ごろ、遣唐使船で鑑真和上が伝えたのがルーツで、江戸時代から五疳薬(弱った臓器の働きを高める)として、飲まれているお薬なのだそうです。一方、宇津救命丸は旅の僧侶から伝授されて作られ、400年以上にわたって家庭の常備薬として愛用されてきたとあります。どちらも歴史が古いです。そして、どちらも今でも売っているのです。


 どんな時にこのお薬を使うのか公式ページを調べると、「夜泣き、ギャン泣き……」え? ギャン泣き? 昔は「かんむし」でしたよね?


「かんむし」とは、「乳幼児が理由もなく強くぐずったり、キーキー泣いたり、夜泣きすることで、最近ではギャン泣きと言われる状態のこと」だそうです。虫がいるわけではありません。今のお母さんたちに響くように「ギャン泣き」という言葉を使っているところが薬の古いイメージとは逆に新しいなと思いました。


 さて、この粒、独特のにおいがしたような? におうのは仁丹だったのでしょうか? 仁丹は口臭を気にするおじさんが持っているイメージで、独特のにおいがあった気がします。気分不快、口臭、二日酔い、宿酔、胸つかえ、悪心嘔吐、溜飲、めまい、暑気あたり、乗り物酔いに効果があるそうで、見事に大人の症状ばかりです。成分はカンゾウ、チョウジなど、共通のものもありますが別物です。今でいうタブレットのように口にするものだったのでしょうか。それにしても、このような効き目があるとは知りませんでした。


 ところで、梅仁丹というものがありましたよね? 製造中止になってしまったのは売り上げが振るわなかったからのようですが、名前を聞いただけで、何んとも懐かしく、じわじわ来ました。味の記憶とともに唾液が出てきます。


 仁丹のマークの叔父さんはいったい誰? と思いませんか? 大礼服を着たこのおじさん、実は軍人ではなく、外交官なのだそうです。仁丹を世界中の人々の健康に役立てたいという願いを持ち、外交官の姿を重ね合わせこのマークができたそう。なるほど~。


 今回は昭和のお薬と思って調べたら、実は江戸時代から現代までずっと売られている、生薬でできたお薬だったというお話でした。

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