第24話 人形劇

「人形劇」と聞いて皆さんは何を思い出すでしょうか? サンダーバード? NHK? 親子劇場? 私はNHKで放送された数々の人形劇を思い出します。


 教育テレビで午前中にやっていた人形劇も楽しみだったのですが、午後6時30分から放送されていた人形劇が特に記憶に残っています。


 私が子供のころは、5時から6時半までは民放で子供番組をやっていました。その時間に何を見ていたのか、ぜんぜん思い出せないのですが、6時からは「トムとジェリー」でした。(これは全国的なものか知りたいのですが、私が幼児のころから小学生になっても、よく覚えていないけれど、もしかしたら中学生になってもずっとずっと繰り返しやっていました。何回見たか数えきれないほどです)


 「トムとジェリー」が終わって6時半になると、民放はニュースになるので、退屈な子供たちを救ってくれたのがNHKの人形劇でした。


「チロリン村とクルミの木」「ひょっこりひょうたん島」などが放送された時間帯ですが、私の記憶に登場するのは、その次の「ネコジャラ市の11 人」からで、私の城下町時代のことです。


 そこからしばらくは見ていなかったようで、小学生になってから「新八犬伝」を見ていました。あまり意味がわからなかったのですが、ただ、人形というだけでニュースを見るよりマシだったので、着物の美しさを楽しんでいた感じです。お顔がちりめんでできていて、ブツブツしているのが気持ち悪いと思っていました。


 しかしながら、今振り返ると何と贅沢なお人形だったのでしょう! 辻村寿三郎さんの芸術的なお人形だったんですね。今、ネットで調べてみると話題になっているのは怨霊玉梓で、辻村ジュサブローさんご本人の操作で圧巻だったようです。


 これらの人形劇の中で私が一番好きだったのは1979年4月から1982年3月まで放送された「プリンプリン物語」です。私は中学生でしたが、ハマっていました。小説を書くようになった今、わかるようになりましたが、どのキャラも個性的で魅力的です。


 主人公のプリンプリンの声は石川ひとみさんで、まだ見ぬ故郷を探していろんな国を旅するのですが、そのうちの一つ、南の国、オサラムームーの国歌は笑えます。何にもしないことを推奨しているのが、当時の私には衝撃でした。そんなことを堂々と国歌として歌っていいの? しかもきっちり二部合唱で。大真面目過ぎて笑えました。


 もっと衝撃的で面白かったのは、軍事国家アクタ共和国。当時、多くの小学生が、アクタ共和国の国歌を歌っていました。軍事国家ならではの理不尽さと、知能指数1300のルチ将軍の強烈なキャラがたまりませんでした。当時のイケメン専門のはずの声優、神谷明さんが変な声で担当したルチ将軍のセリフ「1300〜!」は、子供たちの流行語でした。


 プリンプリンをお嫁さんにしたい死の商人、怪人ランカーの秘書、ヘドロが歌う「世界お金持ちクラブの歌」は、お金さえあれば何でも手に入ることを強調した歌詞で、子供番組で歌うのは衝撃です。私がキャビアとフォアグラという高級食材を知ったのはこの歌でした。


 先日カラオケアプリを見ていたら、なんとこの3曲、ありました! それだけ流行していたということですよね。


 NHKの人形劇は他にもいろいろありましたが、この素晴らしい人形劇の技術を生かした番組が平成になって放送されていたのをご存じでしょうか。「ねほりんぱほりん」(ネットで検索したら内容がヤバいのが分かります)という番組で、ブタさんたち(声は一般の方です)は顔出しでは絶対言えないタブー(ご本人の経験)を語るのに、人形劇になっているのでめちゃめちゃかわいいんです。再現フィルム(例えば、麻薬を使うとどんな風に感じるかなど)のところもとってもかわいくて、本当に人形劇はNHKの宝だと思いました。


 さて、冒頭にちらりと出した「サンダーバード」ですが、マリオネットだったので、独特の動きでしたね。ペネロープという女性の声が黒柳徹子さんだと知ったのは最近のことです。


 基地の仕掛けがかっこよかったです。パーカーがザ・ワイルドワンズの鳥塚しげきさんに似ているなあと思っていたら、確かとんねるずの番組でサンダーバードの実写(YouTubeにありました)をやった時にキャスティングされていたので、笑っちゃいました。みんなそう思っていたのですね。飾ってある絵(写真?)のところに画像が映って通信するというのも、当時としてはとてもかっこよかったけれど、今は当たり前になっています。


 私が仕事(話し方講師&ボイストレーニング講師)で、発声の基礎を教えていた時、体の力を抜いてもらうために


「サンダーバードみたいに頭のてっぺんを糸でつるされているイメージ」


 と言うと、若い子には全く伝わりませんでした。知らないんです。逆に50代以上にはツーカーでした。 


 今はCGが発達して、とてもリアルに何でも描けるし動きも滑らかだけれど、私はやっぱり昭和のころの人形劇が温かくて大好きです。ちょっとぎこちない感じや、手作り感があるほうが味がありますよね。「機関車トーマス」もCGに押され気味ですが、実写の方が断然いいと思います。手作りの人形劇や実写がなくなってしまわないように、別々の文化として残ってほしいものです。


***


近況ノート「はなドン第24話人形劇」でエモエモな画像を公開します。お楽しみに。

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