第15話 お便所
先日、ランチに行った古民家のお店のトイレが、なんとポットントイレでした。懐かしいタイル張りに、和式便器の汲み取り式トイレです。落とし紙(トイレットペーパーの役目をする四角い紙)はなぜか菊の御紋がついた黒い蓋つきの箱に入っていました。
今はポットントイレと呼ばれていますが、昔は「トイレ」とは呼んでいなくて「お便所」と呼んでいたと思います。
我が家の落とし紙は四角いカゴに入っていました。材質は竹だったような気もしますが、よく思い出せません。
幼稚園の頃住んでいたアパートのトイレは2階から一階までウォータースライダーのようにのびていて、蓋は和式便器がすっぽり隠れるプラスチック製。父の実家に帰ってからは、戦前の家なので板張りの床で蓋も手作り感のある木製でした。木製の薄っぺらい扉の鍵は四角い木で横にスライドさせるだけのアレです。
そして、用を足す時に目の前にぶらさがっていたのは、臭い消しの蛍光カラーの丸いボール。鼻をつくような香りのアレです。名前を調べたらウィキペディアには「トイレボール」となっていました。パラジクロロベンゼンが原材料らしいです。タンスの中で強烈なにおいを放っていた防虫剤と一緒なんです。
ポットントイレの臭いといえば、鼻と目をつくようなツンとした臭いですが、小学校の理科の授業でリトマス試験紙の実験をした時に、先生が、トイレの臭いでも色が変わるとおっしゃったのです。私はどうやって持って帰ったのか覚えていないのですが、(先生が持って帰らせてくれたような気がします)リトマス試験紙を自宅に持って帰り、水で濡らしてトイレに入りました。
瞬殺です! 一瞬で色が変わりました。
何色だったかは覚えていなかったので調べてみると、トイレの臭気はアンモニアなので、きっと赤が青に変わったのでしょう。
我が家の「お便所」にあったかどうかは覚えていないのですが、昭和の住宅の外には一軒一軒細い煙突がありました。それは、トイレの「便槽」から臭いを排出する換気扇がてっぺんについているものだと、この度初めて知りました。そういえばそんな感じの物をよく目にしたと、ジワジワきました。この煙突の換気扇、「臭突」という名前だそうです。
トイレボール、臭突、汲み取り式トイレ蓋、落とし紙はどれも、ネットで調べたら販売されています。まだ需要があるのです。ただし、汲み取り式トイレ蓋は洋式トイレをすっぽりかぶせる形に進化していました。和式トイレ蓋で調べると懐かしい感じの形のものもまだ存在しています。
さて、落とし紙、商品名にも「ちり紙」とあり、私は「ちりし」と呼んでいました。これは方言かもしれません。そして、ちり紙とは別に花紙(鼻紙)というのがあって小学校にハンカチと花紙(ちりし)を持っていかなくてはならなかったことを思い出しました。花紙はポケットの中でぐしゃぐしゃになります。花紙を調べたら、現在は運動会の飾りにするようなお花を作る紙として売られていました。そういえばお花をよく作りました。いつもは鼻をかむための紙なのに、折ってまとめて真ん中をゴムで止めてわしゃわしゃっとしたら、豪華なお花になるので、見事な変身っぷりです。
和式便器に話を戻しますが、幼稚園の頃、アパートのトイレは一段高いところに和式トイレを設置した、男性も使えるようになっているものでした。そこに、「私の城下町」の3人組で一緒に入って、同時に用を足したことがあります。先生役の子が指示して、その子が普通に前向き、確か私がその後ろ、もう一人の子が後ろ向きで洋式トイレ風に座るのです。親たちはどうやってやるのか不思議がっていましたが、特に問題もなくできましたし、とても楽しかったのを覚えています。
今の子は和式トイレを使ったことがなくて、小学校で初めて遭遇する子が多いようですね。ポットントイレなど、恐怖でしかないのではないかと思います。
臭いも、形も、機能も、水洗トイレは快適ですが、久しぶりに見たポットントイレは郷愁を誘い、ワクワクしてしまいました。
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近況ノートに関連写真をアップしましたので、ご覧ください。
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