第10話 睡眠学習枕

 第9話、「日ペンの美子ちゃん」を書いていて、昭和の漫画雑誌の裏表紙には、日ペンの美子ちゃん意外に、通販のカタログがあったことを思い出しました。clipmacさんからも応援メッセージでトンファーやサンドバッグ、セッチマ、天体望遠鏡などの通販があったとお寄せいただきました。そういえば手錠や武器のような、微妙に子供心をくすぐるものがこまごまと載っていて、なんとなく怪しいけど、見るには退屈しない商品ばかりでしたね。雑誌の後ろの方の数ページにはいろんな広告があった気がします。


 そんな通販商品の中でも、私が特に怪しいと思ったものが「睡眠学習枕」です。私は忘れていましたが、中一コースなどに広告が出ていたようです。枕にダイヤルがついていて、私には某宗教団体のヘッドギア(当時はまだ見たことない)を見た時のような怖い印象でした。体に害はないのかしら?


 この商品のすごいところは寝ているだけで、記憶ができるということ。体験した人のお話が出ていて、ホンマかいなと思っていました。そして、売れるんかい!と……。


 しかしながら、この商品、買った人がいるんですね。ネットを開くと、買ってしまった黒歴史やそのほか、いろいろ語られています。どうやらこの枕、録音機能とタイマーがあって、枕にスピーカーが内蔵されているようです。自分で覚えたいことを吹き込むと、眠りはじめと起きる前にテープが流れる仕組みになっています。


 さて、この商品のお値段ですが、当時の価格で38000円! 今子供に買えと言われてもちょっと引いてしまうお値段です。1979年の公務員の大卒初任給が97500円であったことを考えると、お高いにもほどがあることが分かります。皆様よく買ってもらえたものです。


 そんなお一人が「ちびまるこちゃん」の作者、さくらももこ先生で、エッセイ「もものかんづめ」に書いていらっしゃいました。商品の使い方の説明に、まず覚えたいことを100回書いてテープに録音しろと書いてあったとか。それって……(笑)。


 初めて使うとき、父ヒロシが試しに加トちゃんのギャグ「うんこちんちん」と言って録音したそうです。初録音が「うんこちんちん」だなんて、かわいそうな枕(笑)。こうして使い始めたのですが、夜中に鳴る声が不気味だと家族に不評で使わなくなってしまったそうです。


 この枕を買った人は何を残念と思うのかな。お金を無駄に使ったこと? それとも寝たまま楽に学習できるという夢が吹き飛んでしまったこと? それともまんまと手間暇かけて勉強させられてしまったこと?


 昭和って、のどかな時代だったのだなと思います。




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