第13話 初モンスター

 宿では前みたいなトラブルは起こらなかった。

 チンピラ冒険者も馬鹿じゃない。

 命が掛かっているともなれば情報は集める。


 平和なのは良い事だ。


「おはよう」


 ロバート達がやって来た。


「ああ、おはよう」

「見て見て、ボタンと糸で魔道具を作ったのよ」


 クラウが鎧を脱いで服を見せる。

 俺には光って見えないので普通の服に見える。


「普通だな」

「そんな訳ないでしょ。ドラゴンの一撃にも耐えるのよ。それにこの光。魔力が溢れる一品だわ」

「ちっとも分らん」

「これだから、魔力過多の奴は」


「クラウ、早く鎧を着けろ。出発するぞ」

「リーダー、ちょっと待ってよ」


 レオンの盾とニッキのポーションは間に合わなかったみたいだ。

 羨ましそうにクラウを見てる。

 まあ、ゆっくり作るがいいさ。


 二度目、行き帰りだと四度目の森はいつもと変わりない様に思えた。

 道もあるし、楽なものだ。


「しっ、静かに」


 ロバートが警告を発した。

 何かいるのか?

 盗賊とかじゃないだろうな。

 グロいのは勘弁してほしい。


 のっそりと体高が2メートルほどの狼が出て来た。

 体長は4メートルはあるだろうか。


「クラモト、光を抑える魔道具を外せ」


 俺は指輪を外した。

 狼はたじろいだが、逃げる素振りは見せない。


「私達を餌認定しているわ」

「そうだな。クラモトには襲い掛からないと思うが注意しろ」


 レオンが前に出て盾を構える。

 その後ろにはロバートとクラウが武器を構えた。

 俺がその後ろに居て最後尾はニッキだ。


「来るぞ」


 狼が突進してレオンの盾に当たる。

 ロバートが斧を振るい。

 クラウが槍を突き刺す。

 斧は弾かれた。

 クラウの突きも刺さらない。


 狼が暴れレオンが吹っ飛ばされた。


「俺が剣を抜いた方が良いのかな」

「駄目よ。何もしないで。私達の連携が崩れる」


 そうニッキに、たしなめられた。

 戦況はロバートが斧を盾にして狼を防いでる。

 クラウは狼の目を狙っているようだ。

 目の動きに合わせて槍先が動く。


 レオンがニッキに治療を受け復帰。

 レオンが防御を再び受け持つ事になった。


 レオンが盾で噛みついてくる狼を阻止。

 そして何かを狼の口の中に入れた。

 倒れる狼。


「あーあ、損した。魔水をポーション1000本分ぐらい使ってしまったわ。大損だわ」

「安全を取るのは正しい選択だ」

「ねぇ、クラモト。モンスターを退けたのだから、追加でもう一本魔水をちょうだいよ」


「ニッキ、今回のは俺達のミスだ。森に入る前に魔道具を外すように言わないといけなかったんだ」

「でも」


「クラモト、ニッキに魔水をやるなよ。癖になるといけない」

「ああ、分かった。それにしてもモンスターは大きいんだな」

「これはまだ小さい方だ」

「こんなのが居るんじゃ。森を歩くのは大変だな」

「そうだなCランク以上はないとな」


 モンスターの死骸を収納の魔道具に入れて、先を急いだ。

 俺が魔道具を外したせいだろう。

 それからはモンスターは現れなかった。


 ふう、やっと帰れた。

 現在、事務所として使っている家に行き商品を机の上に出した。


澄子すみこさん、新しい商品を仕入れたからホームページの更新をお願い」

「はい、社長。値段はどれぐらいにしますか」

「木の細工は1万円から3万円。人形は千円。焼き物が難しいな」

「そうですね。5百円てところで、どうです?」

「安いな」

「主婦の感覚だと500円以上は出せません」

「よし、それで頼む」


 ネットショップで木の細工、人形、焼き物を売る。


「かぁ、一日で一つも売れないとは」


 結果はまさかの全敗。


「ありふれた品ですから」

「特色が無いんだな。商品のセールスポイントがないのか」

「そうですね」


 焼き物は期待してたんだけどな。

 産地名が無いのが問題らしい。

 備前焼きとか産地の名前が入らないのは、100円ショップで売っているのと同じようなものだ。


 何日か経ち、結局のところ土産物は一日の食事代ぐらいにしかならなかった。

 ちょぼちょぼとは売れ始めたから別に構わないのだが、異世界特有の何かがないかな。


 でも、地球に無い金属を持ち込んだら、大騒ぎだ。

 商材は地道に探すしかない。


 抵当権の解消は出来ないが、遺産相続は終わった。

 抵当権の解消はもう少し時間が掛かるらしい。

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