第12話 土産物

 何がなくても金策だ。

 異世界では十分に金持ちになったので、今度は地球側だ。

 異世界の物で地球に持って来たら高く売れる物。

 何があるかな。

 そうだ、美術品が良いな。

 だが、物凄く高いのは駄目だ。

 無名の美術品がいきなり現れたら、同じ作者の物を探し始めるに違いない。

 異世界にしか存在しないとなると色々と辻褄が合わなくなってくる。


 土産物程度で良い。

 俺は適度な商材を探しに、異世界に行った。

 魔欠脇の冒険者ギルドの出張所でロバートとばったり出会った。


「クラモト、じゃないか」

「ロバート、俺を待ってたかの様に現れたな」

「魔穴までの輸送依頼は今の所、良い稼ぎになるんでな」

「また護衛依頼を頼みたい」


「オッケーだ。街まで帰るつもりだからな」


 ロバート達と一緒に街に戻る。

 魔道具屋で光らなくても済む魔道具を受け取った。

 魔道具は指輪型だった。

 さっそく指に嵌める。


「どうだ。光ってないか?」

「平凡な顔つきだったんだな。肌の色が少し違う以外は普通だな」

「私は好きだな」

「クラウ、誘惑するなら辞めておけ。キスをしたら、たぶんお陀仏になるぞ」


 ああ、唾液が猛毒になるのか。

 キスをする予定はないが気を付けよう。


「ちぇ。でも、命を張る見返りはあると思う」

「そういう事はクラモトの居ない所で言うんだな」

「また、別の作戦を考える」


 考えなくても良いから。


「そうだ。サンプルにボタンと糸を持って来た」

「ただでくれるの?」

「金貨5枚だよ」

「いよ、お大臣、太っ腹」


「いいのか。もっと高く売れるぞ」


 とロバート。


「魔道具に仕立てて使ってみてくれ」


「私は安い魔水がほしいな」

「俺は安い魔木」


 ニッキとレオンがまくし立てる。


「実は魔木は持ってきたんだ。それとロバートへは空のペットボトルと空のガラス瓶。どれも金貨5枚で良いよ」


 俺はホームセンターで買った杉の板とペットボトルとガラス瓶を出した。

 ロバートはそれらを収納の魔道具にしまおうとした。

 レオンが板に頬ずりをする。


「うひょう。この輝きはSランクの魔木だぜ。これで盾を作ったらドラゴンの尻尾も受け止められそうだ」

「レオン、落ち着け。安く譲ってもらって悪いな」


「ええっ、魔水はないの。私だけ仲間外れ」

「水のサンプルはないな。水はどれでもそんなに違わないだろ。いや、軟水と硬水は違うのか。今度、色々な水を持ってくる。今は前に持って来たミネラルウォーターで勘弁してくれ」

「やった。金貨100枚がたったの金貨5枚」

「今回だけだからな」


「聞くのを控えていたが、魔穴の向こうって人が沢山住んでいるのか?」

「そうだな。数えきれないほど、沢山いるな」

「侵略してこないのは、何でだ?」

「色々と理由があるけど、俺の国は戦争を嫌っているからかな」

「なるほどね。お前をいう事を信じるよ」


「今日は土産物屋に行きたい」

「よし、こっちだ」


 土産物屋に入る。

 保存食から木の細工物、そして人形などが所狭しと棚に並べられている。


 地球で売るとしたら何がいいだろう。

 木の細工物はいいな。

 だが、地球の物と競合する。

 値段では勝てるが、数は売れなさそうだな。

 サンプルとしていくつか仕入れておこう。


 保存食は駄目だ。

 食品の販売は法律とかがうるさい。

 手続きが面倒だ。


 焼き物が目に入った。

 陶器らしいが、数を沢山注文しても平気だろうし、良い商材じゃないだろうか。


「焼き物をありったけほしい」

「沢山買って貰えるのは嬉しいが、店の在庫がなくなるのも困る。ちょっと待ってくれ」


 そう言うと店員は子供を使いに出した。

 待つ間、人形を見る。

 木と布で作られた素朴な人形だ。


「何? 小さな子供でも居るの?」


 とクラウ。


「子供は居ないけど。お土産にどうかと思って」


 転売するとまだ話していないが、言った方がいいのかな。

 まだ、止めておこう。


「お金持ちなんだから、宝石でも買ったら」

「子供に贅沢を覚えさせたら碌な事がないぞ」

「それはそうね」


 この人形は売れるかな。

 分からん。

 意外に食いつくかも知れないし、サンプルに幾つか仕入れておこう。


 子供が帰ってきた。

 どうやら焼き物を仕入れに行ったらしい。


「100個なら大丈夫だ」

「分かった。全部もらおう」


 さて、一泊して帰るとするか。

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