第11話 ネットショップ

 地球に帰ってきた。

 帰るまでの道程に特筆すべき事はない。

 さあ忙しくなるぞ。


 古着を分別してネットオークションに掛ける。

 アクセサリー、武器、防具も同じくネットオークションに掛けた。


 値段の上がるのをみていたが、なかなか思ったように上がらない。

 失敗だな。

 手間賃が出ると良いぐらいのレベルになりそうだな。


 分かったのは武器の人気が高いという事。

 古着は振るわない。

 アクセサリーはそこそこ。

 総額で100万を超えるほど儲かったが、何だかなぁという感じ。


 武器を何百と仕入れたら、たぶん売れないだろう。

 在庫が山ほど出来ると思う。

 上手くはいかないな。


 宝石は危険な香りがする。

 異世界で買って地球で売るのは誰が考えても碌な事にならない。


 ポーションは薬事法があるから駄目だな。

 食品の輸入も色々とうるさそうだ。


 しばらく古着、アクセサリー、武器、防具でやって行くか。

 ネットオークションだけでなく、ネットショップも立ち上げる事にする。

 今は金を払えば何にもしなくてもネットショップの立ち上げは出来る。

 利幅は少なくなるけども手間が掛からない。


 注文された商品の配送も業者に任せられる。

 これで利益を得るのは大変だが、元手がほとんど無料だからな。


 店の名前はアナザーワールド貿易にした。

 ネットオークションに店の宣伝をしたので固定客もぼちぼちと付いた。


澄子すみこさん、この商品の写真撮っておいて」


 澄子すみこさんはパートの中年の女性だ。


「はい社長。ところで、商品の売り上げが下がる一方ですけど、いつまで雇って貰えるんでしょうか」

「そうなんだよな。武器が主力商品なんだけど、ぽつぽつとしか売れない。次の商品を考えないと」


 地球側で商売以外にトラブルが発生した。


「色々とお世話になってます」

「今回お越し頂いたのは、ご依頼の遺産相続の件です」


 次元の裂け目のあるこの土地と家屋を相続したと言ったが実はまだだ。

 親戚の同意が得られたという訳で、登記や遺産相続なんかの処理は、司法書士に任せていた。


「何です?」

「ご依頼の土地と建物が二つの番地なのは知ってますか?」


 おばあちゃんの家は二つの番地から成り立っている。

 倉がある裏庭と、家がある土地だ。


「ええ、裏庭と倉。そして、家ですね」

「倉の方は何にも問題ありません。問題は家の土地です。抵当権の設定がされています」


「と言う事は借金の担保ですか?」

「ええ」


「誰の借金です?」

「登記の書類に寄れば、かなり前の持ち主の借金らしいですね」


「じゃあ、お祖母さんは関係ないんじゃないの」

「いえ、そうは行きません。担保になっている土地を、承知して買ったという事になってます。さらに問題をややこしくしているのが、設定されたのが明治だという事です」

「えっと整理したい。家と土地は誰の名義?」

「お祖母様です」

「お祖父様から相続は出来たんだな」

「そのようです。どうします? 家に住んで相続して登記をする手はあります。抵当権はそのままにして。そうなると当然売れませんが」


 倉の方は問題ない江戸時代に手に入れた土地らしいから。

 問題は家の方。

 なんと抵当権の設定がなされていた。

 どういうことかというと借金の担保になっているという事だ。


 問題をややこしくしているのは、その設定された日付というのが明治なのだ。

 お祖父さんは昭和になってから家の土地を買った。

 その時に調べなかったのだろう。

 いや騙されたのかも知れない。

 とにかく担保になっている土地を買った。


「解決は難しそうですか?」

「ええ、なにせ明治の人物の子孫を一人残らず調べないといけない。それに抵当権解消の判子を素直に押してくれるかどうか」

「他に方法は無いんですか?」

「ありますが、それも色々と手間です」

「とにかく解決をお願いします」


 これを解消するには債権者の子孫の判子が全て要るという事。

 他にも方法はあるんだが、そちらもややこしいらしい。


 家が取られてしまうと倉に入れなくなる。

 これは困った。

 司法書士に解決を頼んだがいくら掛かる事やら。

 もちろん裁判になったら勝てるらしい。

 何しろ明治の借金証文が残っているはずがない。

 あればとっくに取り立てに行っているのに違いないのだから。


 こういのは休眠抵当というらしい。

 家の建物は登記してある。

 その所有者は俺になる予定なので、住んでいる者は立場的には強い。

 とにかく解決のための資金を、頑張って稼がないと。

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