第10話 深夜の襲撃

 さっそく、ポーション屋に行った。


「各種ポーションが欲しい」

「魔力放出病のポーションでなくてですか?」


「えっとそれは何?」

「魔力を放出して死ぬ病気です。非常にまれなんですが、あなたみたいに光ります」


 そういう病気があるのだな。

 言い訳が出来た。

 嘘を付くのは心苦しいが、魔力放出病だと誤魔化す事も出来るようだ。


「その病気ではないようだ」

「そうですか」


「とりあえず風邪薬とか軽い病気に使うポーションが欲しい。それと冒険者用に傷回復のポーションと解毒のポーションが欲しい」

「ではギルドカードを」


 ギルドカードを出してから、ポーションのお金を払う。

 次はアクセサリーだな。

 めんどくさかったので露店の奴を丸ごと買い上げた。

 何百カラットもする宝石なんかを買って地球で売ったら、目を付けられるに違いない


 これで買い物は全て済んだ。

 一泊してから帰ろう。


 宿に行き金庫室防衛の魔道具を作動させる。

 これで夜も安心だ。

 そう思ったら、深夜なにやら騒がしい。


「結界の魔道具を使われているぞ」

「魔道具の魔力が切れるまで攻撃だ」


 なぬ、魔道具の魔力が切れるのか。

 俺は魔道具の充填のボタンにさわる。

 魔力が補充されたみたいだ。


「おかしい、魔力が切れても良いはずだ」


 魔力の補充は苦にならないけど、いいかげん眠い。

 ほっといても騒ぎそうだ。

 でも剣を抜くと建物に被害がでる。

 金持ちだから損害賠償は怖くないけど、人に被害が出ると居たたまれない。


 結界の魔道具を解除するとなだれ込んで来るんだろうな。

 電撃の魔道具だけで撃退出来る自信はない。

 さて、どうしたものか。


 あれっ、結界の魔道具って酸欠にならないよな。

 ロバートも特に気を付けるようには言ってない。

 扉には穴が開いているいるので、俺はそこ目掛けて水差しから汲んだ水を掛けた。


「うわっぷ。冷たい。馬鹿にしやがって」


 水は通るのだな。

 空気も通るという事だ。

 たぶん網の形の結界なのだろう。

 網の目がどのぐらいなのか分からないが、これならやりようがある。


 それをすると俺は殺人者だが。

 この状況で何もしないのはどうなのか。


「殺してやる。どんな手を使ってもな」


 だんだん腹が立ってきた。

 俺に落ち度はないよね。


 向こうに遠慮する必要なんかない。

 眠いので怒りが倍増する。

 やってやる。


 俺は扉の向こうの男が呼吸の為に口を開いた時にペットボトルの水を掛けた。


「ぐっ」

「どうした?」

「ひっ、高純度の魔水を掛けてきやがった。もったいない事をしやがる」

「おい、しっかりしろ」

「諦めろ、魔力中毒でそいつはお陀仏だ。とにかく口を開くな」


 そう上手く事が進むかな。

 見てろよ。

 俺は奴らの目を目掛けて、ペットボトルの水を掛けた。


「ぐがぁ」

「だから嫌だって言ったのに」

「目が焼ける」


 そして、静かになった。

 人の安眠を邪魔しやがって、ざまぁみろ。

 さあ、寝るぞ。


 朝になりロバート達が来る。


「ロバートだ。結界を解除してくれ」

「おう」


 俺は金庫室警護の魔道具を解除した。


「廊下の死体は何だ。宿の従業員が震えてたぞ」

「物取りらしい。以外に物騒だな」


「どうやって殺したかは大体、想像がつく」

「これって正当防衛だよな」

「まあな。宿屋の証言もあるから罪には問われないだろう」


「死体は誰が片付けるんだ?」

「そのうち警備兵が来て片付けるさ。しかし、意外だな。俺達が来るまでに震えて待っていると思った」

「眠いと怒りが倍増するんだ。分かるだろ」

「そうだな。俺も眠っている所を襲撃されたら怒る」


「魔穴に戻ろう。地球が恋しくなってきた」


 俺の街への滞在1回目はこうして終わった。

 異世界は危険な外国ぐらいに考えておいた方が良いみたいだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る