第9話 冒険者登録

「次はどこだ?」

「ポーション屋だな」

「街のポーション屋は安いのしか置いてないぞ」

「かすり傷程度しか治せないのか?」

「そうだ。病気の薬も風邪薬ぐらいしか置いてない」

「ちなみに何でだ」

「防犯の為だな。金貨が必要なポーションを店頭に置いておく訳ないだろう。そして高いのを売るには診察がいる。診察しないで薬を売って効かなかったなんてなったら、店の信用丸つぶれだ」


 なんとなく分かる。

 金貨が必要というと10万円からだ。

 それが効かなかったら、文句の一つも言いたくなる。

 薬師の診察が必要なんだろう。


「傷薬はどうなんだ?」

「一般になら安いのだけだな。冒険者なら、無条件で高いのも売ってくれるけどな」

「それなら冒険者になる」


「次は冒険者ギルドだな」

「おう、頼む」


 冒険者登録かぁ。

 なんかワクワクするな。


 冒険者ギルドに行きカウンターに並び、俺の番になった。


「冒険者登録したい」

「ちょっとお待ち下さい」


 そういうと受付嬢は奥の部屋に行った。

 しばらくして戻って来て。


「待たせて、申し訳ありません。承ります。用紙にご記入下さい」

「文字が書けないんだけど」

「代筆致します。名前をどうぞ」

「クラモト」

「出身は?」

「ええと」

「魔穴271番だ」


 ロバートが助け舟を出してくれた。

 あそこは魔穴271番と言うのか。


「特技は何かありますか?」

「ええとそうだ。魔力」

「確かにこの魔力量は特技と言えます。分かりました特技魔力で登録します」


 魔道具に手をかざすとカードが出て来た。

 なるほどギルドカードか。


「ギルドカードで金銭の授受なんか出来るのかな?」

「できないぞ。理由は偽造防止が出来ないからだ。民間の魔道具職人の方が腕が良いからな。国のお抱えが作ったのではすぐに真似されちまう」

「じゃこのカードは何が出来るんだ」

「本人確認だけだな」


 デジタル技術を応用すれば、魔道具も凄い発展を遂げるのだろうけど、それは言わない事にした。

 手持ちが少ない。


「魔導金属を換金したい。面倒だから100枚ぐらいしたいが、どうだろう」

「そんなに現金はありませんので、少しお待ちを」


 少し待たされ、受付嬢が戻ってきた。


「商業ギルドから、借り入れしますので、お待ちください」


 金貨9100枚が運ばれてくる。

 冒険者がギラギラした目で俺を見つめる。


「お前ら言っとくぞ。クラモトの剣は雲を裂いた。嘘じゃないぞ。武器屋から光の柱が上がったのを見ただろう。襲うならその真偽を確かめてからにしろ」


 ロバートがそう言ったら、ほとんどの冒険者は目をそらした。


「これでほとんどの奴は諦めたはずだ」

「なら良いけど」

「光って眩しいお前を襲う奴はいないだろ。言っとくが剣は最後の手段だぞ」

「ああ、分かっている。護身用の魔道具を他にも手に入れるべきかな?」

「電撃の魔道具より強力な奴は特注になる。今からでは間に合わない。昼は俺達が警護している。寝る時は金庫室用の結界を使えば、問題ないだろう」

「そうだな。そう願いたい」


 魔道具は間に合わないのか。

 魔道具ってどう作るんだろう、ちょっと興味が湧いた。

 インテリジェンスブックで魔道具の基礎原理を念ずると知識が頭に浮かび上がった。

 魔導インクで回路を書くとできるらしい。

 魔導インクの種類は何十とあるみたい。

 素人には無理だな。

 プリンターを使うにしても特殊なインクで印字は無理だ。

 やっぱり魔道具は異世界で作って輸入するのが良い手みたい。


 俺は何の気なしに掲示板に目をやった。


「掲示板に目が行っているようだが、依頼は受けさせないぞ」


 ロバートに釘を刺された。


「せっかく冒険者になったんだから、依頼が気になって」

「とにかく今のお前だったら、危なっかしくて駄目だ。文句を言いたいのだったら、魔剣を制御できるようになってから言え」

「これって制御できるのか?」

「当たり前だろう。常に全力でなんて道具は効率が悪い。流れ込む魔力を加減すれば威力を抑えられるはずだ。だが、抜くなよ。訓練なら誰も居ない森の中でやれ。それも切っ先を天に向けてだ」

「分かったよ」


 異世界で一気に金持ちになれたが、同時に危険になっちゃったな。

 そして、不自由な事も多い。


 地球に戻って、収納の魔道具で銃を密輸する事も考えた。

 だが、辞めておこう。

 そんなのは柄じゃない。

 護衛は雇えばいいんだ。

 何も俺がドンパチやる必要はない。

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