第3話 初めての収入
倉の中に帰って来てほっとした。
だが冒険は面白い。
夢じゃないかとも思ったが。
目の前には亀裂があり。
懐の財布にはずっしりとした異世界の硬貨がある。
よし、金を稼ぐぞ。
家を出て電車に乗って、金の買取所に行った。
「これを買い取ってもらいたいのですが」
金貨をトレーに載せる。
「拝見します。これはどちらで」
「倉で眠っていた物なので由来は分かりません」
「そうなると地金での買い取りになります。金の含有量を調べますので、しばらくお待ち下さい」
しばらくして。
「18金ですので、35万6823円になります」
「ではそれで」
うひょ、一円玉が35万かよ。
儲かったぜ。
お次は、自宅アパートで英語の映画をDVDで見る。
翻訳の指輪をしているのに日本語にならない。
地球では動作しないのか。
もしかして。
俺は駅前の英会話教室に行った。
「あの、無料体験とかありますか」
「ええ、ございます」
「じゃ、お願いします」
しばらく待たされ、講師と対面した。
「講師のジェシーです」
発音は英語だが、日本語に聞こえる。
「クラモトです。よろしくお願いします」
「綺麗な発音ですね。英会話を習った事がありますか」
「ええ、大学などで」
思った通り対面なら翻訳の道具は動作するらしい。
これさえ分かればこっちのもの。
講師と世間話をして、切り上げた。
指輪の仕組みはテレパシーに近いようだ。
でも、地球でも動くのが分かって、俺は会社を辞める決心がついた。
異世界貿易は儲かりそうだ。
「もしもし、父さん。俺が相続した家の倉なんだけど、なんか由来があるの」
俺は父親に電話した。
「あれな。江戸時代に末期に、坊さんが一晩泊めてもらったお礼に、この場所に倉を建てると金持ちになれると言ったらしい」
「そんな逸話がね」
「今で言うなんだっけな。ああ、パワースポット。そういうのらしい。龍脈が通っているって事だ」
「へぇ、そうなの。また電話するよ。あ、そうそう。会社、辞めたから」
「何か始めるつもりなのか」
「うん、個人輸入をね。じゃまた電話する」
株式会社を作るのはまだ良いだろう。
問題は、金の買取を度々は持っていけない。
怪しまれるからな。
翻訳の指輪みたいなのも、おいそれとは売れない。
大国のスパイなんかに目を付けられたら、とんでもない事になりそうだ。
異世界で売る商品は金属と水で良いだろう。
問題は輸入だな。
仕組みが分からない道具なんてのは駄目だ。
食い物も駄目だ。
植物の種や動物なんてのも論外だ。
とりあえずは武器と防具と衣類だな。
コスプレ用なら売れる。
よし、それでいこう。
俺は銀行に行って小銭に両替をした。
各100枚もあれば十分だろう。
そしてスーパーでペットボトルのミネラルウォーターを買った。
異世界の便利道具はどんなのがあるだろうか。
護身用にスタンガンみたいなのは欲しいな。
アイテムボックスみたいなのも欲しい。
それとポーションだ。
地球で怪我を負ったら回復したい。
解毒ポーションなんてのもあれば欲しい。
地球で毒物にやられたら回復したい。
異世界での護身用は唐辛子スプレーとスタンガンで良いだろう。
こんな所か。
俺はあの倉のある家に住む事にした。
引っ越しの手配をして、退職届を書く。
「もしもし、倉本だけど、明日で会社辞めるから」
会社の同僚に電話する。
「分かるよ。うちの会社ブラックだからな。給料は少し高めだけれど、残業代出ないから、時間に換算したら安いよな」
「まあな」
「で、次の会社は」
「個人輸入をやりたいと思う。商材はファンタジーのコスプレ用の道具と衣類だな」
「というとヨーロッパ辺りの本物を輸入するのか」
「ああ、そうだな」
「採算とれるのか、それ」
「安く買えるルートがあるんだよ」
「ほう、アクセサリーなんかはやらないのか」
「その手もあったな」
「安く手に入ったら、格安で売ってくれ。飲み屋のねーちゃんにプレゼントしたい」
「いいぜ。安く回してやるよ」
「おう、頼む」
「じゃまたな。今度飲みにでも行こう」
「待ってるよ」
異世界からの輸入の商材にアクセサリーが加わった。
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