第4話 異世界の街に行く

 帰って来てから一週間後。

 再び異世界に行くと何十人もの人間がいた。

 俺に注目が集まる。


「お前ら、武器を降ろせ」


 ロバートが一喝する。

 武器を構えていた人間が武器を降ろした。

 分かるよ。

 空間の裂け目から何か出て来たら、普通は警戒するよな。


「クラモト、早かったな」

「異世界の街に行けると思うとワクワクしちゃって、早朝に押し掛けたよ」


「街への案内だが、護衛任務だと一日金貨5枚だ」


 50万円の日当か。

 護衛の給料は地球でも高いと聞いていたから、驚きはない。


「魔導金属で払いたいが良いか」

「もちろん」


「それにしても建物が出来たんだな」

「ここは魔力が濃いんだ。魔道具の魔力を充填するのに立地が良い」

「へぇ、そうなんだ」


 なるほどね。

 魔力が高いと色々と利点がありそうだ。


「魔道具について聞きたいな」

「まず魔道具は色々と種類がある。魔力の運用で3つに分かれる。使い捨てのタイプと、魔力を充填して使うのと、身に着けた者から魔力を自動的に補給するタイプがある」

「翻訳の指輪は?」

「身に着けた者から魔力を補給するタイプだな。ちなみに魔導金属を使うのは使い捨てだ。魔水から作るポーションも使い捨てだな」

「補充するのは?」

「モンスターから採った魔石を使った魔道具だな」

「モンスター? 見た事ないけど、狂暴なのか?」

「大体な」


 冷や汗が流れた。

 前に来た時は危なかったんじゃないか。

 くわばらくわばら。

 一日金貨5枚は惜しくないな。


「詳しい話は後でしてやろう。急がないと街に着く前に日が暮れる」

「じゃ出発しよう」


 森を舐めてた。

 一時間ほど歩いて足ががくがくになる。


「ちょっと休ませてくれ」

「ならいいのがある」


 そう言うとロバートは腰に付けたペットボトルを外した。

 ペットボトルには何やら文様が書いてある。

 ペットボトルの中身を飲めと言うんだろうな。


 飲むと味は普通の水だった。

 足の痛い所が瞬く間に治る。


「どうだ、良いだろう。この容器の魔力で中に入れた水がポーションになるようにしたんだ」

「リーダー、また自慢しちゃって」


「無限にポーションが作れるのか」

「まあな。容器の魔力がなくならない限りはな。ただ、出来たポーションは容器から出すとすぐに水に戻っちまう」

「その欠点を差し引いても便利だな」

「そうだろ。宝物だ。神器と言っても差し支えない」


 空のペットボトルが無限ポーション製造機になるのか。

 これ地球に輸入したらやばいだろうな。

 馬鹿でも分かる。

 だが、地球で金持ちの権力者にでもなったら、輸入して売り出そう。

 そうしよう。


 モンスターが全然出て来ない。

 それどころか野生動物もだ。

 ネズミの一匹すらいない。


「こんなに動物が出て来ないものなのか」

「ああ、クラモトのせいだな。魔力が高いのが居ると動物やモンスターは逃げ出す。逃げ出さないのはドラゴンぐらいだろう」

「俺ってモンスター除けなんだな。見たかったなモンスター」

「死骸なら買取所で嫌というほど見られるぞ」

「死んだのは遠慮したい」

「俺は生きているのより死んだモンスターの方が良いな。襲い掛かられる方が嫌だ」


 テレビで巨大ザメの死骸を見た事があるが、たしかに生きてるあれと遭遇したくはない。

 ロバートの意見も分かる。


 森の縦断はじつに骨が折れた。

 ポーションを飲みながらだったから良いが、これがなかったらどうなっていたか。

 たぶん森の中でへばって迷惑を掛けただろう。

 俺がいるとモンスターが出て来ないらしいが、森の中で一泊は勘弁してほしい。


 途中、道に出た。

 道はまだ新しい。


「道を作っている最中なのか」

「ああ、魔穴まで道を作る予定だ」

「魔道具の充填だったかな。儲かるのか」

「そうだな。一年間が一日で済む。人間が込めると一ヶ月ぐらいだがな」

「一ヶ月の日当と考えると。一日、置いておくだけで30万円か。なるほどそりゃ儲かる」


「価値が分からないようだから説明しておく。銅貨3枚でパン1個だ。銅貨100枚で銀貨1枚。後は分かるだろう」

「なんとなく、つかめたよ。この前、渡した魔水はいくらぐらいだ?」

「中身が金貨100枚で、容器が金貨10枚ってところだな」

「一円玉は?」

「魔導金属は金貨100枚ってところだな。だが、あれは物騒だから売れない」

「そうか、武器の材料なんだな」


「ああ、城が落とせる威力だ」

「じゃあ、気軽に色んな人に渡すのは、辞めといた方が良いな」

「そうだな。そうしてくれるとありがたい」


「俺が持って来た水を人に飲ませたらどうなる」

「薄めなければ、魔力中毒で大抵死ぬ」

「うおっ、食べ物は人にあげられないな」

「光って眩しい食べ物を食う奴がいたら、そいつが間抜けなだけだ」

「そうだった。光ってるんだった。安心じゃないけど安心したよ」


 計画がだいぶ狂ったな。

 商品が物騒で売れないとは困ったものだ。

 商品はミネラルウォーターの一択かな。

 道行が整備された道になった事で案外と早く森から出られた。

 遠くに城壁が見える。

 あそこが街だな。

 亀裂から歩く事、10時間ぐらいだ。


 時刻は16時を回ったところ。

 宿をとって休むのには丁度いい。

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