つい素が出てしまった
「いやいやいや、何でそんなことになるんだよ。大体、死んだわけじゃないのに、勝手に人を生き返らせるのはまずいんじゃないの?」
「大丈夫。向こうの世界の神様とは話がついてあるから」
えぇ……。
それ、本当に大丈夫なのかなぁ。
「まあいいわ。それで? 他にはどんなことをするの?」
「後は簡単。こちらで用意した能力を使って、世界のバランスを整えてくれればいいの」
バランスを整えるねぇ。
なんかスケールが大きいなぁ。
「でも、それだけでいいの? 他にも何かやった方がいいんじゃ」
「大丈夫。こっちは人手不足だから、むしろどんどんやってくれる方が助かるぐらいなんだもの」……えっと、これって喜んでいいのかな?
「じゃあ、お願いできるかしら? 勿論、報酬として君の望む力を授けるわ」
「それなら、一つ頼みたいことがあるんだ」
「へぇ、どんなの?」
「僕は今まで通りでいたいんだ。だから、他の能力はいらない。代わりに、これから行く世界での生き方を教えて欲しい」
すると、彼女は目を丸くした。
「そんなことでいいの? もっとすごいのにしようと思ったのに」
まあ、確かにすごい能力は欲しい。
「それでも構わないよ。じゃあ、教えてくれる?」
「そうね。普通に暮らすだけなら、特別才能はいらないし、特に必要なことはないかな。強いて言えば、魔物と戦う時は、それなりの魔法を使えると便利かも」
「なるほど。他には?」
「他にはないよ。これで全部」
「え、これだけなの!?」
あまりに呆気なさ過ぎて、つい素が出てしまった。
すると、彼女はクスッと笑って、「そう、これだけなの」と言った。
「分かった。とりあえず、この世界を体験してみることにするよ」
「うん、頑張ってね!」
彼女は笑顔を浮かべたまま、僕のことを見つめている。
「ああ、頑張るとするさ」
こうして、僕は新たな一歩を踏み出した―――。
第1章〜旅立ち〜 〜完〜 【あとがき】
最後まで読んでいただきありがとうございます!
心中天のヤング干渉縞 水原麻以 @maimizuhara
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