第2話 正義の余裕
━━なんとか間に合ったようだな。
女性隊員に迫っていた巨岩を間一髪で蹴り飛ばし、俺は安心していた。
「何だお前は!?どこから湧いて出やがったァ!?」
拡大魔人は突然現れた戦士に驚き、問いを吐きかける。
「俺か?俺は、お前を倒すものだ!」
戦士は歩を進める、一歩……二歩……
「あぁ!?答えになってねぇぞ!あとこっちに向かってくるな!」
「お前なんかに名乗るのは、名前に対して失礼だろ?」
「あぁ!?良いから答えろや!お前の名前は何ですか!?!?」
「良いだろう、そこまで気になるなら教えてやろう!」
「おお!早く教えろ!」
「俺の名は……『パトカイザー』だ!」
━━決まった!最高ッ!たまらねえ!
「パトカイザー……?パトカーみたいな見た目してるからか?」
「その通りだ」
「ふぅん……」
魔人は、つまらなそうな反応を示す。
「それではいくぞ!拡大野郎!正義の前に悪は倒される!」
「
俺は一気に距離を詰め、力を握り、拳を作る。それを相手に叩きつける。
「ンギャ!」
魔人が吹き飛び、コミカルに転がっていく。
「良く転がるな。ロールアイスでも作ってんのか?」
「クソ……ッ!このオレ様を舐めんなよッ!」
魔人は足元の石を拾い、こちらに投げつけてから拡大させた。
「これで潰れろォ!」
「はぁ……」
━━こいつ馬鹿か?さっき俺がどうやって人命を救ったと思ってるんだ。
俺は、体を捻って回し蹴りを放ち、もはや巨岩と化した石を蹴り飛ばす。
「嘘だろ!?なんで潰れねえんだよ!」
「何言ってやがる?さっきも
「何の話だ?」
「そこの女性隊員を狙った攻撃の話だ」
「あん?」
こいつ忘れてやがるな。さっきもこうやって攻撃を弾かれたこと。この魔人……やっぱり馬鹿だな。
遠距離攻撃が厄介なのは変わらないが、近づいてしまえば問題ないな。武器を使って短期決着といこう。
「なんだそりゃ?交通整理でも始める気か?」
「こいつか?これはお前を倒すのにも使える便利アイテムだよ」
「そんな誘導棒なんかでオレ様が倒せるわけ無いだろ!いい加減にしろ!」
「それはどうかな、いくぞ!」
「返り討ちにしてやる!」
魔人が、拳を突き出す。それを躱して斬り上げる。
「ンギャ!
「ハッ!」
隙を
「グエェーーーー!痛ってえ!」
「どうだ?結構効くもんだろ?」
「グ……ッ!」
魔人は痛みに耐えてなんとか立ち上がる。
「とどめだッ!」
俺は、重心を下に落として武器を構える。誘導棒とスーツのサイレンが激しく光り輝く。そして、拳を叩きつけた時の要領で一気に間合いを詰め──
「くらえッ!ユードースラッシュ!」
──すれ違いざまに一閃。
「そんな……オレ様はただ……あいつに……」
「ニギャーーーーーッッッ!」
魔人は火花を散らしながら爆発した。
「正義は必ず……勝つ!」
━━決まった!
そういや、最後になんか言ってた気がするな?まぁ、気がするってことは気のせいだな!
と、そんなことよりも──
「大丈夫か?出来るだけ急いで来たつもりなんだが……」
俺は、無線をしたであろう女性隊員に声をかける。
「……あ、ああ。私の方は大丈夫だ……、それより負傷した部下たちの治療を頼む」
「たしか数名……って言ってたな?」
「3人いる……うち1人は意識が無い。出血はそこまでじゃないが、ルーペ野郎のせいであまり治療が出来なかった」
「なるほど、理解した」
早いとこ病院に連れていった方が良さそうだな。となれば……
「2人とも、聞いていたな?」
「はい!もちろんです!」
「すでに救護班を手配しているわよ。最寄りの病院にも連絡してあるわ。」
「相変わらず仕事が速いな」
「褒めて褒めてー♪」
「ははは、凄い凄い」
「えへへー♪」
「先輩!僕も僕も!」
「お前は特に何もして無いだろ」
「そんなー、しょぼーん……」
「冗談だ。いつも助かってるよ」
「えへへー」
あとは怪我人の様子の確認だな。
辺りを見回すと離れた場所に人影が3人分あるのが見えた。
━━良かった、元気そうだな。
俺は、ほっと胸を撫で下ろす。
「良かったな、あんたの部下は無事だ」
「良かった……、あんたのおかげで助かった。礼を言う」
「正義として当然のことをしたまでだ」
「そうか」
そう、正義として当然のことをしたまでだ。たとえ、俺の命が消えるとしても絶対にやり遂げてみせる。
「ん?どうやら救護班が到着したみたいだな。後は任せるとしよう」
「改めて、助けてくれたことに礼を言う。」
「どうも」
俺は、そのまま現場を後にする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「はあーーー!正義の後の
「ほんと先輩って甘い物が好きですよねー」
「
俺は、帰り道にコンビニで買ったシュークリームを頬張る。最高だ。
最近のコンビニスイーツは侮れない。300円以下でレベルの高いものを提供してくれる。100円台のものでも、この美味しさだ。たまんねぇ!
ちなみに俺は、シュークリームはクッキー生地よりも薄い生地派だ。
「そういや近所に新しくドーナツ屋が出来たらしいですよ」
「なに!?それはほんとか!?」
「まあまあ、落ち着いてください」
━━今度行くしかないな……気になる……
そんなことを考えてると
「じゃーん!実は買ってきてます!」
「でかした!持つべきものは良い後輩だな!」
「過去一で褒められてる気がしますが……いただきましょうか」
「おう!」
箱の中からいくつかのドーナツをチョイス、どれも美味そうだ。
「「いただきます」」
まずはシンプルに粉砂糖がかかっているのを……
「美味い!」
生地はしっかりとしていてほどよい柔らかさ、粉砂糖との相性もばっちりだ。シンプルだからこそ、ごまかしは効かないはずだ。これは他にも期待が持てるな。
次は、オールドファッションに手を伸ばす。
これも美味い!先ほどのものより生地は甘めに仕上げてあり、良い硬さに仕上がっている。その半身にまとったチョコとの相性も最高だ。
「この店は当たりですね!」
「ああ、リピート確定だな」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「いやー美味かった!」
「ほんとですねー」
気づいたら一瞬で平らげてしまった。それほど夢中になる美味さだった。余韻に浸っていると、
「やっと報告書が出来上がった……
どうやら、さっきの魔人についての報告書を纏めていたようだ。
「真子、お前大丈夫か?」
「大丈夫じゃないわよ……あんなのでも少しでも詳しいデータが残っていて損は無いわ」
「ほんと良くやりますよねー」
「
「そこまで大きな声は出して無いでしょ!」
「今出したじゃない」
「ぐ……!」
こいつらいつも喧嘩してるな。喧嘩するほど仲が良いとも言うし案外、相性は悪くないのかもな。
「どうどうどう、喧嘩するな」
「はーい♡」
「はーい……」
━━本当に退屈しないな。案外、騒がしい職場の方が向いてるのかね?
そんなことを考えながら、いつもの騒がしい日常が終わる。
「暗くなってきたな、そろそろ帰るか」
「僕もそろそろ帰ります。見たい番組があるので」
「私はもう少し仕事を終わらせてから帰るわ」
「それじゃ」
「先輩、また明日もお願いします」
「おう」
俺と鉄男は壱課を後にして帰路に就いた──
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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