第11話 婚約者を逃がす
ザケルの婚約者が浮気してる相手のオルフェが勤めているバーに連日通った。
もちろんフードを深く被って、俺だと分からなくしてだ。
そろそろ、ザケルが来ても良い頃だな。
オルフェとお嬢様風の女が話をしている。
女の方が愚痴をこぼしていてオルフェはなだめているようだ。
扉が荒々しく開けられた。
お出でなすったか。
振り返ると怒りで顔が真っ赤になったザケルが剣を抜いて立っていた。
「許さん。切り捨ててくれる」
ザケルよお前は俺が許さん。
俺は疾風の如く動いてザケルの背後に立ち、首をトンと叩いた。
崩れ落ちるザケル。
俺はカウンターに歩み寄り、にオルフェに話し掛け始めた。
「このままだとザケルに殺されるぞ。逃げるんだな」
「そんな事を言われても」
「金ならここにある。これを持って逃げろ」
「あなたは誰でどんな思惑があるのですか?」
「俺はザケルの弟であるブレイクの関係者だ」
「聞いた事があるわ。ザケルと仲が悪いようね」
お嬢様風の女がそう言った。
「どうするんだ? 俺は別にお前達がどうなろうと関係ない」
「ご厚意に甘えましょう」
「俺も決心がついたよ。駆け落ちしよう」
俺が渡した金を持って二人は去って行った。
俺は気絶しているザケルの顔に、婚約者に逃げられた男と書いた。
そして。
│A │B │
─+───────+────+
1│使用魔力 │4000│
─+───────+────+
2│消去不可の呪い│=B1 │
─+───────+────+
いい仕事をした。
これでザケルは赤っ恥で生きていくしかない。
俺の中の黒い何かが薄まった。
さて、撤収するか。
俺はブレイクに、次の計画が出来たと手紙を出した。
次の日、邸宅を訪ねた俺を、ブレイクは俺を快く迎えてくれた。
「兄さんはカンカンだったよ。行くときもそうだが、帰って来てから癇癪が酷くなった」
「ちょっと、奴の声を聞いてみるか」
│A │B │
─+────+────+
1│使用魔力│1000│
─+────+────+
2│盗聴魔法│=B1 │
─+────+────+
ザケルの声が聞こえてきた。
「くそう、どいつもこいつも。俺を笑いやがって。メイドすら目で笑っている」
何か瀬戸物の割れる音がした。
ザケルの奴、イライラしているな。
「ぷぷっ、あーはははっ。兄さんの奴、傑作だね。あの顔に書かれた文字を見た時に、笑いをこらえるのがどんなに辛かったか」
「次の計画に移ろうと思う」
「今度の計画も愉快なんだろうね」
「そうだな、とびっきりさ。ついては店が欲しい。なに、赤字にはならないさ。そこは自信がある」
「いいだろう。少しぐらい赤字になっても構わないさ。同志を信用しているとも」
俺はブレイクの執事と一緒に街にでた。
「どのような店舗がよろしいので」
「もぐりの治癒師としてやるつもりだから、表通りではない方がいい。怪しげな路地裏みたいな所が良いな」
「なるほど。かしこまりました。ブレイク様の持ち物でそういうのはありませんので、不動産屋を当たりましょうか」
「頼むよ。店を借りるとなると保証人がいるからね」
物件をいくつか回り飲み屋街の外れの店舗を借りる事が出来た。
部屋は二部屋だ。
待合室と診察室。
受付に人が必要だな。
そちらはギルドで応募しよう。
変装の必要があるな。
付け髭をして、目の周りは仮面を被るとしよう。
目の色を変えよう。
│A │B │
─+─────+────+
1│絵の具の色│青 │
─+─────+────+
2│俺の目の色│=B1 │
─+─────+────+
一番ありふれた目の色に変えた。
これで変装は十分だろう。
さあ、もぐりの治療師を始めよう。
ザケルはなんとしても顔の傷と文字を消したいはずだ。
今頃、色んな医者に声を掛けているに違いない。
治る訳はないからそのうち俺の評判につられてここに来るはずだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます