第10話 ジャスに復讐

 ジャスの実家の八百屋に行き大量に注文する、それを何回も繰り返した。

 その結果、ジャスの家族とは顔見知りになった。

 怪我が治らず歩けないジャスは荒れているようだ。

 ジャスの両親の愚痴を何回も聞かされた。

 そろそろ第二段階か。


「面倒を見る事は大変でしょう」


 ジャスの家族に俺はそう申し出た。


「ええ、もう疲れ果ててどうしたらいいか」

「昔、ジャス君にお世話になったので、私どもが面倒を見ましょう。とりあえず介護の息抜きに旅行でもいかがですか?」

「そんな悪いです」


「一泊でもしたら気が晴れると思いますよ」

「あなた、ここまで言って下さるのでしたら」

「そうだな。お言葉に甘えてみるか」


 ジャスの家族は旅行に出かけた。

 俺はジャスを半日ほど放置して、顔を出した。


「マーク、お前! 家族をどこにやった!?」

「哀れだな。家族に見捨てられたのも知らないで」

「そんな馬鹿な。そんなはずはない」

「そうか有り得るだろう。せめてもの情けだ。手の届く範囲に毒を置いてやる。あばよ」

「くそう」


 俺は廊下でこっそりと見張った。


「俺が悪事を働いたからこうなったのか。マークを殺そうとした報いか。もう何もかも嫌になった」


 ジャスは夕方頃に毒を飲んだ。

 俺は警備兵を呼んだ。


「というと目を離したすきに毒を飲んで自殺したというのかい?」

「ええ、そうです」

「疑っている訳ではないが精神魔法に掛かってくれるか?」

「ええ、良いですよ」


 俺は精神魔法に掛かって尋問された。

 だが、ジャスの自殺の事実は揺るがない。

 だってその通りだからな。


 次の日になりジャスの家族が戻ってくる。

 警備兵から自殺であると説明された家族は泣いたが、俺が金貨を積むと泣き止んだ。

 俺の中の黒い何かが大幅に薄まった。


 よし、次はザケルだ。

 ザケルの弟と会おう。

 ザケルの弟のブレイクに俺は会いに行った。

 ブレイクはザケルの屋敷の離れに住んでいる。

 ザケルは学園だから顔を合わす心配はないが、離れだとなお都合が良い。


 離れの門番に紹介状を渡す。


「お会いになるそうだ」


 威力は抜群だな。

 すぐに会う事ができるとは。

 案内されて書斎のような部屋に入る。


「初めまして、マークです」


 俺と同年代の少年がいる。

 顔がザケルと似てなかったのは幸いだ。

 似ていたら黒い何かが騒ぎ出すかも知れない。

 それを気取られると、説明が厄介だ。

 俺は憑依しているのであってマークじゃないからだ。


「ブレイクだ。兄が虐めている相手が何の用だ? つまらない話なら帰ってもらおう。これでも忙しいんだ」

「俺はザケルに復讐したい。だが、ただ殺すのでは飽き足らない」

「ほう、すぐに殺すのは簡単だという訳か」


「証拠なら今から見せるよ。そこの護衛の方。剣で斬りかかってくれ」

「ほう、よかろう。斬りかかれ」


 俺は斬りかかられ、筋肉に力を込めた。

 火花を散らして跳ね飛ばされる剣。


「凄いな。防御でこれだと攻撃も凄いんだろうな」

「そうだな。付け加えるなら魔法もだ」

「君の事は同志と呼ばせてくれ」


 そういうとブレイクは握手を求めて来た。

 俺達はがっちりと握手した。


「それでだな。俺の計画はザケルの地位も名誉もズタズタにしてやりたい。同志は貴族の地位を相続したいのだろう?」

「ああ、したいね」

「ではやってもらいたい事がある。なに、簡単な事さ。メイドとかそう言う人に噂をばら撒いてほしいだけだ」

「同志よ、お安い御用だ。しかし、計画を説明してはくれないのかい」


「やるのはザケルの婚約者の浮気をザケルに報せる」

「ほう。それは見ものだな」

「ザケルが浮気の現場に踏み込んだ時に現れて叩きのめす。あとは婚約者と間男を逃がすだけだ」

「婚約者に浮気されて逃げられたなんてなったら、良い恥さらしだな」

「全くだ。だがこれで終りじゃないぞ。次の計画が出来たら、手紙で報せる」

「それは楽しみだ。手紙が来るのが、こんなに待ち遠しくなるなんてね」


 さて、弟の方はこれで良いな。

 問題は婚約者騒動の次だ。

 それについては考えがある。

 上手くいけばいいが。

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