第8話 復讐の準備

 情報屋から、情報が集まったと言伝が来た。

 金? 金は証文を売ってお金に換えた。

 月末まで待つわけにはいかないからな。

 多少目減りしたが、構わない。

 金を儲ける気になれば容易い事だ。


「まずはジャスの情報からだ」

「ジャスの実家は八百屋を営んでる。両親と妹と弟が居る。家族仲は普通だな。ジャスは近衛騎士団に入りたいらしい」

「平民では近衛は無理だろう」

「そこでザケルだ。ザケルが推薦して後押しする。まあ、よくある事だな」


 くそう、二人はやっぱり繋がっていたか。

 黒い何かが満ちて来る。

 ジャスは近衛騎士団入りを妨害してやる。

 そう考えたら黒い何かが落ち着いた。


「ザケルの情報を頼む」

「伯爵家の嫡子だな。兄弟の数は把握できないほど多い。母親は死んでいる。ライバルは異母兄弟の弟だな。伯爵家の相続で争っている。それと婚約者がいる」


 黒い何かがざわめく。


「婚約者の情報はあるか」

「ああ、婚約者には想い人がいる。まあ俗に言う浮気だな。結婚した伴侶以外に恋人を持つなんて貴族ではありがちだ」


 よし決まった婚約者から切り崩そう。

 黒い何かのざわめきが落ち着く。


 ザケルの婚約者の恋人に会いに行く。

 その人物はバーで働いていた。


 色男だな。

 資料によれば名前はオルフェ。

 よし火種を仕込もう。


 │A       │B     │

─+────────+──────+

1│オルフェ使用魔力│    50│

─+────────+──────+

2│オルフェ魅力  │=31+B1│

─+────────+──────+


 客を装い近づき、魅力を50ほど底上げしてやった。

 これでザケルの婚約者もメロメロになる事、請け合いだ。

 だが確実ではない。

 オルフェが殺されるかもしれないし。

 婚約者がオルフェと手を切るかもしれない。


 嫌がらせ程度に考えておこう。

 本命は腹違いの弟だ。

 ただ、弟の能力を底上げしただけでは決定打にはならないだろう。

 何か小細工が必要だ。

 あとで考えよう。


 寮に帰るとジェンナから伝言があった。

 迎えに馬車を寄越すそうだ。


 門の前で待つ事しばし、黒塗りの馬車が来た。

 怪しさ満載だが大人しく乗る。


 馬車はしばらく走り、停まった。

 降りると邸宅の玄関の前だった。

 ジェンナが待っていた。


「久しぶり」

「これから無駄口は叩くな。姫様の素性は分かっているいると思うが、詮索するなよ」


 ええと分かっていて分からないふりをしろって事ね。

 たぶん姫様は王族なんだろう。

 調べればすぐに分かるって事か。


「ああ、詮索はしない」

「ついてこい」


 俺は案内されて姫様の寝室に入った。

 だいぶ悪そうだ。

 病気の事は分からない。

 医者じゃないからな。


 │A    │B   │

─+─────+────+

1│使用魔力 │1000│

─+─────+────+

2│遺伝子治療│=B1 │

─+─────+────+


 これでどうだろう。


「治療は終わった」

「こんなに早くか」


「俺が出来る事はした」


 姫様が目を開ける。


「姫様、私が分かりますか」

「ええ、ジェンナ。ありがどう、気分がとても良いわ。まるで治ったみたい」

「じゃあ、俺は帰らせてもらう」

「姫様の事は他言無用だ」

「分かっている。評判が気になるんだろう。褒美の件よろしくな」


 俺は馬車に乗って学園に帰った。

 さっそく騎士団のジェンナあてに手紙をしたためた。

 ザケルの弟と会えるように紹介状が欲しいってな。

 ザケルの弟はブレイクというらしい。

 嫌な奴でないといいな。

 嫌な奴でも利用はするがな。


 能力を上げてやっても、嫌な奴だったら事が終わり次第、能力値を下げてやる。


 手紙を出しに行く時に廊下の掲示板に目がとまった。

 武闘大会開催のお知らせ。

 ふふふっ。

 良い物を見つけた。


 ジャスとザケルも出るんだろうな。

 武闘大会で奴らをコテンパンにしてもお咎めはないはずだ。

 いや、覆面を被って出場しよう。

 それならマークの家族には害が及ばないはずだ。

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