第7話 復讐の決意を新たに
道行は魔境を離れるにつれて楽になり、遂に魔法学園のある王都に着いた。
美しい都市だ。
マークの記憶では見た事があるが、直にみるのは初めてだ。
感動などしない。
これからここが俺の戦場だ。
「ジェンナさん、治療の準備が整ったら使いを寄越してくれ」
「分かった。姫様の体調を見て連絡する」
ジェンナと別れ、王都の街を歩く。
魔法学園は王都の中央にある。
途中、中古品売買のお店に寄った。
「邪魔するよ」
「いらっしゃい」
「売りたい物がある」
「どうぞ、大抵の物は買い取ります」
俺は収納魔法から255枚の魔境産の木皿を出した。
「これは見事ですね。数があるのも良い。ちょっと試してみても」
「ああ良いぞ」
店員は皿を裏返して、ナイフで少し削ろうとした。
ナイフの刃が欠けた。
「この皿の材料は何ですか? もしかしてダイヤモンドの木では」
「名前なんぞ知らん。魔境近くで偶然手に入った」
「やはり魔境産でしたか。ここまで見事な一品ですと。金貨3枚はお支払いしないと。高く買い取れず、すみません」
「それで良い。俺が持っていても宝の持ち腐れだ」
「全てのお金は用意できないので、証文でもよろしいですか?」
「構わない」
「では金貨30枚をお支払いします。残りの金貨735枚は月末に」
うひょう、儲かった。
また魔境に遠征に行きたくなったぜ。
いや、復讐を優先しないと。
金儲けは必要に応じてだ。
俺は証文と金貨30枚を収納魔法でしまうと、学園の門の前に立った。
俺のボロボロの恰好を見て門番がゾンビでも見たかのような反応をする。
俺は血の痕付いたの学生証を提示した。
「ひっ」
「嫌だな。幽霊じゃないよ。魔境で遭難して、親切な冒険者に助けられて、今戻って来たところだ」
「そうか。大変だったな」
魔法学園に入った。
どす黒い何かが心の中に満ちてくる。
マークの記憶か、それとも残滓か。
「落ち着けよ。心配しなくても仇は取ってやる」
どす黒い何かが治まっていく。
寮の部屋に帰れば制服の着替えがある。
行ってみよう。
寮に入ると偶然ジャスと出会った。
また黒い何かが蠢く。
「よう」
固まっているジャスに俺は声を掛けた。
「生きていたのか」
「おかげさまでな。親切な冒険者に助けられた」
「あの時は悪かった。あの時言った事は本心じゃない。ザケルに俺も脅されたんだ。お前の背中を押して、ああ言えってな。家族を人質に取られているんだ。分かるだろ。許してくれ」
「ああ、許すとも」
考え付く限りのむごたらしさで、殺して許してやる。
そう考えたら、どす黒い何かが治まった。
マークも同意見らしい。
「許してくれるのか」
「じゃまたな」
寮の部屋に入り、着替えた。
寮の風呂でくつろいで作戦を練ろう。
風呂から出て歩いていたら、ザケルがやってきた。
今までにないほど黒い何かが心に満ちて来る。
視界が黒く染まった。
ザケルだけが鮮明に見える。
「ジャスから聞いたぞ。生きていたんだってな」
「おかげさまでな」
「金は持っているよな。ここまで帰って来れたんだから」
「ああ、手持ちは銀貨1枚と銅貨が数枚だ」
「寄越せ」
「はいよ」
「やけに素直だな」
「死にかかって学習したのさ。貴族に逆らうと酷い目に遭うってな」
「ほう」
「座学もこれからは、ほどほどの点数を取る事にするよ」
「そうできるなら、初めからしておけよ。察しの悪い奴だな」
「悟ったからね」
こいつもむごたらしくあの世に送ってやる。
そう考えたら。
黒く染まった視界が元に戻った。
「じゃな。また小遣いをせびりにくるから用意しておけよ」
「はい」
ふふふ、マーク安心しろ。
今まで取られた金は全て回収してやる。
倍ほどにしてな。
黒い気持ちが完全に治まった。
さて、暗躍の時間だ。
実はジェンナに情報屋の居場所を聞いた。
合言葉もな。
そこに行く事にした。
「王城の外壁は?」
「赤い光を発する」
「坊主、ここは誰に聞いた」
「騎士のジェンナだ」
「ほう、貴族のボンボンには見えないが、騎士団と伝手があるのか」
「まあな」
「続きは言わんでいい。情報を貰ったら買い取らないといけない。坊主の情報は売れないだろう。さあ聞きたい事柄を述べろ」
「魔法学園にいるザケルとジャスの情報が欲しい。手付に金貨30枚払っておく。情報が集まったら伝言してくれ」
「分かった。調べておく」
これでとうざはいいだろう。
復讐するにも情報が無いとな。
どす黒い何かが少し薄まった。
マークもこの方針に賛成らしい。
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